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心の支え奪われ農家落胆 種雄牛49頭処分へ
(2010年5月25日付)
「宮崎の畜産をつぶすのか」「何のための政治主導だ」。東国原知事が種雄牛49頭を特例で「助命」するよう求めていた問題で24日、国は早々と殺処分の方針に鳩山由紀夫首相のお墨付きを得た。農家や家畜人工授精師、県や市町村、JAなど多くの関係者が長い時間をかけて練り上げた「血統」という財産。経営再建を目指していた農家は心の支えを奪われ落胆の色を濃くする。東国原知事は「何とかならないかという気持ちを持っている」と粘り強く交渉していく考えを示した。
「事態は刻一刻と変化している。行政はそれに追いつかなければ。果断な見直しと機動的対応が必要だ」。東国原知事は49頭の殺処分を決めた政府の方針にあらためて異を唱えた。
再建を目指す和牛繁殖農家にとって種雄牛の存在は心の支えだ。今月中旬に感染疑いが確認され、牛76頭が殺処分される川南町平田の阿部洋子さん(46)は「自分の牛が処分されても、種牛49頭がいれば何とか再建できると考えていた。先が全く見えなくなった」と言葉少な。
都農町川北の和牛繁殖農家女性(54)は「若い芽をつみ取らないでほしい」と訴える。地区内には後継者のため頭数を増やし、牛舎を新設した農場もある。「後継者とともに地域が盛り上がってきたところだったのに」とあきらめきれない。
種雄牛の改良には多くの人が携わってきた。人工授精師でつくる宮崎市家畜改良協会の川越良文会長(63)=同市田野町=は「種牛は宮崎の母牛に合うように何十年もかけてつくり上げた財産。どれだけ農家にとって大事か分かっているのか。49頭がいれば、また『日本一』を目指せる。法律は理解しているが、そのために私たちは未来を奪われる。何のための政治主導だ」と憤った。
和牛の改良に60年以上携わってきた元全国和牛登録協会県支部事務局長の黒木法晴さん(85)=宮崎市福島町=は「どれだけ多くの農家が人生を賭して宮崎牛をつくり上げてきたか。種牛が残っていることが農家の心の支えだった。もう絶望は十分に味わったのに、まだ奪うのか。国は宮崎の畜産をつぶすのか」と、怒りと悲しみに声を震わせた。