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NHK JAPANデビュー 「日台戦争」をうかがう ニュース記事に関連したブログ

2009/06/30 19:30

 

「日台戦争」について、檜山先生に直接電話をしてうかがった。
先生はお忙しい中、30分ほど割いてくださり分かりやすく説明していただいた。

1895年の台湾平定(討伐)については、日清戦争に組み込むか否かという問題が当時からあった。
そうした問題を議論した末、大本営の閣議決定により、日清戦争の一部として組み込んだ上で、台湾討伐を戦争として扱うこととなった。

(これを参考文献とするといいとして挙げておられたのは、参謀本部編纂、檜山幸夫監修、『明治二十七八年日清戦史』)
戦時国内法としては、「戦時」という扱いとする。
そうすることで、討伐で亡くなった日本軍を「戦死」と位置づけることができ、また、平定に尽力をして病死した人を、「戦病死」という扱いに出来る。
そうすれば戦死した日本軍を靖国神社に合祀することができる。
もし戦時国内法を適用しなければ、病死した人を含めて、「公務死」という扱いになり靖国神社に祀ることは出来ない。
戦時国際法の適用外であり、戦時国際法的には下関条約が締結された時点で日清戦争は終わっている。
しかしながら、そうすると「戦時」という扱いはまったくできない。
そこで、戦時国内法を適用し戦争扱いにすることで、公務死ではなく、戦死として位置づけることができるようになる。
死者の位置づけを、公務死とするのか、それとも戦死とするのかが大きな問題なのである。


それがゆえに、檜山氏が日清戦争のあとの台湾領有当初の平定戦について、それを日台戦争と表記することを考え出し、日清戦争とは分けて扱うことを提案する。
日清戦争のなかに組み込まれていた台湾での討伐を、日清戦争と分けて論じるために、そのような表記を提案なさったのである。
番組では、死者数を根拠にしたその規模の問題で、「日台戦争」と表現しているが、もともとそのような問題ではまったくないのである。
その上、日清戦争の一部として組み込まれていたという前提をまったく説明していない。

そのようにして日本軍による弾圧がいかに厳しいものであったのかを印象づけようとしている。


また、これは日本の表現であり、台湾の表現ではないため、台湾の人は日台戦争という表現はほとんど知らないのではないかと言う。

NHKなどは中国と一緒になって靖国神社参拝に対する批判を率先しているにも関わらず、日本と台湾とを断絶させたいとなると、台湾平定を戦争と位置づける大本営の閣議決定をその精神を抜きにしてご都合的に持ち出すのだ。


そして私が、「しかしながら、あの番組では、台湾を中国の一部であるとする中国の思惑に従いながら、日台戦争という表現を日本と台湾との交流を断絶するように都合良く使っていました」と訊くと、このような話をしてくださった。
檜山先生と親しくよく話すことがある呉密察という台湾独立派として活躍している人がいる。
この呉蜜察氏は、かつて民進党陳水扁のブレーンとなっていた方である。
台湾大学の助教授を務めていたこともある。
この方が、檜山氏の著書を読んでも特に文句を言ってこないそうで、日台戦争という表現はおかしくはないと考えているそうである。
なぜなら、台湾は中国の一部ではないからである。
日本が清国と戦った日清戦争と一緒にされるのはおかしいという認識である

もし、日清戦争の一部であると見なすなら、台湾は中国の一部であるとすることになるという問題意識だ。
この呉蜜察という方は、中国がもっとも嫌う人物のひとりである。
中国では「漢奸」と呼ばれているのだ。
その中国と一緒にされるのは許しがたいという考えから、檜山氏の著書に納得をされているという。
用語のつまみ食いをするNHKの目論みといかに異なるかがよく分かる。
私が、番組では日本と台湾とを断絶する意図があったのではないかと訊くと、
「番組をこの前見てみたけれども、わたしも違和感がある」とおっしゃっておられた。


最後に、話はかわって1、2分ほどの雑談に入った。
私が何度か中共の片棒を担ぐ番組の陰謀を強調した話の流れの中で、先生は「中国チベットを支配しようとしているでしょう、あれはおかしい」と前置きされた上で、台湾はそのチベットと一緒だと言う。
すかさず、「私もそう思っています」とこたえた。

檜山先生この度はどうもありがとうございました。

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2009/07/01 09:38

Commented by kinori さん

なるほど、そういう背景があったのですね。
NHKが「日台戦争」を番組で持ち出した流れと、檜山教授の著書での「日台戦争」部分の記述との間に違和感を感じていました。やはりここでもNHKは都合のいい用語をつまみ食いして利用していたわけですね。
ただそれでも残る疑問としてなぜ"日台"戦争なのかという部分がありますね。これもNHKの意図と檜山教授の考えはかなり違うのではないかと思っているのですが。
台湾独立派にとってはむしろ「日台戦争」としたほうが都合が良いのではないかという見方は、以前からNHKを擁護する側からよくいわれていましたね。実際そういう方がいたことも分かったわけですが、これもその真意を無視して自らの主張に都合よく利用している感が否めません。
しかし、すごいですね。番組放送後、檜山教授に直接取材されたのはinnerpantherさんが初めてではないですか?その取材力、調査力には感服します。ありがとうございました。

 
 

2009/07/01 22:59

Commented by innerpanther さん

こんにちは、どうもありがとうございます。

学術的な用語は、さまざまな文脈をふまえながら多角的な視点で考察をした上で考え出されますが、踏まえるべき文脈を隠して、それと異なる文脈に用いれば意味がいくらでもかわります。
これは意図的な歪曲を目論む場合に使われる手口ですね。

また、番組では「日台戦争」により、樟脳が「被害を受けます」と説明しています。
その平定戦と樟脳への被害との直接的な関係があるのであれば、その具体的な被害状況を示すよう、NHKに問合せをして1ヶ月くらい経つのですが、当たり前のように返答が来ません。
もう来ませんね、これは。

 
 

2009/07/02 08:36

Commented by 非理法権天 さん

そういうことですか。
私も中京大学に電話しましたが不在でした。

 
 

2009/07/03 00:22

Commented by innerpanther さん

こんにちは。
そういうことです、情けやはからいを逆手にとる典型的な手口ですね。

 
 

2009/07/14 08:49

Commented by ni0615 さん

To innerpantherさん
こんにちは。

檜山先生は、世情の「対立」に巻き込まれてさぞかし迷惑を感じておられることでしょう。ましてや見知らぬ人から、電凸されてその会話の内容を公表されてしまう。こんな迷惑は世の中にはありませんね。

しかも、といってはなにですが、innerpantherさんがここにお書きになったものは、文章上、どこまでが先生の<声>でどこからがinnerpantherさんの<解釈>かわからない。こういう形式のものが、WEB上の怪文書のネタ元になるのは世の通例です。

innerpantherさんは、檜山先生のお立場にたって、よくよくお考えの上でなさいましたか? ちと、ご配慮が足らないものだと思料します。

(私は、innerpantherさんが先生とお知り相でない、という前提で申しました。もしそうでないなら、失礼をお詫びしなくてはなりません。)

 
 

2009/07/23 03:08

Commented by innerpanther さん

>私は、innerpantherさんが先生とお知り相でない、という前提で申しました。もしそうでないなら、失礼をお詫びしなくてはなりません。

まず、あなたが気づいているように、先生と知り合いであるか否かという点にあなたの言いたい事が担保されているわけですね。電凸という語をあなたの都合であえて使っていることは理解できますが、ことばの一般的な意味を踏まえるべきでしょう。ちなみに、名前と身分を明かした上でお話をうかがっています。

>しかも、といってはなにですが、innerpantherさんがここにお書きになったものは、文章上、どこまでが先生の<声>でどこからがinnerpantherさんの<解釈>かわからない。こういう形式のものが、WEB上の怪文書のネタ元になるのは世の通例です。

怪文書という語を好んでいるようですが、表題にもあるように、ここに書かれていることは、大方、檜山先生が資料に基づいて述べておられる客観的な史実です。「日台戦争」という用語を除けば、特に檜山先生独自の解釈などはなく、日清戦史を専門としている方にとって、目新しい内容ではないでしょう。表題は、「『日台戦争』をうかがう」です。特にこちらの勝手な解釈などはありません。

>innerpantherさんは、檜山先生のお立場にたって、よくよくお考えの上でなさいましたか? ちと、ご配慮が足らないものだと思料します。

あなたは、自分の都合に合わせて誰かの立場を利用するのが随分得意なようです。
あなたのブログ(http://ni0615.iza.ne.jp/blog/entry/1044542/#cmt)に、「あなたのイイノガレに使われたブログの方もさもお困りのことでしょう」というあなた自身のコメントがありますが、さぞかし私の立場を気遣うような言い方で反応していますね。翻って今度はここに、檜山先生の立場を気遣うかのようにして反応してくれました。あなたは不都合な事実を突きつけられると、あまりに分かりやすい思考の働きを示してくれるようです。誰かの立場を自分の都合に合わせて利用することは、配慮が足らない以前の問題です。
あなた個人の勝手な解釈は魅力にもなる一方、弱点にもなりますよ。

 
 
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2009/07/20 05:53

NHK 捏造報道の検証 [風林火山]

 

NHKスペシャル JAPANデビュー 第1回 "アジアの一等国" の番組の内容は、 偏向、歪曲、捏造であるとして、問題になっている点は沢山ある。