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文/宇田川敬介(コンサルタント・ジャーナリスト)
宮崎県の畜産が大変なことになっている。口蹄疫が連休前から徐々に広がり、数万頭(もっと多くなっているかもしれませんが)の家畜が殺処分されています。
これに対して、政府はまったく手を打たず、連休中も外遊をしたり、普天間問題で沖縄県民から非難されたりという始末です。 さて、この問題に関して「なぜマスコミは報じないのか」と、私に言ってくる人が多いので、この辺で考えをまとめておこうと思います。普段、読んでいただいているイメージとは違うことになるかもしれませんが、マスコミ、ことに新聞社の役員をしている私が、私の立場でマスコミを語るのもよいのかもしれません。 まず、結論から言って今回の「マスコミ批判」は少し異常です。 そもそも宮崎県側(あえて団体名などを伏せます)が、「政府が対策をとり、めどがつくまでマスコミの報道規制協力」を申し述べてきて、そのうえで、鹿児島や熊本などが同調した経緯があります。マスコミ側も、政府が緊急に対策をとるものと信じ、「火事が小さいうちに消される」という確信の下、報道を控えていました。 報道を控えたのは、まぎれもなく、宮崎県の畜産業の振興のためです。ここで小さい事件である間に大きく報道しては宮崎の畜産に大きな打撃になります。 皆さんは違和感があるかもしれませんが、マスコミはマスコミの影響力そのものも非常によく知っています。BSEの時に、検査済み牛肉も売れなくなり、都内の焼き肉店などが経営の危機にひんしたのは記憶に新しいところでしょう。宮崎県側とマスコミが、それを最も恐れた結果といえます。当然、その前提は「政府が早急な対策をすること」であるのは、言うまでもありません。 しかし、その政府が何もしなかった。 最も大きいのはここです。 民主党は、マスコミが取り上げるような選挙に関係があることしかしない政権です。マスコミが大きく騒げばすぐに対策をとるかもしれません。しかし、その後数年間は宮崎県産の肉は都会での流通の信用に耐えられなくなることになります。「口蹄疫事件があったが、このような対策ができたので解決した」という報道をマスコミも宮崎県側も期待したのは言うまでもありませんが、政府によってその期待は裏切られたのです。 裏切られたとわかった瞬間に、「報道をすればよい」という意見もあるかもしれません。しかし、当初の宮崎県産の肉の信用の低下ということは、避けられなくなってしまいます。ではどうすればよいのか。そこが問題になります。 今回の件に関しては、あえてマスコミの肩を持つ意見を述べました。 私が思うところ、「マスコミが騒がなくてもやるべきことをやるのが政府」と考えています。マスコミが動かなくても、今回の事件は政府が行うべきことではないでしょうか。 そう考えると、批判の行き先は、本来マスコミではなく政府ということになります。逆に今回、報道をしないことで「マスコミは民主党寄り」という批判をするのであれば、それは当たっているかもしれませんが、少なくとも事実認識が欠けていることは間違いがないでしょう。 口蹄疫から離れて、報道は影響力が強いだけに、その行使は慎重に行わなくてはなりません。小泉郵政選挙も、昨年の政権交代スローガン選挙も、いずれも、その影響力によって国民が動いた結果でしょう。しかし、その結果日本はよくなったでしょうか。 では、何がマスコミを悪くしたのでしょう。ここにも国民の問題があります。受け手が、しっかりと勉強していれば、マスコミが報道しなくてもわかりますし、また、政治で言えば、イメージ投票をやめれば、政策がきっちりと反映されるようになります。 政治もマスコミも、結局国民の民度に合わせて、その質を低下させてしまっている。われわれ記者の間では、そのようなことを平気で言います。批判が多いのもわかりますが、では、私に「口蹄疫でなぜマスコミは報道しないのか?」と質問してきた皆さんは、この事件を広めるために何をしましたか? 結局マスコミ、という第三者頼みではないでしょうか? マスコミの現場にいてまさにそのことを痛感する毎日です。 あえて、今回は議論になる意見を申し上げました。様々なコメントを期待しております。 ※本コラムは、青山繁晴、宇田川敬介、小野盛司、河内孝、櫻井よしこ、すぎやまこういち、石平、西村幸祐、廣宮孝信、藤井厳喜、三橋貴明、渡邉哲也らのコラムニストが執筆し、毎日更新されます。