WWW http://www.iwate-np.co.jp

韓国哨戒艦沈没 時間を逆戻りさせるな


 朝鮮半島が、にわかにきな臭くなってきた。3月に黄海で起きた韓国海軍の哨戒艦沈没について、韓国軍と民間専門家の合同調査団が20日、北朝鮮の関与を打ち出した。

 韓国が報復攻撃を行う可能性はないが、米韓合同軍事演習の準備や、国連安保理に提起するなど北朝鮮への圧力を強めるために動き出す。南北の対立が高まるのは必至とみられる。関係国には冷静な行動を望みたい。

 哨戒艦は3月下旬、黄海上の南北境界線近くで爆発、沈没。船体は真っ二つに割れ、乗員46人が犠牲となった。

 調査団は「原因は北朝鮮製の魚雷による水中爆発」と発表。証拠として、現場周辺で発見された魚雷と魚雷のスクリューの部品の特徴が北朝鮮が作成した資料と一致したことなどを挙げ、「北朝鮮の小型潜水艦から発射されたという以外に説明しようがない」とした。

 北朝鮮は「でっち上げ」と真っ向から否定。韓国側が報復行為や制裁に出た場合には「全面戦争を含む強硬措置で応える」と警告した。

 調査団には米海軍のほか、英国、オーストラリア、スウェーデンの専門家も加わっており、信頼性が高い結果とみてよいだろう。

 挑発行為で多くの人命を奪った行為は国際的に非難されるべきだが、北朝鮮がなぜこのような攻撃をしたか、その理由は依然不明だ。

 今月初め、北朝鮮の金正日総書記の訪問を受けた中国はこれまで「科学的で客観的な調査」の重要性を主張してきた。今回の発表を受けて、どのような反応を示すかが注目される。

 今年は朝鮮戦争が始まって60年の節目。今も休戦のまま緊張関係が続いている。今回の発表を軍事的緊張に発展させてはならない。不測の事態が起きれば、東アジアの安定は損なわれてしまう。

 重要なのは、北朝鮮に関係してきた国々が足並みを乱さないことだ。

 今回の沈没問題で、北朝鮮の核問題を協議する6カ国協議の再開は遠のいたことは間違いない。しかし、これまで積み重ねてきた関係を崩してはならない。

 決定的な役割を果たすのは中国だ。韓国と共同歩調をとる日本、米国に慎重な対応を求めるなど一線を画しているが、北朝鮮に自制を促す役割を果たしてほしい。

 関係国間にある「温度差」が対立に向かわないよう、一層の外交努力が求められる。クリントン米国務長官が週末から、日中韓3国を訪問して沈没問題への対応を協議するのが、その一歩となる。

 今月下旬には韓国で日中韓首脳会議が開かれ、その後に中国の温家宝首相の訪日も予定されている。

 この好機を生かすべきだ。あいまいな決着をすれば、ひいては北朝鮮の核問題にも悪影響を与えるだろう。同時に北朝鮮を将来、6カ国協議に復帰させる道も模索していく必要がある。時間を逆戻りさせるばかりではまずい。

村井康典(2010.5.21)

     論説トップへ戻る

トップへ