創価大学工学部が開発した超小型衛星(10cm×10cm×10cm)を搭載した金星探査ロケット「あかつき」の打ち上げが成功した。
このロケットには早稲田大、鹿児島大、創価大、UNISEC(大学宇宙工学コンソーシアム)がそれぞれ開発した4つの副衛星が載っている。

学会としても久々の明るい話で、相乗り衛星に「選ばれた」ことを、学会員らが誇らし気に語るのは結構なことだが、「選ばれた」背景も知っておいた方がいい。

前回の観測衛星「いぶき」への相乗り人工衛星募集の際、13大学が応募して6大学が選ばれた。創価大はこの時は落選した。その雪辱のため今回の「あかつき」に応募して、ようやく栄冠を勝ち取ったわけだが、今回は応募数が少なく、4大学・機関しか搭載希望してこなかったため、競争もなくすんなり仲間に入れてもらった、というのが実情のようだ。(下記資料参照)

とはいえ、だれでも希望すればチープな衛星でも載せられるわけではなく、一定の要求を満たす必要があるだろうから、その点創大黒川研究室は優秀なんだろうが、学会としては「勝ち抜いた」感が欲しかったところだろう。

[資料]
●選考過程について質した質疑応答記録 (文中PLANET-Cとは「あかつき」のこと)
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文部科学省 宇宙開発委員会(第24回)議事録・配付資料

(2)議題2.『PLANET-Cに相乗りする小型副衛星の選定結果について』
 委24-2について独立行政法人宇宙航空研究開発機(吉川産学官連携部長)より報告があった。

【野本委員】

 この候補の4つは、前から応募していたのか、それともPLANET-Cのためだけに応募した4つになるのか。

【JAXA(ジャクサ)(吉川)】

 お答えする。早稲田大学、鹿児島大学、創価大学は、去年5月の選考会にも残っていた3機関である。去年、残念ながら涙をのんだということがあり、今回に向かって相当事前準備を頑張っていたという結果が出ており、非常に今回魅力的な、なおかつ完成度の高い提案になってきている。
 あと、宇宙大学工学コンソーシアム、UNISECについては、先ほど申し上げたように、20大学がジョイントで参加しようということである。こちらは新規参入ということで、私どもはカウントしている。
 以上である。

【青江委員】

 混乱したのだが、通年応募受付なのであろう。

【JAXA(ジャクサ)(吉川)】

 はい。

【青江委員】

 そうであるのなら、何かチャンスがあれば載せていただきたいと持ってきているわけであろう。それは最低限のリクワイアメントをパスしているものはリスト登録という形で残るわけであろう。それで、今回チャンスがありましたといったら、今までたまっておるやつと、この機会にといってやってきたやつ、全部が審査の対象になるわけであるか。

【JAXA(ジャクサ)(吉川)】

 さようである。

【青江委員】

 であるから、今回選定をしたら、残った4というのは、それこそ何分の4になるのか、今までたまっておって、リストにあるやつと新規にきたやつ、それの母数の中から選ばれたわけであるか。4の中から4選ばれたわけではないのか。
 従前13ぐらい残っておったわけであろう。

【JAXA(ジャクサ)(吉川)】

 13機関の中から、今回のPLANET-C相乗りに希望いただいたのが3機関である。ご希望があったのは3機関ということである。それから、新規でこられたのが1機関。

【青江委員】

 搭載希望で残っておる人が他にもおるのだが、その人たちの中から一部4人だけが、今回のPLANET-Cに載りたいと。

【JAXA(ジャクサ)(吉川)】

 手を挙げたというわけである。

【青江委員】

 ほかの人は、今回のこれはどうも軌道が合わないから、いいですよと言っておる人ということか。

【JAXA(ジャクサ)(吉川)】

 今回、PLANET-Cに行く軌道が、傾斜角があまりないとか、あと、1周しか回らなくて、金星に向かうとか、いろいろ軌道の特殊性というところが相当バリアというか、難しさになったということで、その結果として3大学が、300キロの軌道で2週間ぐらいでもやりたいという表明をしていただいたということである。

【松尾委員長】

 4件の搭載希望があったということで、平たく言えば、搭載希望なさった方はみんな入っちゃったということか。

【JAXA(ジャクサ)(吉川)】

 今回は搭載希望いただいた4機関すべてオーケーという結果になっているので、そこの部分では非常によかったのではないかと思う。
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なお、相乗り4機のうち、創価大、早稲田大、鹿児島大の人工衛星は、地球周回軌道上で放出され、所定のミッションを行ったあと、大気圏に落ちて燃え尽きることになるが、UNISECグループの1機(*)はあかつきと共に金星に向かい、大学製で世界初の深宇宙航行衛星となる。

(*)UNITEC-?:21の大学・高専が共同開発した人工衛星(35×35×35cm)。この衛星のミッションのひとつに「UOBC生き残りコンペ」というのがあって、これが大変おもしろい。厳しい審査を経て勝ち残った6大学のコンピュータ・ユニットを衛星キューブに搭載し、金星への深宇宙フライト中、宇宙線などの過酷な環境下で、どの大学のコンピュータが最後まで作動し続けるかを競うというサバイバルレースだ。最後に勝つのはどの大学か。

コンペ参加大学:東京理科大学、北海道工業大学、高知工科大学、東北大学、慶応義塾大学、電気通信大学。
http://www.unisec.jp/history/ws2009/UNISEC09-UNITEC-1.pdf