主要国で最も高い水準とされる日本の法人税の引き下げを目指すと、直嶋正行経済産業相が18日表明した。現在は約40%の実効税率を「まず来年度から5%程度引き下げたい」という。税負担を軽くして、企業の国際競争力の回復を促し海外流出を防ぐ狙いがある。6月にまとまる政府の新成長戦略に数値目標として盛りたい考えだ。
高速鉄道や原発などのインフラ輸出を政府が支援するのと同様、供給(企業)側の押し上げが経済成長に不可欠だとの立場だ。個人消費などの需要側に偏っていた鳩山政権の経済政策を修正する動きといえる。ただ、景気の低迷で税収は落ち込んでおり、政府内の調整は難航しそうだ。
直嶋氏は、産業構造審議会(経産相の諮問機関)で審議中の「産業構造ビジョン」骨子案の中で、法人税率の見直しを提言した。いずれ「国際的水準(25〜30%)」にすべきだとの目標も示した。
経済産業省によると、海外では法人税の引き下げが相次ぎ、アジアや欧州の国々と日本との差は15ポイント程度まで拡大している。同省の試算では、法人税の実効税率を5%幅下げた場合、少なくとも年1兆円の税収減になる。しかし、企業の国内投資の増加や海外からの対日投資の呼び込みなどが期待され、税収を3年間で2兆1千億円増やす効果があり、中長期でみると賃金や雇用の増加につながると説明。同省は併せて、研究開発投資などに対する減税措置の拡充も求めた。(益満雄一郎、伊藤裕香子)
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〈法人税の実効税率〉 企業にかかる税金には、国税の法人税と、法人住民税などの地方税がある。これらを定めた法律や条例で、企業にかけるとされた税率を表面税率と呼ぶ。しかし実際には、払った税金の一部が翌年、損金として課税対象の利益から差し引かれるので、これを考慮して算出した理論上の税負担率を実効税率と呼ぶ。