人間ドックの便潜血検査(大腸がん検診)で陽性と出たので、慌てて内視鏡検査を受けに行った。
目の前に32インチくらいの大きな液晶テレビがあり、医師と同じ映像を見ることができる。まず、小腸の入り口付近までカメラを挿入し、後退しながら腸内を観察するという。
2リットルも下剤を飲まされ、すっかり空になった大腸内を、カメラはゆっくりと、まんべんなく映し出していく。素人目には、がんもポリープもあるようには見えない。「間もなく肛門(こうもん)でーす」という看護師さんの声に続き、医師が「うん、異常ないですね」。全く痛みを感じさせない見事な腕前だった。
ほっとした。そして、検査の全過程を同時進行で見せてくれる意味の大きさを感じた。ものすごく説得力があるのだ。もし、何か病変が見つかったとしても、ショックは受けると思うが、納得せざるを得ないと思う。
数日して、ふと思った。これは社会にも当てはまるのではないか。「透明性」とは、こういうことなのではないか、と。【甲府支局次長・日下部聡】
毎日新聞 2010年5月25日 地方版