政党機関紙配布:旧社保庁職員に逆転無罪 東京高裁判決

2010年3月29日 11時41分 更新:3月29日 13時31分

裁判所前で無罪判決を喜ぶ支援者たち=東京都千代田区で2010年3月29日午前10時40分、三木幸治撮影
裁判所前で無罪判決を喜ぶ支援者たち=東京都千代田区で2010年3月29日午前10時40分、三木幸治撮影

 03年11月の衆院選前に共産党機関紙などを配布したとして国家公務員法(政治的行為の制限)違反に問われた社会保険庁職員(現・日本年金機構准職員)、堀越(ほりこし)明男被告(56)の控訴審判決で、東京高裁は29日、罰金10万円、執行猶予2年とした東京地裁判決(06年6月)を破棄し、逆転無罪を言い渡した。中山隆夫裁判長は「罰則適用は国家公務員の政治活動の自由に限度を超えた制約を加えるもので、表現の自由を保障した憲法に違反する」と違憲判断を示した。

 判決はまず、国家公務員法と人事院規則の規定自体の合憲性を検討。「(一律に政治的活動を禁じている点で)問題がないわけではないが、それらは一部にとどまり、具体的適用の場面で対応できる」とし、合憲判断を示した最高裁判決(74年)と結論としては同じ判断を示した。

 そのうえで今回の刑罰適用に関する判断に進んだ。(1)被告の職務は社会保険事務所でデータを基に年金相談に応じるもので裁量の余地がなく管理職でもない(2)休日だった(3)公務員であることを告げず無言で配布した--などを列挙し「職務とかかわりなく政党機関紙を配布しても行政の中立的運営や国民の信頼確保を侵害する行為ではない」と指摘。罰則適用は表現の自由を定めた憲法21条や「法律に定める手続きによらなければ刑罰を科されない」とする同31条(罪刑法定主義)に違反すると結論づけた。

 さらに過去の最高裁判決が、勤務時間の内外や職種を限定していない点について「国民は表現の自由が重要な権利という認識を深めており、禁止される具体的行為が不必要に広すぎる」と指摘した。また「西欧先進国に比べ禁止範囲が非常に広い。法体系から見てもさまざまな矛盾がある。刑事罰の当否について世界標準という視点で、改めてこの問題は考えられるべきだ」と踏み込んだ。

 起訴状などによると、堀越被告は衆院選直前だった03年10~11月、東京都中央区のマンションなどのオートロック内外の郵便受け計126カ所に「しんぶん赤旗号外」などを入れ、人事院規則が禁止する政治的行為をしたとされる。堀越被告は04年3月3日、警視庁に逮捕され、同5日に釈放されたものの在宅起訴された。検察側は執行猶予付きの1審判決について量刑を不当として、弁護側は無罪を求めそれぞれ控訴していた。【伊藤直孝】

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