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[PR] 新しい価値創造へチャレンジするオムロン

小型・高周波・高信頼のRF MEMSスイッチを発売,10GHzの高周波伝送と1億回以上の寿命を実現

MEMS(micro electro mechanical systems)技術を駆使した先進的なデバイスの製品化を進めているオムロンは,新たなMEMSデバイス「RF MEMSスイッチ」を2008年9月26日に発売する。一種の有接点リレーであるRF MEMSスイッチは,極めて小型であり,10GHzと高い周波数の信号を機械式接点で制御できる。しかも,これまでなかなか実現できなかった1億回以上の開閉信頼性を保証している。同社は,半導体テスタや広帯域オシロスコープなどの高周波計測器を皮切りに用途を拡げ,積極的にRF MEMSスイッチの市場を開拓する考えだ。

図1 RF MEMSスイッチの構造と動作図1 RF MEMSスイッチの構造と動作

 RF MEMSスイッチは,MEMS技術を利用して実現した微小な機械式スイッチ内蔵のデバイスである。外部から電気信号を入力してスイッチのオン/オフを切り替えることができる。つまり,有接点リレーの一種と言える。「これまでセンサを中心にMEMS応用製品を展開してきました。RF MEMSスイッチは,オムロンにとって新たな分野のMEMSデバイスです」(オムロン セミコンダクタ統括事業部 マイクロデバイス事業部 事業企画部 商品企画課 城島正男氏)。

 オムロンが製品化するRF MEMSスイッチは,(1)表面に金属製の固定電極を形成したガラス基板,(2)可動接点および可動電極が一体になったシリコン・アクチュエータ,(3)ガラス・キャップの大きく三つで構成されている。ガラス基板にシリコン・アクチュエータを接合。さらにその上からガラス・キャップをかぶせて封止する。H型の板状をしたシリコン・アクチュエータは,両端が可動電極,中央部が可動接点になっている。 このデバイスの動作の仕組みは以下の通り(図1)。可動電極の下部にある固定電極の上には誘電体層が積層してあり,可動電極とその真下に位置する固定電極(および誘電体層)がコンデンサを構成している。つまり両電極に外部から電圧を印加して,可動電極と固定電極に電位差ができると,両電極間に電荷が蓄積される。このとき生じる静電引力で,可動電極が下方に引かれることによって,中央部の可動接点が下方へ移動。真下にある固定接点に接触する。入力する電圧を遮断すれば,シリコン・アクチュエータの復元力によって可動接点が上方に移動して接点が離れる。

設計者のニーズに応える信頼性を実現

 このデバイスは,大きく四つの特長を備える。第1は,小型であること。MEMSの技術を利用することにより,2.3mm×1.9mm×0.9mmと極めて小さいRF MEMSスイッチ・チップを実現した。

図2 RFスイッチの製造工程図2 RF MEMSスイッチの製造工程

 第2は,10GHzと高い周波数の信号を制御できること。機械式接点を備えているうえに,小型化にともなってデバイス内部の配線が短くなったことから,高周波信号を通したときにデバイス内部で発生する損失が小さい。

第3は,1億回以上の開閉信頼性を達成していること。「有接点リレーの寿命に対する市場要求の一つのメドが1億回です。ところが従来の機械式リレーで,これだけの回数の寿命を保証している製品は市場にはなかなかないのが現状でした」(城島氏)。

 第4は,消費電力が小さいこと。アクチュエータの駆動に静電引力を利用しているので,電流の消費がごくわずかである。これに対して電磁力を利用する機械式リレーの場合,コイルに電流を流さなければならない。「駆動時に熱が発生しないのもRF MEMSスイッチの利点です」(城島氏)。  

 もう一つ見逃せないのは,同社のRF MEMSスイッチは,ウエーハ・レベルで組み立てるので量産性も高いことだ(図2)。具体的には,電極を形成した固定ブロック基板(ガラス)上に多数のアクチュエータを設けた可動ブロック基板(シリコン)を接合する。さらにその上にキャップ基板(ガラス)を接合。最後に一つひとつのデバイスに切り分ける。

半導体テスタ・高周波計測器がターゲット

 同社が最初に製品化するRF MEMSスイッチは単極双投(SPDT:Single Pole Double Throw)タイプである(図3)。「高周波回路に使うリレーのほとんどは,信号経路の切り替えに使われています。そこで最初の製品は単極双投タイプを選びました」(城島氏)。このデバイスは,RF MEMSスイッチ・チップ2個を,表面実装型のセラミックパッケージに収めて一つのデバイスにしたものだ。外形寸法は,5.2mm×3.0mm×1.8mm。入力信号の周波数が10GHzのときのインサーションロスはおよそ1dBである。もちろん開閉信頼性は1億回以上(0.5V0.5mA抵抗負荷)を保証している。

図3 SPDT(Single Pole Double Throw)タイプのRF MEMSスイッチ図3 SPDT(Single Pole Double Throw)タイプのRF MEMSスイッチ

 当面のターゲットとしている主なアプリケーションは,半導体テスタとハイエンドの高周波計測器である。半導体テスタには,1台の装置に1万個以上のリレーが組み込まれているという。「しかも,LSIの高速化が進んでいることから,テスタの高速化も図らなければなりません。ここでRF MEMSスイッチに対するニーズが高まるものと期待しています」(城島氏)。このほか,高速オシロスコープやスペクトラム・アナライザなどの広帯域の信号を扱う計測器向けにも積極的に売り込む考えだ。

 同社は,単極双投タイプにつづき,さらにRF MEMSスイッチの接点構成のラインナップを拡充していく予定である。「小型・高周波・低消費電力,しかも高信頼性を備えたRF MEMSスイッチの用途は数多くあるはずです。できるだけ多くの技術者の皆さんに興味をもっていただきたいと思っています」(城島氏)。

 ※ 会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。

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