ドラゴンズOBの打球が軽々と弾んでいくのに、“現役”の打球が飛ばない。鉄平、中村紀、山崎…。中日出身の楽天の3、4、5番にやられた。そしてこちら、竜の看板クリーンアップはブランコの1発による1点だけなのだ。
皮肉な結果。寂しい完敗。ただ、悲観することはない。試合後、落合監督は冷静だった。
「打つ方はこんなもんでしょ。いいのもいれば、悪いのもいる。みんながみんな良けりゃ点数取ってる。みんなが悪けりゃゼロで終わってる」
見る人が見れば分かる。救いのない状態ではない。でも、とにかく手を焼いたのは天敵マー君だ。昨季は交流戦2試合で2勝を献上。防御率0・64。今年の初対戦は7イニングで1点だけ。脱帽するしかなかった。
せめてもの一矢がブランコだった。6回に中堅の黒いクッション部分に突き刺さる弾丸ライナーの10号ソロ。フォークボールに「うまく体が反応できたよ」という1発は6試合ぶりアーチだった。このところ不振にあえいでいた4番。これが復調の兆しなのか。
落合監督は「あまり評価しないだろ? 1試合、2試合で。オレはしないよ」と、話した。簡単に合格は出さない。「いいか悪いかは見てりゃ分かるよ。結果がすべて。誰も助けてくれない。そういう世界。それを受け止めて解消できないと、一本立ちできない」。4番はまだ不振の峠を越えてはいないようだ。
試合後、ブランコがロッカー室から出てきたのはゲームセットから約2時間も後だった。屋内練習場に居残って、打ち込んでいたのだ。
「1日に3本でもホームランを打てればいいけど、そうできるものでもないからね。少しずつ良くはなってきているけど、今は状態が良くなるように、毎日自分のベストを尽くすだけだよ」
歯切れは悪い。表情がさえない。まだ復調と言えない。だから黙々とバットを振り込んだ。
3番・森野も止まった。2試合連続ノーヒット。並の打者ならよくあることでも、今季の森野は違う。4月10、11日以来となる2度目の“珍事”だったのだ。4割をキープしていた打撃に陰りが出ている。「今日はお話できるような状態ではないです」。言葉少なにドームを後にした。
この日は早出特打を行った。約30分間、必死に振った。全体練習のフリー打撃では落合監督のチェックを受けながらフォーム修正。師の助言を消化しようと、身ぶりを交えながらスイング動作を繰り返した。
マー君とはもう一度、次は仙台で対戦する可能性がある。まずは連敗阻止。この日は白旗だったが、主軸は休まずバットを振り込んだ。やり返す機会はある。 (生駒泰大)
この記事を印刷する