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医療新世紀
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2010.05.25

「飲酒の健康影響」-(3) 
女性と高齢者に広がり 社会進出、定年退職機に

 女性と高齢者のアルコール依存症が増えている。特に深刻なのが、30代を中心とした若い女性と定年退職後の男性。国立病院機構久里浜アルコール症センター の樋口進・副院長は「女性の社会進出に伴う飲酒行動の変化と、日本社会の急激な高齢化が背景にある」と指摘する。
 樋口副院長らの厚生労働省研究班は1997年と2007年、全国11の専門病院を受診したアルコール依存症の新規患者の年齢や性別を調べた。20100525rensai.gif
 患者数は2119人から2614人と23%増加。うち女性は318人から53%増の486人に、60歳以上の人は493人から42%増の698人に急増していた。07年の患者に占める比率は女性19%、60歳以上27%。後者はほとんどが男性のため、女性と高齢男性で新規患者の半数近くを占める状況だ。
 06年の調査によると、全国54の専門病院の入院患者は、男性では50代が最も多いが、女性は30代がピークという。
 若い女性の飲酒傾向は強まっている。08年の調査では、20代前半の一般女性の飲酒率が同年代の男性を初めて上回った。未成年の飲酒経験を調べた内閣府の調査でも、高卒以上の女性の飲酒率は同年代の男性より高くなっていた。
 樋口副院長は「女性向けに果実風味のカクテルを売り込む酒類メーカーもこの風潮を助長している」と指摘する。
 女性は男性よりアルコールの影響を受けやすい。肝臓が小さいため代謝が遅く、酒量が同じでも血中のアルコール濃度が高くなる。女性ホルモンの影響でアルコール摂取に伴う肝臓障害が起きやすく、アルコール依存症になるまでの期間が男性より短いとの報告もある。
 樋口副院長は「男性と一緒に飲む機会も増えたが、仕事はともかく酒で男性と勝負するのは避けてほしい」と話す。
 定年退職後に酒量が増え、アルコール依存症に陥る男性も少なくない。仕事中心で酒だけが楽しみという生活を送ってきた人が退職すると、毎日が日曜日のようになる。時間を持て余して『ちょっとだけなら』と朝から飲み始め、飲酒をコントロールできなくなるという。樋口副院長は「すでに団塊世代の大量退職が始まっており、今後の増加が心配だ」と語る。(共同通信 吉村敬介)(2010/5/25)