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[18458] 現代兵器で勇者始めました(ネタ)
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/11 00:38
先に投稿した作品に酷評を頂いたのでシナリオを全面的に改変してみました。

主人公は現代兵器のみで戦うこととなります。魔法の類は全く使えません。相変わらずネタに走ったり、文章が拙かったりしますが、御付き合い下さい。

この作品のジャンルはファンタジーです。純粋に軍事やリアルサバイバルを楽しみたい方は他を当り下さい。正直、突っ込み所だらけの作品です。

あと、勘違いされがちですが、この作品は主人公最強ではありません。作品内部では作戦次第で現代火器が前面に押し出て魔王軍を撃破する、とかはあるかも知れませんが、それだけで勝てるほど魔王軍は甘くはありません。

最初の雑魚には楽勝するかもしれませんが、中ボスくらいから苦戦し始める予定です。と言うか、それまでに相応の文章力を身に付けておきたいと思います。

現実の運用と作品の都合を天秤にかけた場合、他のSF作品やファンタジー作品を参考にして、作品の都合を優先する場合があります。その場合は設定に明記したいと思います。



[18458] プロローグ 勇者と現代兵器
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/22 08:15
Q.俺は誰?ここは何処?
A.俺は北条透。ここは異世界

こんにちは。少し現実逃避に走ってみた北条透です。俺は今、地球ですらない世界に居ます。何でそんな事になったのかと言うと、以下回想。

俺は部屋でガンカタログと兵器大全と自衛隊装備年鑑を眺めていた。

祖父の片方は帝国海軍で元連合艦隊旗艦長門型二番艦の陸奥に乗り込んだ戦艦乗り。

もう片方は戦前の柔道大会で国体に出るほどの猛者。そして、親戚には自衛隊関係者がちらほらと。

俺はそんな家系に生まれた。

俺は小さい頃からメカに興味を持っていた。

それが段々と兵器やSF系のアニメに移って行き、今ではメカ、軍、アニメの三つのオタクをやっている。

まぁ、お陰でどれも中途半端感は否めないんだけど。

で、そんな俺ですが、いきなり開いた穴に落っこちました。

落っこちた先は異世界。なんでさ。

「おお、勇者よこの世界は今、滅びに瀕しています。どうか、お力をお貸し下さい」

「俺、勇者?」

「はい。過去の勇者は皆、召喚と共に持参した書物から力をえり、世界を救われました」

あっるえぇぇー?

俺が持参したのってガンカタログに兵器大全と自衛隊装備年鑑ですよ?

これで世界を救えと?

普通こうゆうのって魔法とか剣とかでなすものとちゃいますの?

そんな俺の大混乱を差し置いて浮かれまくる神官たち。

何故か現代兵器と異世界に召喚されてしまった俺の冒険譚が始まります。



[18458] 第1話 戦力把握は戦術の基礎です
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/22 08:36
皆さんこんにちは。異世界に現代兵器と共に召喚されてしまった北条透です。

何でも俺は勇者としての責務と全うしたとこの世界の神様に判断してもらえないと帰れないそうです。

何だそれは?良い迷惑です。

愚痴ってても仕方ないので早々に異世界召喚時に与えられた能力の把握をするとしましょうか。以下俺の所持品。

ガンカタログ、エアガンのカタログだったけど、実銃として召喚できるっぽいです。

兵器大全、世界中の戦車と戦闘機が載ってます他にも軍艦とか載ってるけど、使えないでしょ、これは。

自衛隊装備年鑑、F-X候補から戦闘糧食まで自衛隊の装備は載ってます。

うん。戦争できるね。問題はこれ、使えるのかだよね。

試しに89式小銃召喚。出た89式小銃。重いな。これが本物の自動小銃。

…何個まで召喚できるんだろ? 連続召喚! ドサドサドサドサ。

…うん、やりすぎました。目の前には一個中隊を編成できそうな銃器があります。

「勇者様、これは一体?」

「いや、少し書の力を把握しておこうかと思って。これは俺の世界での主力武器、自動小銃だ」

「自動小銃ですか?」

「壊れても良い鎧、有る?」

用意してもらった鎧を案山子に被せて大体20メートルくらい離れて銃を構えました。

やべぇ、これで外したら恥じゃ済まねえぞ。緊張してきた。

ターン。

乾いた銃声が響く。良かった、当たった。

でも、皆さん微妙な顔。

「…地味ですな」「地味でね」「地味ですの」

うっせーぞ! 貴族ども。

反対に騎士団は何か戦慄している。

「王室騎士団のミスリル合金の鎧が…」「反対側まで貫通している…」

何かミスリルとか聞こえたけど聞かなかったことにしときましょう。

調子に乗った俺は色々と召喚を繰り返す。

FN-MINIMI

タタタタタタタタタタ。

200発一気に撃ちつくす。銃身から湯気が立ってる。

やっぱり連射のしすぎは良くないみたいだから、途切れ途切れに引き金引かないといけないんだろうな。

でも、銃身過熱の発生する弾数なんて知らねっつの。

「おお~」「さっきに比べれば凄いですの」「さっきが地味すぎたんじゃ」

おいこら、貴族ども。隣で好き勝手言ってんじゃねえ。

「あれを連射されたら…」「一個騎士団が壊滅する」

騎士団は顔色悪いよ?現代兵器の恐ろしさを理解しているみたいだね。

次、110mm無反動砲

チュドーン!

「ファイアボールと同じくらいですかの?」「いや、高位の魔法使いならもっと威力が有るものを撃てますぞ」「…勇者、期待外れですかの」

貴族ウゼー。あんま騒ぐとテメエらの領地で気化爆弾使うぞ、コラ。

「ミスリルが融けている…」「一体、どれ程の高熱なんだ…」

騎士団は変わらず戦慄しっぱなし。

まぁ、形成炸薬弾なめるなって事ですよ。

単一の金属板なら30センチの鉄板だって貫通するんだからな。

防ぎたきゃ複合装甲持って来い。

「勇者殿、ようこそマケドニアへ。マケドニア騎士団の名において貴殿を歓迎いたします」

「騎士団が引き取ってくれるなら」「そうですの。魔王討伐に失敗した時の負債も半端ではないことですし」「今代の勇者に投資する気にはなりませぬ」

…もうこいつら的にして良いか?

「勇者殿、お気になさらず。あの金の亡者どもはこの道具の恐ろしさに気付いていないのです。見た目の派手さなんて飾りです。偉い人にはそれが分からないんです」

「ありがとう騎士殿。現代兵器の素晴らしさに気付いてくれて」

「私はジャスティン・クライトン。マケドニア第一重装騎士団団長をしています。ジャスティンとお呼びください」

「俺は北条透。透が名前で北条が家名。透で良いよ」

「はい。トオル殿」

金と銀を足して2で割ったような髪を腰まで伸ばしたジャスティンは天使のように微笑んだ。

…思わずこれがニコポかと赤面してしまったのは余談である。

「ところで魔王って?」

「この国の北に位置する谷に存在すると言われています。強力な魔法を扱い、その配下に精強な魔王軍を有し、定期的に我が国を始めとする各国に攻めて来るのです」

「それを俺に倒せと?」

「期待していますよ。勇者殿」

「\(^o^)/」

絶望した!召喚されるときに魔法関係の書を持っていなかった俺に絶望した! 欝だ…死のうorz。

「気は済みましたか?」

「ご免、ジャスティン。もうちょっと絶望させてて」

「はい。ではお待ちしています」

「………」

「………」

「………………」

「………………」

「あの、そこに居られると凄い落ち込み難いんですけど…」

「私のことは気にせずに絶望をお続け下さい」

「………」

「………」

「………………」

「………………」

「………俺の負けです」

「絶望はもう良いのですか?」

「もう良い。自分で何が出来るか考える」

「それでこそ勇者殿です」

「その呼び方止めて凄いプレッシャーだから」

「では、トオルと。ああ、この響きは実にアナタに似合っている」

「…ジャスティンって本当にこの世界の生まれ?」

「勿論ですが、何か?」

「いや、いい」

一瞬脳裏に赤い英雄が浮んだ俺だった。

「ところで、アナタの保護責任者は私になりました。これから私の家に向かいます」

「…マジで?」

「マジです」

ジャスティンの家、と言うか首都における活動拠点は中々に大きい屋敷だった。

出迎えは年配の執事さんとメイドさんが数人。本物のメイドさん初めて見たよ。

「お帰りなさいませ、お嬢さま」

「うん、セバスチャン。今帰った」

「彼が?」

「ああ、今代の勇者だ。ミスリル製の鎧を木っ端微塵にする道具を召喚する」

「それ程の者を貴族が持って行かなかったのですか?」

「地味だからな。見た目はファイア・ボールにも劣る」

「何と!? それだけの炎にミスリルを木っ端微塵にする威力を込められるのですか!」

「凄いだろう。貴族には分からないよ」

「勇者殿、自己紹介が遅れました。私、お嬢さまの執事をしているセバスチャンと申します。以後、お見知りおきを。こちらの3人は当屋敷でメイドをしている者達でございます」

「メイド長をしているキャサリンですよろしくお願いいたします」

金の髪を後ろでまとめている優しそうな女性。マブラヴの月読さんを金髪にした感じ。

「屋敷の保全全般を担当しているエイミーです」

何と言うか無表情です。シャッフルのプリムラが無感情のまま成長したらこんな感じになったんじゃね?みたいな。

「料理を担当しているソフィーです。今日はお嬢さまが初めて屋敷に男性を招かれた記念日です。腕に依りを掛けますわ♪」

人生、何でも楽しいです。つまらなくても楽しみます。といった感じの女性。月姫の琥珀さんみたいな?

「ちょ、ちょっとソフィー。余計なこと言わなくて良いの(赤面)」

「北条透。透が名前で北条が家名。勇者なのに現代兵器を使うイレギュラーだ。よろしく」

「「「「はい!」」」」

ちなみに、その日の料理はとても美味しかったと言っておこう。



[18458] 第2話 勝手に動く戦車って邪道?でも、そんなの関係ねぇ!
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/22 08:22
「第一小隊構え!てぇーー!!」

耳栓をした俺の合図でジャスティンの第一重装騎士団の団員が一斉に引金を引く。

使っているのはAK-47。頑丈で有名なあのライフルです。

タタタタタタタタ

「安全装置確認。チェンバー内が空であることを確認」

的にしていた案山子は見るも無残な状態である。

まぁ、30発もライフル弾を受ければこうなって然るべきだけど。

俺は召喚された日からマケドニアの戦力増強に励んでいます。

貴族から噂を聞いていたのか、王様は今代の勇者である俺をガン無視して進めるそうです。

騎士団と国防軍の一部を俺の指揮下に入れることは認めさせたからこっちも好きにやらせてもらおう。

目的は元の世界への帰還。早く帰ってネット小説を読むんじゃい。

「次、第二小隊! マガジン装着! 初弾装填! 安全装置解除! 狙え! てぇーーー!!」

メガホン片手に次々と指示を出す。

それにしても、流石は傭兵や民間軍事会社を顧客に狙った高級品。

素人が扱っているのに弾詰まり一つ起こしません。

「ジャスティン。ここよろしく。俺、ちょっと書の使い方を研究してくる」

「行ってらっしゃい」

昨日と今日の実験で銃火器の類は無限に召喚できることが分かっている。

次は兵器に挑戦だ。尤も、戦車とかは扱い方分からんがな。

ジャスティンとは昨日の内にタメ語で話すようになった。

勇者様って柄じゃないから敬語を止めてもらった。

「召喚。高機動車」

自衛隊年鑑を見ながら召喚する。

『キタヨ、キタヨ』

あれ?何か聞こえた。

『ユウシャ、ユウシャ。ボク、ドウスレバイイ?』

あの、何かライトがピカピカ光ったり、ワイパーが動いたり、何より高機動車が俺に纏わりつくんですけど?

「高機動車が喋って動いてる?」

『セイレイ、セイレイ。書ニ、頼マレタ。ユウシャ、助ケテヤッテクレ、ッテ頼マレタ』

「高機動車の精霊なのか?」

『違ウ、違ウ。コノ世界ニ、昔カラ居ルセイレイ』

「もしかして、他の車両なんかも?」

『操レル。操レル』

「数は?」

『セイレイ、イッパイ居ル。数エ切レナイ』

「いよっしゃーー!! これで勝つる!!」

正直なところ、兵器関連の物は全て無駄になってしまうかと思ったが、流石異世界召喚。その辺もばっちり考慮済みか。

『デモ、気ヲ付ケテ。魔王軍手ゴワイ。トッテモ手ゴワイ』

ですよねー。つうかファンタジー相手に現代兵器ってどこまで通用するんだ?

「なあ、機械が動かなくなると精霊ってどうなるんだ?」

『依代ガ無クナッタセイレイ、還ル、還ル。デモ、呼バレタラ、マタ来ル』

「死という概念は?」

『セイレイ、世界ノ一部。セイレイ、死ヌトキ、世界ガ、死ヌトキ』

死という概念は無いのね。

良かった。俺の戦術じゃ、現代兵器は捨て駒になってしまう。

その度に精霊が死んでたら気が狂いそうだ。

『ユウシャ、優シイネ、優シイネ』

「…臆病なだけだい」

『ユウシャ、照レテル。ユウシャ、照レテル』

「うっせい」コツン

『イテナ』

次はこの世界の魔法の戦力把握と行きますか。

「ジャスティンの騎士団には魔法使いは居るのか?」

「勿論居るよ」

「攻撃魔法が使える奴を呼んでくれ。出来れば系統別に」

「分かった」

数人の魔法使いが呼ばれた。

「この世界の魔法の威力を知りたい。あの案山子に向かってそれぞれの得意とする攻撃をしてくれ」

「はっ!」

「一番手、炎属性、行きます! ファイア・ボール!」

召喚された炎の塊は案山子に直撃する。

ウッゼ~貴族が対戦車ロケットを地味と言っただけの事はある。

案山子は一瞬で炎に包まれる。が、

「……なあ、ジャスティン。あの案山子、何で出来るんだ?」

「丸太だけど?」

「普通に原型残ってるよな?」

「丸太を完全に焼き尽くす魔法使いなんて早々居ないよ?」

「………」

「二番手、水属性、行きます! アクアウォーター!」

大気中から召喚された水が丸太に向かう。

その水量は消防車の放水を上回るだろう。でも、

「なあ、ジャスティン」

「何?」

「あの丸太どれだけ地中に刺さってるんだ?」

「50センチ位かな?」

「傾いてもいないよな? これ威力あるのか?」

「相手が鎧とか着ていると耐えられることも有るからね。その代わり一度押し流せば鎧が重くて簡単には立てないよ?」

「……………」

「三番手、雷属性行きます! サンダーボルトー!」

ビリビリビリ。四方に飛び散る雷。

うおっ!? 危ねえ、こっち来た!

「どこ狙ってるんだ!?」

「雷属性は制御が難しいんだよ」

「…………」

「接触すれば問題はないよ? 威力を調整して流すと肩こりが取れるんだ」

「…………」

「四番手、土属性、行きます! アースニードル!」

トタタタタタと走り出す魔法使い。

「なあ、ジャスティン。彼は何をやってるんだ?」

「土属性は有効範囲が狭いからね。ここからでは完全に射程外だよ」

「…………」

「はぁはぁ、アースニードル!」

ドカーン!……ドサ!! 地面から盛り上がった土の槍は案山子を完全に貫通した。

「威力はそこそこあるのか? でも剣で斬りつけた方が早いな」

「元々土属性は防御専門だから」

「それなら使えるか」

「弓矢を防ごうと上まで壁を延ばすと魔法が切れた時に生き埋めになるけどね」

「使えねえな!? おい!!」

「最後、風属性、行きます! ハリケーン」

ヒュオオオォォォ

周囲の風が渦を巻いて強風が発生する。

「おお、これは期待できそう」

オオオォォォーーーー………

「…………え? これで終り?」

「そうだよ?」

「ただの強風じゃん!?」

「風属性ってこんなものだよ?」

「じゃあ、圧縮して鎌鼬にするとか…」

「風を圧縮? そんなことできる魔法使い、今居るのかな?」

「…………orz」

「どうしたの?」

「駄目だ。神は死んだ。欝だ死のう」

「団長? 勇者様はどうなされたのですか?」

「ただの発作よ。心配しなくて良いわ。時間がたてば勝手に直るから」

こうして、俺はこの日、兵器関係は精霊が操ってくれることと、この世界の魔法が全く使えないことを確認できたのだった。

「なぁ、ジャスティン」

「何?」

「魔法って戦闘でどんな感じに使ってるの?」

「う~ん? 例えば火の魔法なら油を流し込んだ落とし穴に発火させるとか、水ならダムを決壊させて押し流すための水を溜めるとか、雷なら地面に引いた金属板に電流を流すとか、土なら落とし穴を掘るとか、風なら土煙を起こして相手の視界を塞ぐとか…」

「早い話が、直接戦闘には参加しないのね」

「魔法ってそんな物だよ?」

「はぁ、魔法に幻想を抱いていた俺が馬鹿だった」

「幻想を抱いて溺死しろ」

「酷っ! しかも本当にジャスティンってこの世界の生まれ!?」

「当たり前じゃない?」

勇者(仮)の受難は続く。

「い~もん。メカと精霊だけがと~もだちさ~♪」

「悲しい子。皆に頼りにされているようで、その実、良いように利用されているだけなのに気付かないのね」

「うっさいよ!? しかも何、ジャスティン、キャラ変わりまくりだよね!?」

「だって楽しいじゃない?」

「orz」

「これはまた、見事なorzね。ほら、私の足をお舐め」

「帰って来てー! 召喚直後の騎士の名に相応しいジャスティンに戻ってー!」



[18458] 第3話 現代兵器と決戦前夜
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/22 08:40
さて、皆さんこんにちは。

昨日はジャスティンの豹変に振り回されっぱなしだった勇者(仮)こと北条透です。

今日は練成関係はジャスティンに任せて90式戦車の訓練を眺めています。

それにしても、鋼のボディに1500馬力のエンジンを得た精霊たちは無邪気に走り回っています。いや~癒される。

『ユウシャ、遊ボウ、遊ボウ』

いや、ちょっと待って。50tの車体で迫らないで! あーーー!!

「団長。今、馬車にひき潰されるカエルみたいな声が聞こえませんでしたか?」

「大丈夫よ。今はギャグパートだから大事には至らないわ」

「は?」

「何でも無い。それより、マガジン一つ使い切って的に15発以上命中させられなかった者は、戦車と綱引きさせるわよ!」

「ちょ、あの鉄の塊に勝てるわけ無いじゃないですか!」

「ええ。綱引きという名の引き回しだからね」

「うぉぉぉ、野郎ども、絶対外すな!」

ジャスティンの渇が利いたのか、透指揮下の騎士団と国防軍はめきめきと実力を上げて行った。だって、

「止まるんだ! キュウマル~」

『楽シイネ、ユウシャ、楽シイネ』

視界の隅に戦車に追っかけまわされている勇者が見えるから。

時速70キロで走る90式戦車から逃げられているあたり、やはりこの空間はギャグ仕様のようだ。

(((ああはなりたくない)))

騎士団の心は一つになった。

ちなみに、この日から勇者(仮)が精霊と遊んでいる日は命中率が普段の五割増しになったという。

俺が召喚されてから一週間が経った。

ジャスティンの第一重装騎士団と国防軍は少なくとも200m先の固定目標に当てることは出来るようになった。

硝煙で真っ黒になった顔と、そこだけ爛々と光る目に写る戦車に追っかけまわされる俺は無駄ではなかったと言うわけか。

「で、そんなある日に俺はあのウッゼ~貴族どもに呼び出されて王城を歩いているわけです」

「誰に言ってるの? トオル」

「気にするな。ただの現実逃避だ」

「まぁ、orzされるよりはマシだから良いけど」

会議室

見るからに我こそは貴族であるって感じのオッサンたちがふんぞり返って座っている。

大物ぶりたいのかもしれないが、せめてその狸染みた腹は引っ込めろ。

「さて勇者(仮)君。君はいつになったら魔王討伐に向かうのかね? 歴代の勇者は召喚の三日後には酒屋で仲間を見つけて旅立っていたぞ」

…酒屋で仲間見つけるとか、いつの時代のRPG?

つうか、チート能力で俺Tueeする人と現地勢力の協力が不可欠な俺を一緒にしないで頂きたい。

知ってるか? 歩兵部隊の随行の無い機甲部隊はあっと言う間に全滅するんだぜ?

「人は人。俺は俺だ」

「それでは困るのだよ~。世界は魔王の侵略に怯えながら暮らしている。一国も早く安心して暮らせる世を作るのが勇者の使命なのではないのかね?」

言ってることは間違ってないが、完全な他力本願ここに極まれり。

「一つ聞くが、何でどいつもこいつも、目が¥のマークになってんだ?」

「そりゃ、勇者が立つとお金になるからね~。討伐に使われる武器、食料、その他諸々。直接儲かるのは商人だけど、そこから税が入ると思えばね~」

そう冷笑しながら言い捨てるジャスティンに貴族達は口角泡を飛ばして反論する。汚ねーな、おい。

「第一重装騎士団長! 何を言っているのかね!?」

「我々は市民の安全を願って!」

「金の事しか考えていないように言われるのは心外だ!」

「じゃあ、資金提供してもらえます? 魔王討伐軍の編成は今現在、騎士団の予算から抽出して行っております。指揮下の軍は我が第一重装騎士団と国防軍一個中隊のみ。今代の勇者は配下の兵が多ければ多いほど強力になります」

「むぐっ!? そ、それは」

「しかしだね、それは本来、騎士団が負担すべき…」

「ええ、ですから負担しています。しかし、騎士団の予算内からの抽出では現状以上の兵力動員は出来ません。勇者が発った後に国家を護る騎士団の予算がなくなってしまいます」

「それを何とかするのが騎士の役目だろう!」

「いいえ、違います。そこで何とか予算を捻出するのはアナタ方、貴族の役目です」

「むぐぐ…はっ! そうだこうしようではないか。今現在、アルデフォン地方を荒らしている魔王軍を討伐してきたまえ。そうすれば、勇者の実力を認め、我々も資金提供をしようではないか」

「確か、アルデフォン地方はアナタ方の直轄地で騎士団派遣の要請が何度も出されているのにも関わらず、あ・な・た・が・た・が! 財政を理由に却下されていたと記憶されていますが?」

「うぐっ!?」

「そもそも領地の治安維持は領主の責任でしょう。自前の戦力で治安維持ができないのなら早急に援軍を依頼するのが筋のはず」

「地方の財政は厳しいのだ!」

「厳しいのは貴方達の財布の紐でしょう! 中身はガッツリ入っているんだから偶には緩めなさい!」

「何を!?」

「何よ!?」

いかん。脱線してきた。話が進まないな。俺は生憎と政治については疎い。ここは早々に片付けるか。

「まぁ、そう言うな、騎士団長。さて、貴族の皆さん。今回の遠征ですか、我が部隊はお世辞にも練成を終了しているとは言えません。しかし、アナタ方が騎士団と国防軍の遠征費用を負担してくれるなら、我が部隊は、あ・な・た・が・た・の! 直轄地へ悪魔討伐の遠征に赴きましょう」

「うむむ、仕方ないかの」

「そうじゃな」

「早々に行きたまえ」

会議室を出て、廊下を歩く。

通り過ぎる人は全てビシッと直立不動で道を譲る。

これは、俺じゃない。ジャスティンへの敬意だ。

「良かったの? この条件で。本来は領内の治安維持は領主の部隊が行うものなんだし、騎士団や国防軍が遠征するときに領主が資金を負担するのは普通なんだよ? 領内に資金がないって言うなら考えるけど、あいつら普通にケチってるだけだし」

「問題ない。俺が従来型の勇者とは戦法が違うと言ってもそろそろ動かなくちゃならない時期に来ているのは確かなんだ」

なまじ勇者への期待が大きい分、中々動かない俺への風当たりは強くなりつつある。正直、一ヶ月は練成したかったがな。だが、仕方ない。過去の勇者どもは召喚された当日に既に戦果を挙げていた奴だって居たのだ。

演習場に部隊を集めて訓示する。

部隊は大隊規模の第一重装騎士団と一個中隊の国防軍。

騎士団が240名に国防軍が120名。合計で360名。

現代装備の練度こそ不安が残るが、元々、精鋭部隊である。

「さて、俺たちの初出撃が決まった。アルデフォン地方の魔物討伐が今回の任務である。諸君はまだ、銃に触れてから日が浅い。そこで、今回の任務では銃はあくまで予備として扱い、従来どおりの少数には通常攻撃、大群にはトラップによる戦法を用いる。
現地到着後、魔導部隊は即座に展開、トラップの作成に入れ。騎士団と国防軍は周囲を警戒。トラップ陣地の設置が終了し次第、魔物との交戦を開始する。何か質問は?」

「銃の携行はどうするのですか?」

「基本的にしてもらう。AK-47は壊れにくい銃だが、まともなメンテナンスを行えないため2丁配布する。前に教えたとおりコッキングしても使えない場合はその銃は使用を諦め予備を使用すること」

「移動手段は?」

「こちらで車両を用意する」

「指揮は誰が執るのですか?」

「最終決定は俺がするが、基本的にはジャスティン団長と、ジョン・スミス国防軍中隊長にとってもらう」

『僕タチハ、僕タチハ?』

「道中森が多く道は高機動車が通るので精一杯でしかない。戦車は一旦、返還し、現地でまた来てもらう。また、戦場も森林部が大半となる。平野部も狭く機動戦闘は難しい。固定砲台として運用する」

『分カッタ。マタネ、マタネ』

「さて、森林部というのは現代兵器に限らず、攻める側にとって鬼門である。今回の作戦は可及的速やかに敵を平野部に誘き出し、トラップと銃砲撃にて殲滅することである他に質問は?…よし、では出動だ!」

アルデフォン地方

俺が召喚された首都マケドニアから北へ200km程行った所に有る。

普通なら5日は掛かる道中だが、我が部隊の展開能力を侮る無かれ。

夜間の移動を制限してでも2日で着いてしまった。

いや、これ以上は無理よ? 生い茂った森の中の林道みたいな道を走ってるんだから。

「良く来てくださいました。勇者殿!アルデフォン地方駐留軍一同、心より到着を歓迎いたします!」

うん。トップがあのウッゼー貴族でも現場に責任は無いよね。

この地の守備隊が涙ながらに喜んでいる。

つうか、ここ街じゃねぇし。明らかに街の外です。

街の外周には堀が掘られて壁が立てられちょっとした要塞になっている。

「いえ、この位しないと防ぎきれないんです」

そうか、大変だったんだな。

あの貴族が俺を急かしたのはテメエの懐可愛さだが、言っている事は間違っていなかったということか。

この国は限界に達しつつある。下手に長引かせると内部から瓦解する。

「守備隊長。この地の地図が欲しい」

「はっ、こちらに」

天幕の中に入ると守備隊の幹部達が一斉にビシッと起立する。

どの顔も連戦で疲れきっている。人と魔物では人は常に苦戦する側だ。

そこで出された地図。何じゃこりゃ。白紙に街と道と川が書かれてるだけじゃん。

「我が国マケドニア全域で言えることですが、森が多く、測量が進まないです。我が国の地図では主要な道路と河川しか書かれていません」

「……軍議一時中断」

俺は外に出て比較的開いた場所で自衛隊年鑑を開く。

「召喚、OH-1」

『ユウシャ、呼ンダ? 呼ンダ?』

「うん。少しこの辺の航空写真撮って来て」

『任セテ、任セテ』

ヒュンヒュンヒュンヒュンとプロペラを回転させ離陸していくOH-1。

それにしても移動にヘリを使わなくてよかった。

全員ヘリで運んでいたら着陸待ちでガス欠が出てたわ。それくらい平地が小さい。

「勇者殿、今のは一体?」

「情報を制するものは世界を制する。戦術の基礎だ。その情報を集めに行ってもらった」

「情報?」

「取り敢えずは地図な」

暫くするとOH-1が戻ってきた。

『ユウシャ、戻ッタ、戻ッタ』

「お帰り。じゃあ、早速」

機体にプリンターを繋いで周囲の航空写真をプリントアウトする。

それを大きな台に乗せて巨大な周辺図が完成した。

『ユウシャ、森ノ中ニ魔物沢山居タ。皆隠レテタ』

そう言って機体のディスプレイに表示されたのは森の中。

しかし、赤外線映像で魔物の周囲だけ赤くなっている。

「あ、そっか。可視光線の他に赤外線の観測装置も積んでたな。つうか、昼間でも使えんだ。そっちの情報も出せるか?」

『出ス、出ス』

周辺図に赤外線映像も加えて、敵情は手に取るように分かる。

「凄い。魔物の位置が予め分かっているなら、平地に追い出すのも簡単になる!」

守備隊長が言うとおりなのだ。

今まで人が魔物に対して劣勢を強いられてきた一番大きな理由。

それはマケドニアの国土の実に七割が森林部だったことに由来する。

視界が大きく遮られる森林部では視覚に頼って行動する人間は簡単に不意を突かれてしまう。

「よし、明日の日の出を待って展開を開始する。この平野、ポイントAに魔物を追い込む様に半円状に展開。包囲網は二重とする。上空にはOH-1を飛ばして戦域管制を行う。各分隊長には無線を支給。部隊の足並みは揃えるので自分より前に動くものが居たら敵だ。撃て」

明日の朝一でOH-1を飛ばし、魔物の場所を再確認。

それを元に部隊を展開させる。

アルデフォン駐留軍は疲労が半端ではなかったので全員休ませた。

何と、今まで街の外の陣地にテントを張って野戦をしていたらしい。

一応、水系統の魔法使いもいるから衛生面なんかは問題なかったらしいけど、この日は全員家に帰らせた。

森の中に複数のセンサーを設置したし、新しく召喚した90式戦車や89式戦闘装甲車がFCSを常時起動させて睨んでくれる。

地図の上に戦車型の駒を置いて防衛体制を確認していた俺のところにジャスティンが暗い顔をして姿を見せた。

「ねぇ、トオル。アルデフォンなんだけど…」

「何かあったのか?」

「うん。ここ最近の魔物の異常発生で流通が途切れているんだ。食料を始めとした生活必需品も満足に出回ってない。それで…」

「騎士団の物資を開放したい…か?」

「うん」

「良いんじゃね? 何か問題があるのか?」

「今現在、騎士団の所有する食料は二週間分。街に充分な物資を行き渡らせるには八割以上を放出しないと…」

「それは流石に問題だよな~」

考えろ、俺の頭脳。俺に出来ることは何だ? 基本的に書の力を使うこと。

……あ。俺は自衛隊年鑑をめくり出す。これに載っているのは戦闘装備だけじゃない。

あった野外炊具。でも食材は流石に無さそう。

ここは素直に戦闘糧食を配るか。

あ、でも戦闘糧食って湯銭が必要じゃん。いや、必要なのは米飯だけか。

でも、この世界じゃ米を食うという習慣が無いっぽいし、洋食だと極端にメニュー減るよな。

でも、まぁ、洋食でも余りの不味さに落ち担当の米軍MRE食わせるよかマシか。

えーと缶詰のⅠ型なら乾パン。オレンジ味の水飴がついていて、ソーセージの缶詰とセットか。…缶切がいるな。

Ⅱ型ならクラッカーか。クラッカーにハムステーキ、ポテトサラダ、卵スープか。こっちはレトルトだから特別な道具は必要ないな。良し、召喚!

ドタドタドタドタ。

目を丸くしているジャスティンを他所に俺はその一つを手にとって食べ方を確認する。

幸いどちらも特に難しくは無さそうだ。パックの破り方だけ教えて高機動車にたらふく積んで街に持って行ってもらった。

これで一安心と地図上での架空演習に戻った俺だが、アルデフォンの住人どころか騎士団や国防軍も大いに気に入ってしまい、しばらく炊事班の仕事が無くなったのは余談である。



[18458] 第4話 勇者(仮)と初の実戦
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/22 08:48
皆さんこんにちは。異世界に召喚されて勇者(仮)やっている北条透です。

遂に我が無双の現代兵器が活躍することが来ました。

現代兵器の火力、とくと思い知れ、なのです。

「今回の作戦の目的は敵群の確実な殲滅である。進軍速度より索敵を重視せよ」

特化部隊を呼び出して砲撃をガンガン加えても良いんだけど、今回の作戦の目的は敵軍の無力化ではなく、敵群の殲滅である。

軍事行動というよりは害獣駆除に近い。

そもそもマケドニアの森はジャングルと言うほどではないが、それでも木が覆い茂っている。

ここに砲爆撃を加えても確実な殲滅は期待出来ない。

ナパームなんかを使えば出来そうだが、火の始末が面倒すぎる。

街が近いから火事になられても困るし、そもそも余計な熱源を与えると赤外線映像が使えなくなってしまう。

結局、森林の敵を確実に排除するには歩兵部隊の投入をするしかないのだ。

ベトナムの米軍が実証している。

太平洋戦争の総使用量を超える爆弾を叩き込んでもベトコンを殲滅出来なかったのだ。

現代兵器も大自然の前には無力…とまでは行かないが、大きく威力を割かれてしまう。

それに敵殲滅より森が焼け野原になる方が早そう。

作戦通りに上空にOH-1を飛ばして、その情報を82式指揮通信車で受けながら指揮をしています。

今回、第一重装騎士団と国防軍の分隊長以上の指揮官には無線を配備しているんです。

尤も、あちらからの通信は原則緊急時のみですが。

「現時刻をもって状況を開始する。各部隊は所定の方針に従って行動を開始せよ。繰り返す…」

魔物の集団を広場に追い立てるように半円状に展開した部隊が一斉に動き出す。

これからはOH-1からの情報を元に各部隊の足並みを整えさせないといけない。

しばらくすると半円を描いていた部隊の形が段々と歪になってくる。

「第一小隊、遅れている。前方600m以内に熱源反応無し。行軍速度を上げろ。第六小隊、突出しすぎだ。その場で再度指示が出るまで停止。第三小隊、前方に熱源。確認せよ」

『こちら第三小隊。魔物と接敵、交戦します』

 無線の向こうではタタタタという銃声が聞こえてくる。

「了解。深追いはするな。目的は森林部での殲滅ではない」

『了解』

OH-1から送られてくる赤外線映像を見ながら指揮をする。

時々偶発戦闘を行いながらもじわじわと魔物包囲網が狭まっていく。

従来どおりに部隊が点になって移動していたならば奇襲も出来ただろうが、今、俺の指揮下の部隊は線で動いている。奇襲などさせんよ。

結果、じりじりと追い込まれている。

そうだ、魔物ども、そのまま進め。

その先には魔法部隊が作成した各種トラップと十字砲火が待ち受けている。

「全部隊、包囲網が狭まった。左右から友軍が合流するが、注意せよ」

それにしても魔物も一方的に逃げてばかりだ。

完全包囲網で奇襲が出来ないと理解しているのか? それとも初めてみる銃に怯えているのか?

見た目は魔法の方がよっぽど派手なんだが。

騎士団と国防軍による包囲網は直径400mにまで狭まった。

それにしても、上空にいざと言う場合に備えてAH-64Dを待機させておいたが、結局出番なかったな。

味方の包囲網を一点突破で抜こうとしたら鼻先に攻撃して足を止めさせる心算だったが。

「魔導師部隊、戦闘準備。司令部より全部隊へ。前方に向けて一斉掃射を開始せよ。身体は物陰に隠せ。両端の部隊は前方からの流れ弾に注意」

ダダダダダダダダ

来た! 突然の一斉射撃に驚いた魔物の群が森から飛び出してきた。

「魔導師部隊、まだ待機だ。後続が森から出るまで待て」

『勇者殿! まだですか!?』

「まだだ。待て」

魔物の先頭と部隊との距離、200m。

だが、まだだ。まだ森の中に居る。

『勇者殿!』

「待て!」

150m、100m、50m…。

「よし、やれ!」

『了解!トラップ発動!』

その瞬間、地面が沈んだ。

土系統の魔法使いによる地下に空間を作り、それを複数の柱で支え、柱を任意で取り払うことによる巨大な落とし穴。

対魔物集団戦闘の基礎らしい。

土を地面より上に出して操るのは有効範囲が極端に狭い土系統だが、地中を操る分には数百メートル先でも操れるらしい。

「待機部隊隠匿解除! 十字砲火撃ち方始め! 包囲部隊前進開始! 森に残った奴を焙り出せ!」

タタタタタタ ダダダダダダダダ

森から残りの魔物を殲滅するための銃撃が開始され、トラップの前面に設置した軽機関銃が偽装を払って銃撃を開始する。

東京ドームと同じくらいの面積の落とし穴にはまった魔物に容赦無く浴びせられる銃撃と魔法。

そして、止めとばかりに軽油を満載した樽を転がり落とし、曳光弾と炎系統の魔法でで狙い撃つ。

そして、上空に待機させていたAH-64Dも攻撃に参加。

30ミリチェーンガンと70mmロケット弾が身動きの取れない魔物に降り注ぐ。

一発一発は手榴弾よりは威力が有る程度のロケットだが、76発を連続発射すれば結構な面制圧が可能である。

ボアアァァァ

穴の中から燃え上がる炎。

まだ死んでいなかった魔物が上げる断末魔と生き物の焼ける匂い。

血抜きしていない肉が焼ける匂いは饒舌しがたい。これ夢に出そう。

結局機甲戦力は使わなかった。

日本の車両は油圧で姿勢制御できるものが多いが、今回は極端な撃ち下ろしになったので射角がとれなかった。

落ちていないのを狙おうにも90式戦車の120mm滑腔砲は生き物相手に使用するには威力過多だし、89式装甲戦闘車の35mm機関砲にしても多少の木々は貫通して森の中の味方に被害を与えかねない。

やっぱ、森林部だと現代兵器使い勝手が悪いわ。これからもどうやって平野部の野戦に持ち込むかが鍵になりそうだ。

残敵掃討が終った戦場跡を見ながら俺はこれからの兵器運用を考えていた。

周囲では守備隊が魔物の死体に軽油を掛けて燃やしている。

一体二体ならまだしも、これだけの数を放っておくと伝染病を招きかねない。

アルデフォンに流通が戻り、市民の生活が回復するまでにどれだけの時間が掛かるだろうか。

さっさと魔王倒して帰る心算だったが、多少なりとも関わってしまうと情が湧く。

実は街で、既に伝染病らしい物が流行っているのだ。

だが、俺には症状が分からないし、医療キッドの中に複数の抗生物質も入っていたけど、怪我した時に飲む物はともかく、病気に対するのはどれか何か全く分からない。

衛生兵が欲しい。自衛隊年鑑に写っている災害救助中の医官、召喚出来ないかな?……無理だった。

取り敢えず、病人は隔離して医療キットの中からピンポイントで大量のアルコールを召喚。

食器なんかは沸騰したお湯で消毒。シーツなんかは洗って天日干し。病人の周囲は特にアルコール殺菌を徹底させた。

戦闘糧食はかなり多めに召喚。

アルデフォンの住人が三ヶ月過ごせるだけの量を召喚した。

三ヶ月の間に物流が回復するように貴族殿には頑張っていただくとするか。

さすがにそこまでは面倒見切れん。

「トオル、大丈夫? 顔色が悪いけど」

俺に割り振られた天幕内でこれからの戦術戦略を考えているとジャスティンが声を掛けてきた。

そんなに顔色悪いか。さっきの光景が目から離れず、魔物の断末魔が耳から離れず、生き物の焼ける匂いが鼻から離れない。

「あまり、大丈夫じゃ無いけど、問題ないよ。しばらくは菜食主義者にならせてもらうけど」

「あまり強がらないの。手、震えてるわよ?」

言われて気が付いた。

確かに俺の手は小刻みに振動している。

さっきから作戦書の字がミミズがのたくったような字になっていると思ったらこのせいか。

「はは、生き物の死ぬ場面に出くわすのは、いや、生き物を殺したのは初めてだったから。元の世界じゃ生きるためでも食べるため以外で動物を殺す必要が無かった。あの光景が脳裏から離れないや」

元の世界のゲームでは勇者のレベルアップの為に存在しているような魔物だったが、ゲーム内では断末魔など上げない。

火にまかれてのた打ち回ったりしない。

何より、無残な死体を残さない。

火葬した後に土葬したが、ずっと吐き気に堪えていた。

「そっか」

 あれ? 俺は今、柔らかくて温かい物に包まれてますよ?

「あの? ジャスティン?」

「大丈夫。今は、今だけは弱くても良いんだよ?」

俺の中で何かをせき止めていたせきが切れた。

この世界に来てから一週間と少し。

誰にも弱みを見せることは出来なかった。

だって、(仮)とはいえ、俺は勇者だったから。

何をするにもその肩書きは付いて来た。

元の世界じゃ軟弱大学生に過ぎなかったのに。

男の子としての最後の意地で声は上げなかった。

でも、押し殺した嗚咽が漏れてしまうのは止められなかった。

ジャスティンはただ、黙って頭を撫でてくれた。

「泣いて良いのですよ? だから人は泣けるのです」

「…ごめん、何か色々と台無しなんだけど? あと、本当にジャスティンってこの世界の生まれ?」

「えっ、何で!? 私、今、凄く良いこと言ったよね!? あと、私は間違いなくこの世界の生まれだよ!?」

その台詞を言ったのが、貴女が最初だったならね!

あ~、何かこのまま甘えるって雰囲気でもないし、久しぶりのギャグパートでテンションも回復した。

復活しますか。アルデフォンの再生はウッゼ~貴族どもにやらせるとして、こっちも戦力増強に精を出しましょう。

天幕から出た俺のところにアルデフォン守備隊隊長がやって来ていた。

「勇者殿、今回は真に御助力に感謝致します。アルデフォンの護りを担う我らが不甲斐ないばかりに勇者殿には大変なご迷惑をお掛けいたしました。今後、アルデフォンを絶対に護るべく精進します!」

 …ええ人や~。これでトップがあのウッゼ~貴族なんだから可哀相で仕方ないぞ。

「うんうん。頑張ってくれ。出来る限りの食料と医薬品を置いていくから」

「申し訳ありません、勇者殿。魔物の討伐をして頂いたばかりか、物資まで…」

「良いの良いの。この国に必死になって戦っている軍人が居るって分かっただけでもここまで来た甲斐あったから」

主に俺のモチベーション的に。

こうして、俺の初陣が終った。

離れていく車両隊に守備隊と市民は見えなくなるまで手を振っていた。

余談だが、今までのただ戦うだけだった勇者と違い、土木作業や食糧支援を行う我が部隊は着々と市民の支持を集めていくのだった。

「ふんっ。歴代勇者どもよ、ス○クじゃあるまいし、戦術が戦略を上回って堪るか!」

「トオル、誰に言っているのですか?」

「いや、ちょっと現実逃避しただけ」

「orzよりは見てくれが良いですが、今、トオル指揮下の国防軍に志願者が続出しているのです。さっさと書類を片してください」

「だから、その書類から現実逃避してたの!」

 何でテレビ第9話で第七使徒の迎撃に失敗したのミ○トさんみたいな量の書類を片さなきゃならんのだ!?

「…ソフィー。今日の夕食だけど、肉汁たっぷりのレアステーキでお願いするわね。ええ、勿論トオルの分も」

何か、俺の渡した無線機で何か言い出したジャスティン。

いや、ちょっと待って。俺、まだ肉は!特にレアはらめ~!

「お仕事してくださいますか?」

「……やらせていただきます」

泣く泣く書類の山に向き合った俺。

指揮下の部隊が増えるのは良いことだけど、志願者が増える→練成に時間が掛かる→国境付近に魔物出現→討伐→新しい志願者が来る。この繰り返し。

いや、確実に指揮下の部隊は増えているんですよ?

でも、肝心の魔王討伐は国境付近で小競り合いを繰り返すばかり。

俺、何時になったら帰れるの?



[18458] 第5話 とある貴族達の陰謀と勇者の旅立ち
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/22 08:52
さて、皆の衆。こんにちはじゃ。

我輩はマケドニアでも有数の大貴族である。

名前はまだない。勇者からはウッゼ~貴族と呼ばれておる。

特に名前を考える必要も無いようなのでこのまま行くそうじゃ。

で、ワシ達、ウッゼ~貴族は現在、とある貴族が持つ王都の屋敷に集っておる。

これからの事を考えなければならんのでの。

「正直、あの地味勇者がここまでやるとは予想外じゃった」

「うむ。これまで国境の町々に魔物の討伐に赴いては成功させておる」

「お陰で国内の治安は回復しつつある。国境の町々にも流通が戻った。それは良い。…だが!」

「そうじゃ! 問題は、奴らが大半の装備を自前で揃えてしまう事じゃ!」

「買うものと言えば新鮮な野菜や果物といった軍事食に向かぬ物ばかり! 肝心の剣にしたところで異常なまでに売れ足が悪い!」

「折角、行軍に備えて、軍馬を大量に揃えたのに大赤字じゃ!」

「ワシも保存食を大量に揃えたのにトンと売れん!」

「王都に集めた鍛冶屋に全く仕事が来ない!」

「これは忌々しき事態ぞ!」

「今代の勇者に投資しても見返りが全く無い!」

透やジャスティンにしてみれば配下の部隊が続々と増えているのに予算が全く増えない現状の方が問題なのだが、黒字か赤字かでしか判断出来ないウッゼ~貴族達には分からない。

透たちが買い物をしないのは、貴族達が普通に投資をケチっているため、透たちが深刻な予算不足で本来支給すべき剣や槍をケチり、銃剣突撃に適した38式歩兵銃と銃剣を支給して槍の代わりにしろ、何て無茶をしているからである。

しかし、自動小銃が普通に支給されるので、敢えて38式歩兵銃で銃剣突撃したがる者は居なく、接近戦の為に持つ程度である。

しかも、接近戦用のサブウェポンがメインウェポンのAK-47より大きくなってしまうので、大半の者は剣を自前で調達するのだが、あくまで予備なので殆ど磨耗しないのだ。

食事にしたところで遠征中は戦闘糧食を食べているので下手な保存食を用意する必要が無いのだ。

ただ、糧食には野菜や果物の類が足りないので、これを調達する程度である。

ジャスティンや騎士団、国防軍の幹部あたりはお陰で王都の商人達が大損していることは知っているが、無い袖は振れぬ状態なので如何ともし難いのだ。

予算不足解消のために戦闘糧食を売ろうなんて話も出てきているが、それには幹部陣は慎重である。

勝手に食料の流通を作ってしまったら、それが消えた時の影響が読めないからだ。

結局、貴族側・商人は早く魔王を倒せとか物買えと騎士を突っつき、騎士は騎士で練成が足りない、金が無いと突っぱねるという循環が出来ている。

「もう我慢できぬ! 早々に勇者には魔王討伐に赴いてもらおう!」

「そうじゃ! 現代兵器だか、何だか知らないが、歴代勇者の中には召喚されて三週間で魔王の討伐を成功させた者もおるのじゃ!」

政治家が軍事に口を出すと碌な事にならない。

軍人が政治に口を出すと碌な事にならない。

何時の時代でも変わらぬ真理である。

「はぁ~!?『残り一週間で準備を済ませて魔王討伐に出ろ』だ~!?」

「ええ。貴族が騎士団の反対を押し切って国王に認めさせたそうよ」

「ウッゼ~! マジウゼッ!」

「流石に国王からの命令には逆らえないわ」

「あれか? 今の国王は暴君か!? それとも、貴族の言うことを鵜呑みにする馬鹿殿か!? 人が必死に滑走路造ったり、OH飛ばして魔王城の所在探している時に何を無茶言ってくれるんだ!?」

「不思議ね。何で歴代勇者は簡単に魔王城を見つけることが出来たのかしら?」

それはねっ、マップどおりに進めば必ず魔王城に辿り着けるって言う修正力のお陰なんだ。詳細な場所も分からないのに、伝説だけ頼りに魔王の討伐に赴く勇者って凄いよね。

「あら? トオル、何か言った?」

「オノレ、貴族ども。そんなに金が欲しいなら、空から世界一高価な鉄屑を降らしてくれるわ! 単位重量当りの価格は金以上のYF-23舐めんな!野晒しにするくらいなら日本に寄越せってんだ!」

ユウシャは、サクランしている。

「う~ん、確か右斜め45°から、えい!」

ガツン!

「はぐぅ!?」

ユウシャは、キゼツした。

「あら、失敗したかしら? トオル~。生きてる~?」

返事が無い、ただの屍のようだ。

「まぁ、この空間はギャグ仕様だし直に復活するわよね」

そう言って峰打ちに使った剣を鞘に戻すジャスティン。

…剣って諸刃の筈というツッコミはいけない。何故ならこの空間はギャグ仕様。

その証拠に勇者は血を流さずにタンコブを拵えただけである。

しかし、敢えて突っ込もう。

ジャスティンさん。右斜め45°は普通、チョップでする物です。

所変わって、練兵場。ここに勇者指揮下の騎士団と国防軍が集められた。

「諸君! 一週間後、我々は戦争に赴く! 全てを得るか、地獄に落ちるかの瀬戸際だ! どうだ、楽しいか!?」

「マム、イエス、マム!」

「野郎ども、私達の特技は何だ!?」

「殺せ! 殺せ! 殺せ!」

「この討伐の目的は何だ!?」

「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」

「私達はマケドニアを愛しているか!? 騎士団を愛しているか!?」

「ガンホー! ガンホー!! ガンホー!!!」

「良し! 行くぞっ!!」

「ウオオオォォォーーー!!!」

「もう突っ込まんぞ…」

ハイテンションの騎士団とこめかみを押さえる透。

その脳裏には某軍曹と某都立高校ラグビー部が浮んでいた。

部隊は遠征準備に入り、俺とジャスティンは行動方針の決定に入る。

「で、トオル。これからどうするの?」

さっきまでのハイテンションは何処に行ったというくらい冷静に作戦会議をしているジャスティン。

「北の谷だったか? そこに向かうしかないだろ? 幸い、北にはでっかい湖がある。空母でも召喚すれば水上要塞として使うことが出来る。谷の手前の荒野までなら詳細な地図もある。しばらくは荒野手前の湖に拠点を構えよう。荒野手前なら森も魔物が潜めるほど深くは無く、高速で突破できるほど浅くも無い。天然の要塞になれる」

「空母?」

「馬鹿でっかい船さ。それこそ下手な街より大きな。このサイズの湖に出したら全く身動き出来なくなるな。この周囲を切り開いて要塞化するか。それにしても首都郊外に造っている滑走路が全く無駄になったな。いや、それとも部隊を一部残して補給の確保にあてるか?駐機は心許ないが、離着陸は出来るレベルだし…」

「この湖、結構大きいよ? それで身動きできなくなるって…」

「まぁ、全長333m、全幅77m、喫水12m、満載排水量101,264トンの巨体だからな。呼び出すのはニミッツ級三番艦のカールビンソンでいいか。普通に運用しようとすれば五千人以上は必要な艦だし」

「ご、五千って…」

「一隻で小国に匹敵する戦力となる。まぁ、正直な所、頑張って滑走路造るより、これ一隻呼び出す方が楽ではあるな。滑走路も造るけど」

 尤も、現代の滑走路みたく2kmクラスなんて造らないけどね。

どう頑張っても1kmですよ。森林を切り開くのは大変なのです。

それだけあれば大抵の戦術輸送機と一部戦闘機が使えるので十分です。

それから一週間、色々と準備を始めたのですよ。

全軍を連れて行くわけにも行かないので基本的には志願制。

そしたら志願したのはおおよそ七割。

残り三割は家族を置いていけなかったり、国防軍で割と重要な地位に居たり、単純に戦闘糧食を食いたくて志願しただけだったらしい。

こいつらで首都郊外の滑走路を維持させ、補給路を確保する。

これから拠点にする予定の湖にSH-60Kを飛ばして湖の状況を調べた。

合計三つの湖が連なっており、上流から面積1.86k㎡、周囲長6.65km、最大水深58m、平均水深29.0m、推定貯水量0.054k㎥。流入量と流出量が計算に合わないので、恐らく湧水があると推測される。

次が、面積0.14 k㎡、周囲長2.20km、最大水深12.0m、平均水深5.7m。推定貯水量0.0008 k㎥。

三つ目が面積1.4k㎡、周囲長6.5km、最大水深29.5m、平均水深17.9m、推定貯水量0.025k㎥。

うん。上流の湖に二隻と下流の湖に二隻。

合計で大型艦を四隻は浮かべることが出来るな。

水系統の魔法使いを使えば津波もさして問題にならずに済むだろうし。

行軍は車両隊を中心で行うが、騎馬隊も連れて行く。

森の中では車両よりも動けて、歩兵より機動力がある。

でも、生き物で行軍するとなると速度は落ちるな。

これだけの大軍が移動するとなると片道二週間は掛かるか?

今まで五人前後のパーティーで魔王討伐に赴いた勇者と違って随分と大所帯になったものだ。

出発の日。魔王討伐軍は国儀を行う広場へと集まっていた。

「太古より続く魔王の侵攻により、我がマケドニアは多大な損害を被ってきた。圧倒的な魔物を相手に我が国の騎士団や軍は幾度と壊滅様態に陥り、その度に復活を遂げてきた。我らを突き動かすものは何か。慢心創痍の我等が何故再び立つのか。
 それは全身全霊を捧げ絶望に立ち向かう事こそが、生ある者に課せられた責務であり、マケドニアの防衛に殉じた輩への礼儀であると心得ているからに他ならない。
 森に眠る者達の声を聞け。荒野に果てた者達の声を聞け。谷に散った者達の声を聞け。彼らの悲願に報いる刻が来た。そして今、勇者達が旅立つ。鬼籍に入った輩と、我等の悲願を一身に背負い、孤立無援の敵地に赴こうとしているのだ。
 歴史が彼らを数ある勇者パーティーの一つと忘れ去ったとしても、我等は刻みつけよう。歴史に名を残すことすら許されぬ彼等の高潔を我等の魂に刻みつけるのだ。
 旅立つ勇者たちよ。諸君を勇者に祭り上げねばならない我等を許すな。異界より召喚されし若者よ。貴君を召喚してしまった我等の無能を許すな。願わくは、この旅立ちが、最後の旅立ちとならん事を」

愛と勇気の御伽話な基地指令の名演説に良く似た演説を行う神官長。

透の召喚を執り行った最高責任者でもある。

「諸君! これより我々は魔王討伐に赴く! 我々は必ずここへ帰ると手を振る人に笑顔で応えろ! 誰かがこれをやらねばならぬ! 期待の人が俺たちならば! ここに帰ると想い続けろ! 信じる想いは力となる! 諸君! 自分を信じろ! 俺が信じる諸君ではない、諸君が信じる俺でもない、諸君が信じる諸君を信じろ!」

どっかの歌の歌詞と某アニキの名言から引用したセリフをさけぶ透。

「魔王討伐軍一同へ! 捧げ剣!」

マケドニア騎士団と同国防軍から選出された魔王討伐軍三千名。

史上最大規模の討伐軍がこの日、マケドニアを旅立った。



[18458] 閑話  とある執事の一日
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/22 08:56
 さて、皆さまこんにちは。

もう忘れた方が大半だと思いますが、私はセバスチャン。

クライトン家で執事をしています。そんな私のとある一日の物語です。

私の朝は誰よりも早くございます。

夜明けと共に起き、乾布摩擦で心身を研ぎ澄ます。私の日課でございます。

次に、メイド長であるキャサリンの怒声が響きます。

「くぉら~! エイミー! ソフィー! テメエら、仕事を交換するなって、何回言ったら判るんだ!? 朝っぱらから余計な仕事増やしやがってー!」

表向きは優雅で非の打ち所の無いキャサリンですが、身内しか居ない場合はいつもこんなものです。

ジャスティンお嬢さまの使用人には個性的な面子が揃っているのです。

「でも、料理って楽しい。複数の食材を化合させてどんな味になるのか。でも、最近、試食係のマウスが減っちゃった。また捕まえてこないと」

何をするにも無表情、無感動のエイミーが唯一、興味を持ったのが料理なのです。

しかし、その才能は逆の方向に天元突破でございます。

その破壊力はジャスティンお嬢さまがしつこく交際を迫る貴族への最終兵器に使うほどでございます。

見た目は美味しそうに見えるのに、どうやったらあの味が出せるのか。

世界中の料理家を逆の意味で追い込んでしまいます。

「テメエのは料理じゃなくて実験ってんだ! このアホンダラが! ソフィー、テメエもテメエだ。掃除するのかガラクタ増やすのかどっちかにしろ!」

「不思議ですわ~。何故、私が掃除をするとガラクタが増えてしまうのでしょうか?」

「箒をかけるのに、火の魔法を応用したマジカルジェットローラーとかほざいて変なスケートを履くからだ! 器物を片っ端から吹き飛ばしやがって! 妙なモンこれ以上増やすんじゃねえ!」

基本的に器用なのですが、それを間違った方に発揮するのが得意なソフィー。

私は彼女が真面目に掃除をしたところを見たことがございません。

何時も、面白アイディアを用いては屋敷内の器物をガラクタに変換します。

結果、キャサリンから掃除禁止令が出ているのですが、守っていませんね。

ははは。今日も皆、元気で何よりです。

さて、屋敷に関してはキャサリンが居れば問題ありません。

私はお嬢さまから仰せつかった任務をこなすとしましょうか。

…私は、とある屋敷に潜入しています。そして、丁度今、私から1mと離れていないところを見張りが通り過ぎました。

しかし、私には気付きません。何せ私にはトオル殿から頂いた万能スニーキングツールであるダンボールがあるのですから! 某蛇の戦士もこれを愛用していたとか。

…いえいえ、言っておきますが、今回はギャグパートではありません。

本気でダンボールを被るだけで気付かれないのですよ。

それは何故かって?簡単です。屋敷の廊下にダンボールが溢れかえっているのです。

しかし、今はトオル殿の世界で言うところの中世ヨーロッパ。当然ながらダンボール何てありません。しかし、ここには現実に存在しています。

では、このダンボールは何か? 答えはトオル殿が魔物に悩む国境付近の町々に支給した戦闘糧食なのです。

最初にアルデフォンで配布してからあっと言う間に王国全土に広まった戦闘糧食。

しかし、その流通量は雀の涙程度でしかありません。

トオル殿がこれを流通させることに危機感を抱いているからなのです。

何せ、無限に呼び出せるので、大量に流通させた場合、従来の食料流通がどうなってしまうのか?

そして、トオル殿が元の世界に帰った場合、即座に元の流通ルートが復活できるのか判断出来ないとのことです。

売ればとんでもない金になる。しかし、トオル殿は中々流通させない。

ならば、どうするか? 貴族どもはトオル殿を国境付近の町々に派遣させ、そこで支給した戦闘糧食を税として絞り上げたのです。

しかし、それでも、その町々に的確なフォローがあればお嬢さまもこんな強硬手段を取りはしなかったでしょう。

しかし、貴族どもは奪うだけ奪い、代替の食料を送ることすらしなかったのです。これには普段飄々としているお嬢さまもキレました。

で、私は今現在、その証拠集めと言う訳ですね。

デジタルカメラという掌サイズの機械で次々と撮影。

いや~、便利な世の中になりましたね。

次は、ウッゼ~貴族の部屋に侵入します。そして、盗聴器という物を設置します。

こんなに小さいのに会話を盗み聞きしてくれるとか。元々は密林などで敵軍の展開状況を調べるために設置するのだそうです。

「発セバスチャン、宛キャサリン。盗聴器の感度はどうですか?送れ」

『発キャサリン。宛セバスチャン。感度良好。問題ありません。送れ』

部屋の中で普通の声量でしゃべりましたが、イヤホンから無線を通じてキャサリンの声が聞こえました。どうやら設置場所や電波状況などは問題ないようです。

では、次に帳簿でも探しましょうか。悪役は必ずこれを残すお約束ですからね。

金庫に聴音機をあてながらダイヤルをカチカチカチと回します。ふふふ、こう見えても昔は色々とやんちゃをしたものです。

その時の技能がこうして役立つんですから世の中分かりませんね。

カチカチカチ ガチャ

お、開いたようです。では失礼して。

ギィィィ

見つけました、見つけました。これでもかという金貨の横に立てかけられています。それを机に広げて写真撮影。

カシャカシャカシャカシャ

撮影完了です。では、脱出しましょう。

ウッゼ~貴族の屋敷から色々と証拠品を手に入れた私はその足で大聖堂に向かいます。

ここには勇者一行の出発式で見事な演説を行った神官長どのが居るのです。

クライトン家の名前で面会申請をすれば割とあっさり通ります。

「お待たせしました。ハウル・ラタヒノットです」

「クライトン家で執事を務めているセバスチャンと申します」

「そうですか…。あなた様が伝説の」

「昔の話です。今はしがない一執事なのですよ」

「そうですね。それで、今日はどういったご用件で?」

「ジャスティン・クライトンからある貴族の調査を命じられていたのです。今代の勇者どのが国境の町々を救うために召喚した食料が貴族どもの懐を温めるのに使われていると」

「あの戦闘糧食という物ですか?中々に美味でしたが」

「恐らく神官長殿が食せられたのも不法に流通させた物でしょう。勇者殿は、あれを魔物のせいで流通が途切れた町々でしか配布していません。本来ならば首都にあるはずが無いのです」

「何と!?」

「貴族どもはあれを欲しいが為に勇者殿を流通の途絶えた地域に派遣し、そして配布した戦闘糧食を税として徴用するのです。しかし、お嬢さまも流通が戻り、市民が普通に生活できるのならばそこまで目くじらは立てません。問題なのは、流通を戻す事より戦闘糧食を集めることを貴族が優先しているが為に、魔物討伐前よりはマシ程度にしか市民の生活が回復していないのです」

そう言ってウッゼ~貴族の家に山積みにされたダンボールと帳簿の写しを見せる。

「何と言うことだ。貴族が勇者を金儲けのネタにすることはいつも苦々しく思っていましたが、それもまた必要と黙認して来ました。しかし、それが市民の生活を脅かすという事ならば話は別です。我がマケドニア国教の神に誓ってウッゼ~貴族を処罰すると約束しましょう」

…このウッゼ~貴族という名詞、神官長にまで広まっていたのですか。

「よろしくお願いします。勇者殿もお嬢さまもマケドニアの行く末を案じています。今のままでは魔王を倒したとしても内側から倒れると」

「…お恥ずかしい限りです。今回の勇者殿の急な出立も貴族が強引に決めたこと。異世界からこちらの都合で強引に召喚した勇者殿に更にこちらの都合を押し付けてしまった」

「元々は魔王の圧倒的な戦力を前に滅びに瀕したマケドニアが異世界に助けを求めたのが始まり。当時は貴族も非常に協力的だったと聞いております。それが何時から困ったときには勇者を呼べ。勇者は魔王を倒して当たり前、といった風潮が根付いてしまったのか」

「全ては教会の不手際のせいでございます」

「いえ、教会ばかりのせいではありますまい。人は一度便利な生活を手に入れればもう元には戻れないのです。そして、一度受けた厚意は何度でも受けられて当然と思い込む。二度目三度目を断れば今度は逆恨み。とことん人は愚かな生き物ですな」

「ジークフリート様……」

「その名は捨てました。私の今の名はセバスチャンです」

「はい……」

「神官長殿。そう落ち込む事もありますまい。貴方は良くやっている」

「しかし、かつて世界を救った貴方様に私どもは…」

「世界を救ったのは私ではありません。先代勇者です。私を含めたパーティーメンバーは偶々一緒にいただけ。魔王討伐時に異能を発動した私達パーティーメンバーを巡って内紛が起こってしまった。メンバーは散り散りとなり、私はクライトン家に拾われた。今はしがない執事です。今はお嬢さまのお役に立てればそれで満足なのです」

「はい……」

「ですが、出来ることなら勇者殿をこれ以上、政治や商売の道具にはしたくないですな。今回の戦闘糧食の事にしても勇者殿には内密に進めております。人間の汚い面を見せるには、勇者殿は若すぎる。流石にマケドニアを見捨てはしないでしょうが、絶対に良い方向には進みません」

「勇者殿の耳に入る前に決着を付けたいものですね」

「頼みましたよ、神官長殿」

「お任せ下さい。セバスチャン殿」

私はそうして教会を後にしました。帰り道、私は勇者殿から頂いた73式小型トラック(新)で移動しております。それにしても、このエアコンというのは快適ですね。余り多用すると身体に悪いそうなので走行中は窓を開けるに留めますが。

『セバスチャン、セバスチャン。前ニ人、沢山居ル。武器ヲ持ッテ隠レテル』

ほう。ボンクラな貴族にしては中々ですね。私が色々と嗅ぎ回っていることに気付きましたか。

『魔法準備シテイル。撃ッテ来ル。撃ッテ来ル』

「構いません。応戦します。MINIMIの餌食にしてくれましょう」

魔法の発動にはそこそこ時間が掛かります。引金を引けば直に弾が出る鉄砲とは違うのです。

タタタタタタタタタ

「ぎゃわ!?」「ぐお!?」「前口上も聞かずに攻撃するとは卑怯なり!」

「盗賊相手に前口上を聞く必要はありません。このセバスチャンの前に出てきたことを不幸と思うが良い」

タタタタタタタ

「くっ!? これが先代勇者の右腕、『呪われし聖剣』の実力なのか!?」

「いえ、ただ引金を引いているだけです。全ては今代勇者の実力ですよ」

「オノレ! こんな事をしてただで済むと思っているのか!? 我らはウッゼ~貴族様の…」

「私が死ねばただの盗賊になるのでしょう? ならば何の問題もありません。撃って良いのは、撃たれる覚悟のある者だけです。死に晒せーー!」

タタタタタ……カチカチカチ

「はーっははは! 弾が尽きれば鉄砲などただの鉄の棒。者共、掛かれーー!」

「ふんっ。このセバスチャン、舐められたものだ」

そういって一振りの短剣を取り出すセバスチャン。

「馬鹿め! たった一本の短剣で何が出来る!」

「覚えておきなさい。武器の差が戦力の決定的な差で無い事を」

そうしてセバスチャンは一陣の風となった。一瞬にして賊の間を駆け抜ける。

「また、つまらぬものを斬ってしまった」

そう言うと、賊が血飛沫を上げて次々と倒れる。マケドニア有数の剣士にして先代勇者パーティーの一員。二つ名は『呪われた聖剣』。それがセバスチャンの正体である。

さて、賊の始末は駆けつけてきた国防軍に任せ、さっさと屋敷に帰還しましょう。

既に表舞台からは消え去った老骨。日の当たる場所に私の出番はのうございます。

勇者殿には日の当たる道を歩いていただきたい。いえ、寧ろ勇者殿が日の当たる道だけを進めば良いようにするのが、この老いぼれの仕事でございましょう。

屋敷に帰るとエイミーとソフィーが木から蓑虫にされて吊るされており、額には『餌をやらないで下さい』と書かれた紙が貼られております。

「あ、セバスチャンさま。お帰りなさ~い」

「…お帰りなさい」

「はい。只今、帰りました」

しかし、普通に挨拶して来る辺り、二人とも慣れたものです。

木から吊るされるのに飽きれば勝手に抜け出して仕事に復帰しているでしょう。この二人にとってこの程度の縄など、簡単に抜けられるのですから。

それでも大人しくしている辺り、反省はしているようです。反省しているならやらなければ良いものを。しかし、二人に言わせれば『反省しても後悔していませんから』との事ですが。

お嬢さま。今日もクライトン家はいつも通りの一日でございました。

余談ですが、勇者殿の言うところのウッゼ~貴族達はお家断絶こそ免れたものの、直轄地の殆どを失い、教会に取り上げられたとの事です。良い気味でございます。

オール・ハイル・マケドニ~ア。



[18458] 第6話 難攻不落の要塞を造ろう
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/22 09:03
さて、皆さんこんにちは。勇者(仮)の北条透です。

あれだけ盛大に見送りをしてもらいましたが、魔王討伐はゆっくりやろうというのが我が軍の基本戦略です。

要塞予定地への到着は出立から二週間を予定。

俺は一足先に土木作業をする予定の土系統魔法使いと水系統魔法使い、それと護衛の騎士と共にMH-53Eで拠点予定地の湖に来ています。うむ、良い景色です。

「では、この設計図通りに要塞建設を行う。最上流の湖全周には空堀を造り、その内側には壁を造る。その内側は湖畔まで約500mあれば良い。滑走路は1kmクラスが一本。滑走路脇にはアーチ型のハンガーを造る。土魔法でアーチ型に成型し、セメントで固めろ。湖との間には小さくて良いので堤防を設けること。作業は精霊と共同で行え。水の魔法使いはこれから俺が大型艦を召喚するからその津波が岸に到達させないように押さえてくれ。では作業開始!」

自衛隊年鑑を開いて次々と施設科車両を召喚する。

施設作業車、グレーダ、掩体掘削機、バケットローダ、特大型ダンプを次々と召喚。

『オシゴト、オシゴト』『働クヨ、働クヨ』

魔法に負けない速度で作業を、寧ろ土砂の移動なんかでは魔法使いを上回る速度を見せる。

それを尻目に湖の中心へと向かう俺。MH-53Eでホバリング。水系統の魔法使いはここを中心として円状に展開し、水面に立っている。

「召喚! カール・ヴィンソン!」

排水量10万トンを超える質量が突然現れた事により、水が押し退けられて津波が発生する。

しかし、それを周囲に展開した魔法使いが押さえ込み、何とか空母召喚は無事に終わった。

「召喚! ミズーリ!」

次いで、カール・ヴィンソンの艦尾方向に戦艦ミズーリを召喚します。満載排水量5万3千トン。50口径40.6cm砲を3連装9門搭載する戦艦です。他にもハープーンやトマホークを搭載しています。

『ユウシャ、ユウシャ。艦体(カラダ)ガ大キ過ギル。動ケナイ』

「うん。色々と済まない。出来れば我慢して欲しいんだが?」

『面白イ装備、タクサン有ルカラ我慢スル』

「サンキュ」

これで航空戦力が艦載機限定で使用可能になりました。

ジャスティンによれば、これからは魔王軍の幹部クラスが出てきてもおかしくないとの事。戦力は多いに越したことはありません。

それに、艦内に五千人以上を収容可能な大型艦です。これからの拠点になってくれそうです。

地上部の方も次々と作業が進みます。

いや~、作業が速いですね。旧帝国軍はこれを人力でやってたって言うんですから感心します。本隊到着までには陣地の構築は終了するでしょう。

では、俺は周囲の森にセンサーを仕掛けに行きます。

対人センサーと指向性散弾を設置します。これは遠隔コントロールで起爆します。

国際条約で無差別に爆発する地雷は所有が禁止されたんですよね~。

設置を自国内に限れば許可しても良さような物を。つーか、これでMLRSまで禁止されたら数で劣る日本の防衛、大打撃です。

指向性散弾。元は対車両用の地雷です。

流石に装甲車両への効果は未知数ですが、非装甲車両はスクラップにできます。

当然、元が対車両用なので米軍の対人地雷、M18クレイモアより破壊力は上です。当然サイズも大きいですが。

ただ、森林部だと本体の隠蔽には有利なんですが、破壊力が削られるんですよね。

陣地予定地に戻ってきました。

湖は基本的に湧水なので、流入河川は小さいので問題ないのですが、下流の湖に流れている川にだけは橋を架けなくちゃなりません。

これは91式戦車橋を架けておきました。尤も、要塞内の大部分で、この川、地下に埋めます。

でも、気付かすに大重量で踏んでしまうと、空気の混ざらない管路で流れている川、破裂するんですよね。

都市部で不用意に戦車を動かすと水道管が破損するのと同じです。結果、戦車はこの部分、橋を通ってもらいます。

で、呼び出す車両ですが、例によって90式戦車と89式戦闘装甲車、82式指揮通信車。

新参が99式155mm自走榴弾砲、87式自走高射機関砲、MLRS。

後は、水際ということで海兵隊の水陸両用装備から幾つか引っ張ってきましょう。

LAV-25、八輪の装輪装甲車で25mm機関砲を搭載。最大速度は陸上で100km/h。水上で12km/h。

AAV-7、主に上陸戦を想定した装軌装甲車で兵員25名を搭載可能。40mm自動擲弾銃とM2重機関銃を装備。最大速度は陸上で72km/h。水上で13km/h。

日本には水陸両用車が無いので助かります。流石は世界中に展開する合衆国海兵隊です。

次に、回転翼部隊としてAH-64DとOH-1。UH-60JとCH-47Jを召喚。

部隊を分けて、陸上に駐機する組と空母に駐機する組に分けます。

定期的に上空から偵察をしてもらいましょう。30mmチェーンガンなら多少の木々は吹き飛ばして敵軍に損害を与えます。

今までみたいに魔物の確実な殲滅が目的ではないので大火力の面制圧が可能です。

よし。戦車橋とヘリポートもありますし、これで運用態勢は整いました。

土の魔法使いに格納庫(と言ってもアーチ型の屋根があって、開口部が防水シートで覆えるだけ。一応周囲より少し高くなっている)も造ってもらいましたし、これで滑走路が出来れば難攻不落の要塞の完成です。

それにしても、土の魔法とセメントの組み合わせは便利です。中に鉄骨と鉄筋を入れればそれだけで高強度の鉄筋コンクリートモドキの壁が出来ちゃいます。

監視塔も一瞬で完成しました。尤も、セメントが固まるまで土の魔法使いには代わる代わる魔法をかけ続けてもらわなくちゃいけませんけど。

二週間後、魔王討伐軍本隊が到着しました。

すると、何と言うことでしょう!森を抜けるとそこは要塞でした。

10m近く掘られた空堀、底には先端を尖らせた丸太が落ちて来る者を待ち構えます。

その上に高さ10mの壁が湖を囲むように造られています。

空堀の底から登ろうとすれば合計20mもの高さを登らなくてはなりません。

入り口は要塞側に上がっている巨大な板を下ろすことで架けられます。普段は内側に跳ね上げられるので、城門に匹敵する部分は無いんです。

周囲は完全に空堀と壁に囲まれます。空堀と城壁の間は三車線分ほど空間が有り、そこに車両を展開させることも可能です。

そして、城壁の一番下には指向性散弾がセットされています。必死に登ってきた魔物さんをお出迎えです。

中に入ると50m間隔で造られた監視塔が目を引きます。

城壁から少し内側に5m程高く建てられ、12.7mmM2重機関銃と7.62mmを使用するM134ガトリングガンとFN-MAG(M240)軽機関銃がそれぞれの死角をカバーするように設置されています。

これは対空射撃も可能となっていて、少数ですが、空を飛べる魔物を迎え討ちます。城壁の上にもFN-MAGが設置できる銃座が有ります。元々、地面に置いて伏せた状態での射撃を前提としているFN-MAGはちと重いので、これが有ると便利です。

唯一、堀の無い川の部分ですが、川底には機雷が仕掛けられており、銃座が沢山設置されているので、攻略の難易度は大して変わらないでしょう。

川も要塞内に入ったら100m以上を水道みたいに完全に空気を混ぜずに、専門用語で言うところの管路状態で流れており、その管路を流れに逆らって通れたとしても、一定以上の大きさの物体は動体センサーに引っかかるので進入は容易ではありません。

そして、一番目立つのが遠くからでもその大きさが判る航空母艦です。

その艦体サイズたるやマケドニア王宮にも匹敵します。

正規の運用には五千人以上を必要とする巨大艦。討伐軍を全て収容してもお釣りが来ます。

そして、火力支援を担当するアイオワ級3番艦ミズーリ。その16インチ砲は戦術兵器としては最強クラスの攻撃力を有します。

「呆れた。たった二週間でこれだけの要塞を造っちゃうなんて」

「魔法と施設科車両のお陰だな。それにしても魔法便利だな。目的の形に成型してもらって、鉄筋仕込んで、セメントと水を混ぜれば即席のコンクリートになったし。流石に強度の出る細骨材、粗骨材の混合比なんて知らないが、石を積み上げるよりはよほど強度が出てる」

「セメント?」

「水を混ぜれば固まる粘土の親玉だよ」

「へぇ~。滑走路も出来てるんじゃない。でも、壁なんかとは色が違うんだ?」

「壁はセメント、滑走路はアスファルト。材質が違うからな。尤も、ハリアーの発着スペースだけはセメントだけど」

それぞれの問題は、セメントだと施工に時間が掛かる。濡れると滑る。補修が大変。

アスファルトは高熱に弱い。絶対強度が低い。といったところか。

まぁ、現代日本でも建築資材を二分している材料だし、それぞれの利点を活かして行きましょう。

「へぇ~。もう戦闘機、呼び出したんだ~」

「ああ。空母の方もだが、即応戦力は用意している。流石に常時エンジンを掛けているなんて事は出来ないが、俺が居なくて召喚できませんでした、なんて言ったら折角造った滑走路が泣く」

「結構大きいんだね?」

「いや、コイツは最小の部類に入るぞ?この滑走路は平均の半分しかないからな。JAS-39グリペン。航続距離と攻撃力は物足りないが、それは空母搭載の大型機で補えば良い。何より整備性が他の機体より高いらしい。毎回飛行後に機体を召喚しなおすのは大変だし、数回は整備無しで戦ってもらわないと」

「あっちの飛行機は大きいね?」

「あれはC-130っていう輸送機だからな。首都滑走路との間で補給路の確保に役立ってもらう。まあ、20tの物資を運べるからな。そんなに運ぶ必要無いだろうが」

「20t!?」

「まぁ、この滑走路じゃ運用出来んが、122tを積める機体だって居るし」

「122t!? 私の常識が崩れていく。馬車で必死に補給路の確保をしてきた私達は何なの?」

「この滑走路でも77tを空輸可能な輸送機を運用できるけど、明らかに性能過多だから使わない。それに余り重量級の機体を運用すると滑走路の劣化が早まるし。まぁ、最悪、滑走路は戦闘機専門にして、その辺の地質がしっかりした所をローラーで均して1km確保すれば使えるんだけどね」

「…もう良いわ。現代兵器の非常識さは充分理解したから。これ一機あれば、補給部隊を十分の一に出来るわよ」

「何時でも何処でも迅速に、が勇者軍のキャッチフレーズだからな。今度、兵隊に空挺訓練受けさせようかな。今までも迅速だったけど、今度は規模が違うぞ。千キロ先にでも数時間で展開できる。風の魔法使いが居れば降下速度も落とせるし、ある程度コントロールも利く。そんなに難易度高くならないだろうからな」

「…こんな要塞を二週間で造ることと言い、兵隊をそんな遠くまで運ぶことと言い、末恐ろしいわね、ホント。そんな展開されたら世界中の戦術家が泣くわよ?」

「攻撃力の面で、歴代勇者に勝てないからな。便利面で勝たないと」

「ネギ○」なんかじゃ、魔法使い単体で戦車とかイージス艦上回るとかどんだけだよ。しかも主人公の父親、地形変えるとか完全に戦略級ですよね。

湖にはカール・ヴィンソンとミズーリの二隻が浮いているが、拠点にするのはカール・ヴィンソンの方。

馬は要塞内で適当に馬舎を作って繋いでおく。定期的に草むらに行かせて運動させますけど。

カール・ヴィンソンまでは軽徒橋が架けられています。これは浮力を利用した浮橋でオートバイまでなら走行できる構造です。

で、最初はうきうきしていた討伐隊面々もカール・ヴィンソンに近付くにつれて段々、口数が少なくなっていきます。

だって、近付けば嫌でも大きさが判りますからね。

東京駅が海に浮いていると想像してください。東京タワーが横になっているでも良いです。

艦測面まで行くと飛行甲板までタラップが降りています。これ登るの地味に大変なんですよね。でも、一気に飛行甲板まで行かないと絶対に迷うので仕方ないですけど。で、登りきると全員を一度整列させます。

「傾聴! この船が今後、我等の拠点となる。艦内はどこもかしこも似たような構造で、迷えば比喩ではなく遭難する。先遣隊では実際に遭難者が出ている。艦内にはいたる所に飛行甲板への道案内が貼ってある。迷った場合はそれに従って一度、艦外に出ること。これより艦内簡易地図を配布する。自身の所属部隊ごとに区画が決まっているので、基本的には、そこと食堂以外へは行かないように。迷うぞ。では、第一小隊から移動開始」

既に艦内にある程度馴染んだ者が案内を開始します。にしても、この艦内、本気で迷いやすいんですよね。下手したら遭難した後に死者が出ます。先遣隊では実際に遭難者が出て、精霊に誘導してもらってようやく見つけました。

さて、ツッコミ役のジャスティンも来た事だし、ここらで少しネタに走っておきますか。

「は~ははは! この艦は俺の城だ~! 俺はこの地に自分の王国を作る! 魔王城へGO!」

『ユウシャ、ユウシャ。コノ船、動ケナイヨ?』

「精霊様、気にしないで下さい。偶にトオルはこうして発作を起こすんです」

『ワカッタ、気ニシナイ』

…ツッコミが入りませんでした。折角、続な感じの戦国な自衛隊の海兵隊大尉を真似たのに…。

「マイナー過ぎて解る人、居ないのでは?」

「でも、面白かったんだよ。続な感じの戦国な自衛隊。小説で続編も出てたけど、現代に初代の伊庭三尉の娘が居ましたとか、やっちゃ駄目だろ。あの人、戦国時代で浮気っぽいことしてたぞ」

「よく解りませんが、全員収容完了しました」

「うん。今回は完全に外したね。警戒は先遣隊から人員を選出してやっておくから、休んで良いよ?」

「ええ。屋根の下で休めるのは久しぶりです。それにしても、狭さに我慢すれば首都より快適な生活が送れそうですね」

こうして、魔王討伐軍は本隊を加えて、要塞の本格稼働に入りました。しかし、これからは魔王軍の戦力も次々と強化されてくるらしいです。早く魔王城の所在を突き止めないと。



[18458] 閑話2 とある要塞の日常
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/22 09:08
さて、皆さんこんにちは。遂に要塞建設を行った北条透です。

今、首都に向かってC-130が飛び立って行きます。首都に残した家族と文通が出来ると知って手紙の量がえらいことになってます。

まぁ、流石に何年もここに篭る心算はありませんが、魔王城が見つからないうちは動くに動けません。

で、滑走開始。魔王討伐軍の面々、ガン見です。そう言えば、貴方達、固定翼機が飛ぶところ見るの初めてでしたね。

積んでいるのが手紙だけで軽量のC-130は滑走路を使い切ることも無くふわっと浮き上がります。

オオオォォォーーーー!!

歓声も上がります。そして、首都の方向に飛び去る輸送機が見えなくなるまで手を振っていました。

あちらから輸送機が帰ってくるのは、手紙が家族に渡り、返答を待ってからですから、数日は掛かりますかね。

「それにしても凄いよね。こんなに首都と離れているのに手紙のやりとりが出来るなんて」

「設備があれば数分で送れるんだがな」

「またまたご冗談を」

いえ、本当ですよ?ただ、送れるのは紙に書かれた文字などであって、紙自体じゃ無いですけどね。人、これをFAXと呼ぶ。

今現在、要塞内では二交代制に分けて生活しています。

二日に一回は空母に。もう一日は地上に建てられたプレハブ小屋に。

いくら軽徒橋があるとは言え、空母から直にこっちに来て戦闘配置に着くのは容易ではないんです。

そこで二交代制でプレハブに泊まってもらうんですが、これが暑い。野宿の方がマシと野営みたいに寝る者もいる始末です。

余りに不評だったんで、土の魔法使いに頑張ってもらって、コンクリモドキの宿舎を建てました。快適性は……まぁ、そこそこです。

で、今日はカール・ヴィンソンからの初発艦の日です。F/A-18Eにちょっくら荒野を越えて魔王の谷まで行って来てもらいます。

『ジャ、ユウシャ。行ッテクル、行ッテクル』

「おう、頼んだぞ」

手を振って機体から離れる。…真横に居れば影響ないよね?

カール・ヴィンソンからF/A-18Eが飛び立ちます。汎用性の高いマルチロール機は使い勝手が良いですね。

今まではヘリで偵察してたんで航続距離の問題上、魔王の谷まで行けなかったんですよね。

シュワァァーーーン!!!

う、五月蠅い。流石は騒音で訴訟にまで至ったホーネット。つうか、この距離でジェットエンジンに近づいたの初めてだし。

キィィィーーーン。

…あ、耳がいかれた。流石はパチンコ屋の騒音にも耐えられない俺の耳。

って、危ない! 飛び出したF/A-18Eは失速しかけ、水面すれすれで翼が揚力を得て、飛び上がりました。

あ~、ビックリした。…それにしても、何で全備重量に届いていないF/A-18Eがあんなにギリギリの発艦したんだ?

Q.飛行機が飛ぶために必要なもの
A.揚力

Q.揚力を得るために必要なもの
A.対気速度

ポクポクポク、チーン!

あ、そうか。空母が完全に停止しているからか。カタパルトだけじゃ速度不足なのかな?

仕方ない。次から風の魔法使い呼んで発艦の時に風を吹かせてもらおう。一度高度を取れさえすればその後はどうにでもなるべ。

トントン。ジャスティンに肩を叩かれました。

パクパクパクパクパク。…え、何? ご免。ジャスティン、何を言ってるのか、分かんない。読唇術なんて会得していません。

パクパクパクパク…「トオル、大丈夫?」

あ、ようやく耳が回復しました。いやー、調子に乗って、映画みたいに中腰で指差してGO! とかやるからですね。今度からしっかり耳を塞ぎましょう。

「随分とギリギリな発進だったけど、あれで大丈夫なの?あと、どの位で帰ってくるの?」

「どうやらカタパルトだけじゃ速度不足らしい。あと、帰ってくるのは、凡そ2~3時間ってとこじゃないかな。魔王の谷、どうなってるかよく分からんし」

そう言いながらタラップを降りて、軽徒橋を渡る。

要塞内は結構活気に満ちています。

何せ、今まで見たことが無いような構造ですから。皆興味津々です。

俺はと言うと、滑走路近くの地下壕に造った兵器庫のチェックをします。

召喚を前提にしているからそんなに貯蔵量は必要ないけど、やっぱりある程度は入れておかないと。

火気厳禁、立ち入り禁止。誘爆すれば基地の半分は吹き飛びます。

入り口が重いので開けるには車両に手伝ってもらわないといけません。

兵器庫はコンクリートで造られ、地下三メートル位に設置してあります。

搬出は高機動車あたりに繋いで牽引です。

次に武器庫のチェックを行います。

こっちは個人携帯の武器が収容されています。

AK-47やMINIMI、FN-MAG、M2なんかですね。

監視塔の中にスペースを設けてある程度入れてあるんですが、量的に少し不安です。

全部口径が違うのでやり辛くはありますが、野戦でもないですし、弾丸を大量に配布するので問題はないでしょう。

AK-47は要塞内に居るときは75連ドラムマガジンを使ってもらいます。少し重くなりますが、特に問題は無いでしょう。

MINIMIとMAGはベルトリンク。予備銃身も用意しないといけません。

他にガトリングガン専用のマガジンやバッテリー、M2用のベルトリンクもです。

全部、油紙に包んで箱に詰めます。この箱、結構重くなってしまったので、これもリアカーに乗っけて車両で牽引してもらいます。

城壁の上まで上げるのは人力ですけど。この武器庫、要塞内に六箇所あります。

全部を回りますが、移動は徒歩じゃ大変なんで高機動車です。

ここは各小隊長以上なら開ける権限を持っています。一番気を付けるのは湿度ですね。

一度開けて閉める場合は風と水の魔法使いに湿度を下げてもらいます。

今日もその辺にいた魔法使いを捕まえて同行させています。

「勇者殿、発電機の調子が良くないのですが」

「勇者殿、この重機関銃は何処に据え付けるのですか?」

「勇者殿、車両隊の待機場所は…」

「勇者殿、馬が暴れて仕方ないので一旦綱を解いて、草むらに放してもよろしいですか?」

「勇者殿、居住性確保の為にエアコンを宿舎に導入しませんか?」

稼動したての要塞には不都合が付き物です。

中の人間も慣れていないですし、何より構造的な欠陥が見つかる場合もあります。

実際に運用してみないと分からないことって結構あるんですよね。

あと、最後の奴。簡単に言うけど、エアコン据え付けたり、電源確保するの誰だと思ってるんだ。そもそも、宿舎は仮眠施設なんだから我慢なさい。プレハブや天幕に比べればマシでしょうが。

ゴオオォォォーーー

あ、どうやら偵察に出ていたF/A-18Eが帰ってきたみたいです。急いで空母に戻りましょう。高機動車――!!

『呼ンダ? 呼ンダ?』

「軽徒橋まで送って」

『ワカッタ。乗ッテ、乗ッテ』

さて、撮影された偵察写真を確認している俺ですが、久しぶりにorzな気分です。

「これは……凄い数ね」

そうなんです。魔王の谷の最深部に魔王城ありました。……沢山。

「何なの、この数!? 和式洋式中華にアラビアっぽい奴まであるよ!? あれか、これは歴代魔王の数だけ魔王城がありますよって事なんか!?」

「勇者によって魔王城の形の証言が異なると思っていたら、こうゆう事だったのね。で、どうするの?」

「これは、流石に全部破壊するのは容易じゃないべ。どうしよう。広域爆発系は建物内に与える損害が小さすぎるし、徹甲爆弾は効率悪すぎるし。そもそも魔王をそれで仕留められるって保障が無いし」

「でも、無限に呼び出せるんだし、問題無いんじゃない?」

「十、二十ならまだしも、この数じゃ俺の気が萎える。ひ弱な現代人、舐めるなってんだ」

本気でどうしましょう。

これ、地道に一個ずつ壊して行くしか無いんですかね。

アウトレンジは現代兵器の基本です。これが失われると現代兵器のウマミ半減です。

でも、今回の偵察で魔王の谷までの詳しい道のりと、谷内部の地形が把握できました。

谷とは言っても、絶壁に挟まれているだけで、内部は森になっています。

しかも、中は結構広い。山手線の内側と同じ位でしょうか。

しかも、結構密度濃いです。ここまで見事な森だと、谷と湖の間の荒野ってどうやって出来たのか非常に気になります。

「でも、ここまで見事な森だと車両での移動はかなり制限されるわね」

「はぁ、欝だ。世界はそこまで魔法を贔屓にしたいか。現代兵器を操る俺が嫌いか。もう、いっそ、カール・ヴィンソンに積んであった核を使って全部吹き飛ばせば戦争なんて終るのにな」

気分は円卓の鬼神の相棒、片羽の妖精です。いっそ、観賞用にF-15C一機呼んで片羽赤く塗ろうかな。

ユウシャはウツになっている。

「え~と、右斜め45°から、えい!」

ガツン!

「あぐぅ!?」

キシからツッコミがはいった。ユウシャはモンゼツした。

「うおぉい、ジャスティン! 俺の頭は昭和のテレビか!?」

「え? 壊れたモノを直すにはこれが一番じゃないの? メイド・イン・タイワンは叩けば直るんでしょ?」

「そのモノって物だよね!? 俺は者だから! それに、俺はメイド・イン・ジャパンだよ! そもそもそれ、十年以上前の話だよ! お前は何処のロシア人宇宙飛行士じゃ!?」

「ジャパンって何?」

「タイワン解って、ジャパン解らないんかい!? 日本だよ、黄金の国だよ、神の国だよ!」

「トオル、貴方は少し、考え方が古いようね」

「じゃあ、日本だよ、オタクの国だよ、平和の国だよ! って言うか、絶対に知ってるだろ!?」

「ワッタシ~、ニホンゴ、ワッカリマセ~ン」

「こ、コイツ……!」

結局、ジャスティンは本当に知りませんでした。ギャグパートって怖いな、オイ。

で、後日、本当にF-15Cを呼び出して右翼を赤く塗って片羽の妖精仕様なんて喜んでいたのは内緒です。

今度はF-14Aを呼び出して北の海から来る悪魔兼英雄仕様とかやってみようかな。

いや、そう言えばコイツは艦載機だから普通に使えるんだった。

今度、使おうかな?でも、妖精と違って、悪魔兼英雄はほぼ、全体を塗り直さなくちゃいけないので大変です。

しかも、整備に手間隙かかる機体なので、一~二回使ったら新しいのと変えなくちゃいけません。…やっぱり観賞用にしときましょう。

で、忘れた頃にC-130が帰ってきました。しかも、結構な補給物資を積んで。

何でも、あのウッゼ~貴族どもが公的資金の私的流用で捕まったそうです。ざまぁ見ろ。

で、教会は王様を説得。討伐軍にそこそこの予算が与えられました。

つーか、俺は会ったこと無いんで知りませんでしたが、王様まだ十二歳だそうです。それじゃ、周囲に流されても仕方ないか。



[18458] 第7話 幹部クラス襲来
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/22 09:13
皆さん、こんにちは。今日はローテーションで地上の宿舎で書類仕事をしている北条透です。

マケドニアから補給物資が送られてくるようになりました。

お陰で食事のレパートリーも増えて隊員の士気も上がったようです。それは結構ですが、同時に俺の書類仕事も増えました。

ようやく、スタンドアロンに行動し始めて書類仕事から開放されたと思ってたのに。orz

で、書類仕事をしています。真昼間から屋内に篭る俺、大変健康によろしくありません。

ピピピピピピ!!

おや?緊急連絡ですね。

『こちら航空指揮所! 本部、応答願います! 送れ!』

航空指揮所とは定期的に哨戒飛行をする航空隊からの情報を捌くところです。

航空指揮はしてません。だって、精霊たち、優秀なんで必要ないんです。

「はい、こちら本部。どうしました? 送れ」

『哨戒飛行中のJAS-39より入電。魔王の谷と砦中間部の荒野にゴーレム出現との一報です! その数、大型1、中型50、小型400以上! 現在の速度だと第一次防衛線の森林部まで六時間! 送れ!』

「ご苦労。JAS-39は即時帰還。写真撮影を忘れるな。代わりにOH-1とUH-60を向かわせろ。通信終了」

我が軍の防衛線は全部で三本あります。一本目は荒野から森林への境界線。二本目は森林からこちらで伐採した空地への境界線。三本目が空堀と城壁です。

「総員第一種戦闘配置発令! 中隊長以上の指揮官は司令部に集合せよ。全航空部隊及び機甲戦力は対地対戦車装備で即時出動態勢!」

さて、今回はシリアスパートですかね。

十五分後、全指揮官が集りました。

やっぱり空母で休息中の隊員は来るのに時間が掛かります。

緊急時は当直の部隊だけで活動を始めるんですが、今回は猶予があったので、全中隊長に集ってもらいました。

「先ほど、JAS-39が帰還した。で、これが今回の敵だ」

そう言って大量にプリントアウトした写真を幹部に回す。

俺はと言うとモンスター図鑑という、歴代の勇者が接触した魔物の情報を集めた図鑑を開いている。

「大型ゴーレム。通称ガ○ダム。全長18m。武装は実体剣のみ。しかし、その質量が既に武器。コアは腹部のコックピットに位置する場所にあり、それを破壊しないと無限に再生する。
中型ゴーレム。通称アーム・スレイ○。全長9m。武装はナイフのみだが、投擲してくるので注意が必要。動きは速く、100km/hで動くなんて報告もある。これもコアを破壊しないと無限に再生する。しかし、再生速度はガ○ダムに比べれば遅く、一度損傷を与えれば一時間は動けない。
小型ゴーレム。通称パワード・スーツ。全長3m。武装は実に多種多様。再生速度は遅く、一度損害を与えれば半日は動けない。…以上で間違いは無いな?」

ジャスティンが無言で頷く。

「では、この情報を元に作戦を決める。現在輸送機のC-130と戦闘機のJAS-39、F/A-18Eが対地爆撃装備で出動態勢を始めている。まず、作戦の第一段階としてJAS-39とF/A-18Eがクラスター(親子)爆弾を大量に投下する。次いで、C-130がデイジーカッターという大型爆弾を投下。周囲一帯を吹き飛ばす。これで、敵小型ゴーレムは殆ど無力化されているはずだ。
第二段階は作戦域にSH-60とUH-60を飛ばしてまだ無力化されていない個体にレーダーとレーザー照射を行う。それを目掛けてミズーリ搭載の巡航ミサイルと艦対艦ミサイルと大量に召喚している地対艦ミサイルの一斉射を行う。これで中型ゴーレムは大部分が撃破されているはずだ。
第三段階として、コブラAH-1とアパッチAH-64Dが対戦車有線誘導弾(TOW)と20mmガトリングガン、対戦車自律誘導弾(ヘルファイア)と30mmチェーンガンで一斉攻撃。同時に森林手前に敷設してあるトラップを発動して地雷を一斉起爆。出来ればここで大型ゴーレムに戦闘不能になってもらいたいが、最悪の事態を想定する。城壁外周に90式戦車を展開。ミズーリと99式自走砲の支援射撃の元、要塞の持ち得る火器を総動員して迎撃に当たる。全部隊員に110mm対戦車ロケットを携帯させろ。軽機関銃以下の火器は恐らく役に立たない」

対戦車火器というのは一般の想像と違って加害半径が小さい。

戦車の装甲を貫くために可能な限り攻撃を凝縮しているのだ。

故に、そこから発射されるメタルジェットが正確にコアを直撃しないと成果は出ない。

爆撃や砲撃で破壊されてくれよ。

「フェイズ・1を開始する。航空機部隊発進開始!」

デイジーカッターを搭載したC-130と搭載量限界までクラスター爆弾を搭載したJAS-39とF/A-18Eが次々と発進する。

ゴーレムは既に第一次防衛線から20kmまで接近している。

まずは、JAS-39とF/A-18Eがクラスター爆弾を次々と投下する。

対人兵器としてはデイジーカッターよりも威力があるとか。

投下された爆弾は途中で202発の小型爆弾に分離し、次々とゴーレムの周囲で爆破する。

表面が無駄に厚い中型以上には余り利いていないが、小型ゴーレムは次々と投下される小型爆弾に損傷を負っていく。

小型爆弾とは言え、一応装甲車両にも有効であるのだ。

次いで、C-130がパラシュート付のデイジーカッターを投下する。

ふわふわと風に揺られながら、大型ゴーレムの近くで起爆した。

元々は密林を切り開いて即席のヘリポートを作るために使用される伐採用。

核と見間違えられる爆発力は一瞬で小型ゴーレムを四方に吹き飛ばした。

爆発の影響が収まってから、OH-1から送られてくる映像を見ながら俺達は苦虫を潰したような顔になる。

小型ゴーレムの大部分を無力化できたのは良いが、中型と大型に損傷が殆ど無い。

所詮は広域殲滅用の爆弾。重装甲の相手には効果が薄い。

「フェイズ・2に移行する。航空機部隊は即時帰還。対艦ミサイルと徹甲爆弾に換装し、発進準備を整えろ。SH-60、UH-60はレーダー及びレーザー照射を開始しろ。ミズーリ、誘導弾発射準備。レーザー誘導のトマホークから発射開始」

湖のミズーリから轟音が上がり、トマホークが発射される。

今回、レーザー誘導にセットしてあるトマホークは粉塵などでレーザーが届かないと誘導が出来ないという欠点を持つ。

先のデイジーカッターのように粉塵が収まるのを待ってはいられない以上、殆ど同時に着弾させなくてはならない。

32発のトマホークが1体の大型ゴーレムと31体の中型ゴーレムに突き進む。

750km/hと、ミサイルとしては低速だが、それでも充分な速度を持つトマホークはあっと言う間に目標に着弾する。

当然、周囲には爆発の影響で粉塵が舞い上がる。

しかし、今回は粉塵が収まるを待たない。

次々とレーダー誘導のハープーンと地対艦ミサイルが発射される。

発射台に限りのあるトマホーク巡航ミサイルと違って、かなりの数を召喚していた対艦ミサイルは百発単位で、粉塵の中のレーダー反応へと突き進む。

これで、決着が着いてくれよという俺達の願いも虚しく、粉塵の中から現れる大型ゴーレムと中型ゴーレム。

しかし、数は減り、残った個体も四肢が欠けていたりと、多少は損害を被っているようだ。

特にミズーリから放たれたトマホークはレーザー誘導だけあって正確にコアに直撃したようだ。

しかし、全部が直撃したわけでは無さそうだ。直前で腕を盾にした奴も結構居る。

その後の対艦ミサイルも何だか損害の与え方がおかしい。

木っ端微塵になった奴と、損害を殆ど被っていない奴に分けることが出来る。

…奴ら、密集して外側の個体を盾にして中央部を護りやがったな。

ハープーンにしてもトマホークにしても、爆発力重視で貫通力はさほどでもない。

密集されれば外側の個体を無力化しただけで終ってしまう。それにしても、

「おい、大型ゴーレムは再生早すぎだろ…」

右腕は完全に吹き飛んだ以外は、所々が欠けているだけの大型ゴーレムだったが、そこが目に見えて回復し始めた。

二つの目に、V字アンテナは伊達ではないということか。

それにしてもゴ○ラに挑む自衛隊の心境っていうのはこんな感じなのかね。

「フェイズ・3に移行する。AH-1とAH-64Dによる精密攻撃を開始。確実にコアを破壊せよ。目標がトラップエリアに入ったら爆破する」

爆撃やミサイル攻撃に比べれば精密な攻撃が可能な攻撃ヘリである。

特にAH-1のTOWは有線誘導なので撃ちっ放しのヘルファイアに比べれば弾着地点まで誘導できる。

巡航ミサイルの直撃や対艦ミサイルの釣瓶打ちに耐える相手にどこまで通用するかは不明だが、諦めてやる道理は無い。

それに、対戦車ミサイルっていうのは貫通力だけなら対艦ミサイルにも劣ってない。

ヘリは次々とミサイルを放ち、機関砲を撃つ。しかし、ここで問題が生じた。

ドォォォーーン

一機のAH-1がいきなり墜落したのだ。

「何だ!? 何が起こった!?」

「ナイフだわ! 奴らナイフをヘリに向けて投擲したのよ!」

ナイフを投擲!? ああ、そういや、全金属の騒動な某軍曹も第一話でそうやってヘリ墜としてたな、こん畜生!

コブラのTOWは有線誘導という関係上、発射から着弾までヘリ本体の機動は制限される。

「AH-64D。中型ゴーレムを最優先で対処しろ! 数が少ない今なら力勝ち出来るはずだ! AH-1。大型のコアをピンポイントで狙え!」

AH-64Dのヘルファイア対戦車自律誘導弾は発射した後は勝手に目標に向かってくれるので、高機動下での使用も容易である。

それにしても、あの投げナイフ、どれだけ速度出てるんだよ?下手したらAH-64Dの最高速度上回ってるんじゃないか?

「トオル、ゴーレムが地雷原に入ったわ」

よし、来た! 対戦車地雷をふんだんに使って造り上げた地雷原だが、普通の地雷原と言うよりは、トラップと言った方が近い。

第一段階は地下空洞の支柱を爆破し、落とし穴に落っことす。第二段階で地下に大量に設置した地雷と爆薬を爆破。デイジーカッターからトマホークの弾頭やミズーリの砲弾まで流用し、穴で指向性を与えられた爆発力は、地下から罠に掛かった獲物ごと地面全体が盛り上がるほどの爆発をしてくれる…はず。

「ヘリ部隊、一時退避。……よし、爆破!!」

ズドォォォーーーーーン!!!!

うお!? 揺れた! ここまで振動が伝わって来る程の爆発。これで動いていたら心が挫けるぜ。

爆発で生じたキノコ雲。これ、どんだけで収まるんだろ?さてさて、

……挫けた。中型ゴーレムは木っ端微塵になっているってのに、あの大型、どれだけ強度あるんだよ!?

畜生。心の中だけorzだ。流石に現実ではやりませんけど。

「トオル……」

そんな不安そうな顔をしないで下さい。俺が一番泣きたいんだから。

「…全隊員を空母に集結させろ。最悪、砦の破棄も視野に入れる」

「でも!?」

「どの道、人間の扱う武器じゃ、兵器を上回る戦果は期待出来ない。砦はまた造れば良い。だが、これだけの討伐軍を再編するのは容易じゃない。心配するな。当然、撤退と言うのも最悪の事態を想定した場合だ」

「…分かった。そうだね。生きてさえ居ればどうにでもなるよね」

「ああ」

指揮所の重苦しい雰囲気は少しは軽くなった。そこに複数の緊急連絡。

『こちら航空指揮所! JAS-39とC-130、CH-47が爆弾を積めるだけ積んで発進しようとしています! と言うか既に発進を始めています! 送れ!』

『こちら、カール・ヴィンソン! 補給を済ましたF/A-18EとCH-47が勝手に発進を! 送れ!』

え?ちょっと待って。精霊には別名あるまで待機って言っておいた筈だが?

慌てて、指揮所を飛び出して高機動車を捕まえる。精霊は基本的にリンクしていて、現代兵器としてのデータ共有は無理だが、精霊としての意思は共有できる。

「おい! アイツら、何をしているんだ!?」

『ユウシャ、コノ砦、苦労シテ造ッタ。僕タチモ楽シカッタ。歴代ノユウシャ、僕タチニ見向キモシナカッタ。僕タチト向キ合ッタノ、ユウシャガ初メテ。ユウシャノ為ナラ、何デモ出来ル』

「お前ら……」

確かに万策尽きた。後は、あのトラップを抜けた相手に命中の期待出来ない艦砲射撃や、戦車砲や自走砲で勝負を挑まなくちゃならない。

俺の所為か?俺の力量不足で、コイツ等にカミカゼ染みた事をさせなくちゃいけなくなったのか?

『精霊、死ナナイ。呼バレレバ、マタ来ル。ダカラ、皆、“サヨナラ”ジャナクテ、“マタネ”ッテ言ッテル』

「…ああ。“さよなら”じゃない。“またね”だ。次はもっと強い依代(からだ)を用意して置くって言っておいてくれ」

「分カッタ、分カッタ。……ユウシャ、泣イテルノ?」

「いや、別れは笑顔で。愛と勇気の御伽話でも、そう言ってたからな。それに今生の別れじゃない」

素人の猿真似だが、飛んで行く機体を敬礼しながら見送る。

周囲の騎士や兵士も事情を察したのだろう。それぞれ、捧げ剣を行って見送った。

十五分後、森林部の入り口に先のトラップを上回るクレーターが出来た。

どうやら、大型ゴーレムは一度に大量の爆発を受けるより、断続的な、回復速度を上回る爆発に弱かったらしい。

もっと早く気が付けば、あいつらにカミカゼなんてやらせなくて済んだのだろうか?…いや、止そう。所詮はIFの話だ。

取り敢えず、要塞の強化から進めるか。もう二度と、俺の力不足の尻拭いを精霊にさせないためにも。

討伐軍は歴代勇者でも苦戦を強いられたゴーレムに勝利を収めた。でも、それは大きな犠牲と引き換えに掴み取った、とっても苦い勝利だった。



[18458] 閑話3 自重を止めた勇者
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/22 09:22
さて、皆さんこんにちは。先日ゴーレム相手に大苦戦した北条透です。

どうやら少しばかり自然環境に遠慮して自重しすぎたようです。

しか~し!もうそんなのは過去の話です。

そもそも滑走路を要塞の中に入れようとするから全長1kmなんて野戦飛行場サイズになってしまった訳です。

今、討伐軍は要塞から160kmほどマケドニア側に滑走路を建造中です。

先の作戦で投入したデイジーカッターを本来の用途で使っています。

C-130から次々と投下され、地上の木々を薙ぎ倒します。

ヘリで降下した俺はそのまま要塞の建築にも使った施設科車両を呼び出して、土の魔法使いと共に仕事を開始してもらいます。

それにしても、密林を切り開くのが速いこと速いこと。

日本帝国軍が見たら目を丸くすること請負です。

今回作るのは大型機でも運用可能な3kmクラスの滑走路を3本です。

面積が小さくても良いように三角形の各辺が飛び出した形にします。

中央部にはここに俺が常駐出来ないので大量の武器弾薬庫とハンガーを造りましょう。

外周は防壁と空堀で覆い、防壁は強度を高くして、上に87式自走高射機関砲と35mm連装高射機関砲を備えます。

人間が殆ど居ないんで、その分を機甲戦力で補うしかないですし。

俺と魔法使い達は泊り込みです。トラックの荷台に寝袋敷いてそのまま寝ています。

体には悪いでしょうが、まぁ、気にしない。全ては、討伐軍は強いの為に(某ビールのCM風)。

飛行場の建設は順調に進んでいます。

要塞としても、戦艦の援護こそないですが、完成度はこちらの方が高いんじゃ無いだろうか?

まぁ、あちらの方が使い勝手が良いので移りませんけど。

こっち、全周防御をするには防衛線が長すぎます。

それにしても、直径5kmの円状の空間を切り開いたんで20k㎡もの面積が破壊されました。本当に環境に悪いな。

飛行場のモデルにしたミッドウェーのサンド島でも面積6.2 k㎡しか無いっていうのに。

でも、防衛線を考えると広めに空間を開ける必要がありますからね。

森林にぽっかりと開いた空間。正しく陸の孤島です。

うん、ここはサンドトウ飛行場と名付けましょう。極西の飛行隊です。F-5EもF-4Gも居ませんし、位置的には極北ですが。

自重を止めた航空戦力もえらいことになってます。

まずは、戦術機部門から。

近接航空支援としてA-10サンダーボルトⅡ。

無駄に巨大な30mmガトリングガンを機体中央部に備えるため、前輪は右側に寄せられるほどです。戦車の上部装甲すら貫通可能で、装甲車なら正面装甲も貫通できます。搭載できる爆弾も多種ですが、基本的に低高度を飛ぶ機体なんで、誘導爆弾の類は積みません。無誘導爆弾か誘導弾を搭載します。最高速度は音速に届きませんが、その分、滞空時間が長く、近距離での航空支援には最適な機体です。

遠距離での航空支援にF-15Eストライクイーグル。

戦後4.5世代機に分類され、4.5世代機の中では設計が最も古いのでステルスとか全く考慮されていないですが、そんなの俺には関係ないです。M2.5という最高速度と、戦闘機の中ではトップクラスの搭載量、長大な航続距離、良好な運動性能。遠距離まで高速で駆けつけて爆弾をたらふくばら撒いてくれる頼もしい機体です。

戦略機部門。最近は戦術爆撃にしか使われない戦略爆撃機、B-1ランサー。

元々は敵領内に低空を超音速で侵入し爆撃、という機体だったのですが、最近はA-10なんかと同じような扱い。最大で34tもの爆装が可能な大型爆撃機。無差別爆撃が行なわれなくなったのでその爆弾搭載量が活かしきれていない一面も。爆撃機としては珍しく、可変翼やアフターバーナーを搭載していたりします。

世界最大最重の実用機、An-225ムリーヤ。

分類は輸送機でペイロードは安全値で250t。実際は300tはいけるらしい。ソ連版スペースシャトルを胴体上部に括り付けての空輸も可能。鈍重な外見を裏切り、非常に高機動だとか。愛と勇気の御伽話でも多数出演している。

分類が輸送機だし、空爆は出来ないし、ここにしか降りられないから呼び出す意味も無いんだけど、ノリで呼び出してしまった。反省はしているが、後悔はしていない。…いいじゃん! 男の子は最大とか最強とかいう単語に弱いんだよ! しかも、今年の二月に来日したし。見たかったなー。

基地防衛用にAH-64Dも呼び出して、地対艦ミサイル、自走砲、戦車。これで負ける訳が無い。

要塞とはC-130とC-17、CH-47で定期便ですよ。下手に車列組むより効率良いし。何より、C-17を使えばサンドトウ飛行場の車両の補給を要塞に居ながらできるっていうのが良いですね。

ふ、ふふ、ふふふふ、ふもっふ、ふもるる、ふんもっふ。

現代兵器は自重を止めればここまで出来るんじゃーー!!

ガ○ダムがなんじゃい! 対戦車の鬼、A-10の前にはただの的だ!

ミノ○スキー粒子の無いモ○ル・スーツが地上で活躍できる訳が無いだろーが!

硬いだけが取得の二足歩行が偉そうにすんな!

まぁ、もうゴーレムは出ないらしいんだけどね。

一度倒した相手は次代勇者になるまで出ないそーな。

それにしても、モンスター図鑑厚すぎるべ。

これ全部に目を通すとか、これ何て受験勉強?

空を飛べる奴も少し居るし。表面が無茶苦茶硬い奴も居るし。地中から来る奴も居るし。……最後の滅茶苦茶脅威度高いじゃん。

で、一週間後。サンドトウ飛行場稼働。

……早すぎね? 滑走路三本の本格飛行場が一週間で稼働とか良いのか?

そら、確かに百人単位の魔法使いとか、ずっと召喚し続けて、最終的には師団単位の施設科車両、とか大人気なくしまくったけど、普通、この規模の工事には数年とか掛かるものですよ?まぁ、早く出来る分には良いか。

現在、魔王討伐軍所有戦力

F/A-18E 空母カール・ヴィンソン常駐24機

JAS-39 要塞飛行場常駐12機

F-15E サンドトウ飛行場常駐108機

片羽の赤いF-15C サンドトウ飛行場常駐1機

黒い機体に赤い尾翼のF-14A 空母カール・ヴィンソン常駐4機

A-10 サンドトウ飛行場常駐36機

B-1 サンドトウ飛行場常駐12機

C-130 要塞飛行場常駐4機、サンドトウ飛行場常駐12機、マケドニア首都滑走路常駐2機

C-17 要塞飛行場常駐2機、サンドトウ飛行場常駐4機

An-225 サンドトウ飛行場常駐1機

AH-64D 要塞ヘリポート常駐12機、サンドトウ飛行場常駐36機

UH-60 要塞ヘリポート常駐2機、空母カール・ヴィンソン常駐2機、サンドトウ飛行場4機

SH-60 空母カール・ヴィンソン常駐2機

CH-47 要塞ヘリポート常駐4機、空母カール・ヴィンソン常駐2機、サンドトウ飛行場常駐12機

90式戦車 要塞108台、サンドトウ飛行場324台

89式戦闘装甲車 要塞36台、サンドトウ飛行場108台

99式155mm自走榴弾砲 要塞324台、サンドトウ飛行場972台

87式自走高射機関砲 要塞36台、サンドトウ飛行場防壁上固定12台、通常36台

88式地対艦誘導弾 要塞16台96発、サンドトウ飛行場32台192発

35mm連装高射機関砲L-90 サンドトウ飛行場城防壁上、360基

12.7mmM2重機関銃 要塞城壁上、サンドトウ飛行場防壁上。車輪装備の銃座ごと移動可能。普段は格納。

その他は必要に応じて召喚。例を挙げればAH-1は有線誘導のTOWを使いたかっただけなので常駐はしていない。

やたらと航空機や車両の数が多いが、主人公が毎回召喚するのも面倒なので予備も含んだ数字。

飛行場は、ゴーレム相手に撤退寸前まで追い込まれた反省から建設された。直接防御力も高く、要塞を破棄する場合はここが一時避難所。

航空戦力は要塞と飛行場で共有可能なのでノーカン。

直接戦闘力にすると、相手が軽機関銃以下の通じない場合なら最初から重武装の飛行場が有利。

飛行場は防壁上に戦車を除く車両も上がることができる。対空射撃用の自走高射機関砲は約440m間隔で配備される。

連装高射機関砲は有人操作。防衛戦の時は要塞から人手を回さないと使用不可。

要塞を放棄してこちらに立て篭もった場合を想定した装備。運用方法としては要塞の重機関銃を機関砲に昇華させただけ。

複雑なレーダー関係は使用できず、目視照準のみ。連装高射機関砲は約44m間隔で配備されている。

まぁ、飛行場はこんな感じで良いベ。

次は第一次防衛線の強化ですよ。ここは基本的に無人での迎撃を前提として装備を組みます。

前回のゴーレム侵攻で使ってしまった落とし穴ももう一回造り直します。ただし、爆薬の量は前回の二倍ですけど。

第一次防衛線も高さ20mの防壁を張り巡らします。

ここに大量の96式多目的誘導弾を高機動車ごと設置。ミサイルは赤外線映像を本体に転送。その映像を元に誘導するので周囲と温度差を持たない敵には誘導し難いですが、その辺は精霊が何とかしてくれるでしょう。

『任セテ、任セテ』

任せました。敵が来るまでこんな所に押し込めてご免な。

『気ニシナイ、気ニシナイ』

本当に良い子達です。

これは最初から車両搭載を前提としたミサイルなので舟艇や戦車の正面装甲も貫通可能との事です。

便利な世の中になりました。ここから要塞までは凡そ50km。

ここまで侵攻されると言うことは、要塞は直そこです。要塞の直接防御力向上にも取り込んでいますが、正直、現代兵器は強力な物は殆どが長射程です。

数で押された場合以外に要塞まで到達されると言うことは事実上の敗北でしょう。

そう言った意味ではここが最終防衛ラインと言っても過言では無いです。

お、上空をF-15Eの編隊がフライパスして行きます。

精霊たちから新しい依代(からだ)に慣れたいという頼みだったので試験飛行を許可しましたが、…どう見ても遊んでいます。

だって、F-15Eでブルーインパルス並の密集隊形で曲芸飛行とか自分の目を疑います。しかも、

ドォォーーーン!!(ソニックブーム)

……超音速で。

正直、正気の沙汰とは思えないですね。アグレッサー(教導隊)でも出来ないでしょう。っつーか、人間には不可能でしょう。

あれだけ密集して超音速。流体力学とかどうなってるんだと突っ込みたいです。

機体の情報を五感を経由せずに把握できる精霊ならではですね。

つーか、超音速でホイホイ飛ぶな、耳が痛いです。

『皆、楽シンデル、楽シンデル』

高機動車に憑依した精霊も何だか楽しそうです。でも、ご免ね。あっちは空を超音速なのに、こっちは地上で待ち伏せで。

『セイレイ、皆、繋ガッテル。問題ナイ。ボクモ、感覚、共有シテル』

…便利ですね、精霊って。

ドォォーーーン!!

今度は何ですか?

シュワァァーーーン!!

上空をF-15E以上の密集隊形を組んだF/A-18EとJAS-39がパスしていきます。

…お前らは機体の慣らし必要ないでしょうが。

ドォォーーーン!!

今度は何なの?

上空をパスしていくB-1。

…あの大型機が超音速で密集隊形は途轍もなく凄いんですが、お前ら、確か超音速は制限速度ギリの筈だよな? 機体に無理させてんのか?

B-1は、要塞滑走路じゃ離着陸できないから機体交換の時には俺が、サンドトウ飛行場まで出向くんだが?

グォォーーー!!

…亜音速組まで参戦してきましたか。A-10にC-130、C-17、An-225。

An-225を中心に上下左右に立体的な密集隊形を組んでいます。

ホント、無駄に才能を使ってますね。大型の異機種編隊で密集隊形なんて難易度滅茶苦茶高いでしょうに。

バタバタバタバタ!

締めはヘリですか、そうですか。機体の交換作業が面倒な事になりそうですが、良い物が見られたと納得しておく事にしましょう。こんなアクロバット、現実世界じゃまず見られないですからね。

要塞に帰ると皆、浮かれていました。傍目にでも凄いのは分かりますからね。

でも、あのアクロバットがどれだけ非常識だったか理解しているのは俺だけです。

あのアクロバットを人間が行えば成功まで何人のパイロットを殺す羽目になることやら。そもそも成功できるのか否かも微妙ですね。

『ユウシャ、ゴメンネ、ゴメンネ。ハシャギ過ギタ』

その日の内に全滑走路とヘリポートを回って黙々と機体の再召喚を行う俺に精霊がはしゃぎ過ぎたと謝りましたが、良いものを見られたのでチャラですよ。



[18458] 第8話 ジ○リ襲来
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/22 09:29
さて、皆さんこんにちは。サンドトウ飛行場が本格稼働に入って怖いもの無しの北条透です。

今日は、非番なんで湖畔から糸を垂らして釣をしています。

この湖の鱒は中々に美味なので重宝します。…ブラックバスみたいな奴の方がかかる確率高いですが。

『ユウシャ、ユウシャ。JAS-39カラ連絡。敵襲、敵襲』

隣の高機動車が教えてくれる。…人が良い気分で釣をしながら読書しているのに本当に空気を読みませんね。

例によって即座に写真撮影を行って帰還したJAS-39。その写真には信じたくない物が写っていました。

「これ、オ○ム?」

風の谷の物語に出てくる森の王者さまです。

「ワームね。外殻がとても硬くて、しかも群で襲ってくるから脅威度はとても高いわよ」

ワーム(ミミズ)?どうみてもダンゴ虫でしょうが。全長80mの甲殻類が群で襲ってくるとか悪夢ですね。

しかも、確かあれの外殻はセラミック鋼より硬いとか言っていたが。

原作の戦車砲がどれ程の威力だったのかは知らないが、オ○ムには全く利かなかったようだし。

「今まではどう対処を?」

「正面突破」

「…正面突破? 弱点は?」

「…記載には無いわね。強いて言うなら腹部の防御が弱いらしいわ。今までは正面突破で何とかなっていたらしいし。そもそも守勢に回っている今回が異例な訳だし」

「……チート勇者共が。…俺はサンドトウ飛行場に移る。ジャスティン、指揮任せた。総員第一種戦闘配置。ミズーリ全兵装開け、地対艦誘導弾発射準備。要塞ゲート開け、90式戦車、99式自走砲を第一次防衛線まで押し上げろ。全航空戦力発進準備」

「「「了解」」」

直にグリペンに乗ってサンドトウ飛行場に。

ぐっ!? 流石は戦闘機。発進だけでも結構なGが掛かるな。

B-1を連続召喚。爆弾満載で。

巨○兵のビームで軒並み吹き飛ばしてもまだ残る物量。愛と勇気の御伽話も真っ青だ。

飛行場では既に発進態勢を整えていた。こちらと入れ替わる形で発進を始める。俺はJAS-39から降りると即座に召喚を始める。

爆弾満載のB-1よ来れ。34tの火薬と鋼鉄を降らせてやれ。A-10よ、東側戦車の物量に対抗する為に造られたその能力、見せてみろ。

次々と召喚されて、発進していく爆撃機と攻撃機。頼むぞ。前回の二の舞はご免だぞ。

上空ではF-15EとF/A-18E、JAS-39が細長いヘ○ケラとか言うムカデが空を飛びました的な蟲とウ○アブとか言うハエみたいな奴と空中戦を繰り広げている。

まぁ、空中戦はこっちの圧勝ですけど。数もオ○ムほど多くないですし。機動性もこっちが上ですし。20mm機関砲が利く相手で良かったよ。

で、地上部だが……駄目だ。爆発地点に居る奴は大抵吹き飛ぶが、通常爆弾じゃ効果薄だな。

デイジーカッターの使用を許可するか。物量には大量破壊兵器。それがこの世の真理です。

目を真っ赤にしてひたすらに向かってくるオ○ム。

…人類はコイツ等を怒らせたのだろうか。オ○ムの怒りは大地の怒りらしいが、飛行場建設とかやり過ぎたか?

まぁ、良い。文明と自然は相反するものだからな。

現代兵器を司る者として避けては通れぬ道なのだよ。それに、似ているだけで別物だしな。

荒野の方から大量のキノコ雲が。無誘導爆弾とデイジーカッターが次々に投下される。

まぁ、最終兵器はトラップだがな。先の反省から大きく強化した落とし穴だけど、それでもあの数を倒せる自信は無いな。

連続で投下される爆弾と爆ぜる大地。

この大威力、この爆発力こそ現代兵器よ。

それにしても、これだけの火薬と鋼鉄を降らせて殲滅出来ないとはファンタジー恐るべし。2000ポンド爆弾やトマホークを降らせれば半径500mは加害半径だ。

デイジーカッターを降らせればそれがkm単位に広がる。…なのに、何で殲滅出来ない!? 召喚を続けまくって今では百機単位の爆撃機が飛び回ってるんだぞ!?

それはね、数多くのファンタジー作品で現代兵器はファンタジーより下位に置かれているからその因果律が流入してるんだよっ。

ナレーションウゼー! ああ、そうだな、そうだよな。結局、風の谷の物語じゃオ○ムとか倒せなかったよな! ゴ○ラ相手に勝てた通常兵器は居ないし、G兵器でも勝てたのは極少数だ! ウ○トラマンとか、エヴ○ンゲリオンとか、F○TE-ZEROとか、愛と勇気の御伽話でも大苦戦だったよな! でも、も○のけ姫とか頑張ったじゃん! ファンタジーに人類の英知で善戦したじゃん!

でも、結局はシ○神が首なしデイダラボッチになった途端に負けたし。

ほっとけ!! だぁ~、B-1、連続召喚。C-130、デイジーカッターをばら撒いて来い! あの質量で押されたら第一次防衛線は保たないぞ!

『勇者殿! 地対艦誘導弾、発射始めました』

「うし、慣性誘導で荒野に向けさせろ! 荒野に着弾すれば何処だろうと敵に当たる!」

『了解!』

とは言え、百発に満たない対艦ミサイルじゃ大した影響にはならないだろうな。

『敵勢力、残存29%。あと少しです。頑張ってください』

まだ三割弱も残ってるんかい。何機の爆撃機召喚したと思ってるんだ。心が挫けるぞ。でも、巨○兵とか出てこない分、マシなのか?

『目標、トラップエリアに入りました』

「被害が最大化するタイミングで起爆しろ。起爆はそっちに任せる」

『了解』

俺にも映像は入って来ている。モニター、小型だけど。

お、起爆した。残存三割の内、二割は罠を超えたか。と言うより、見逃したか。でも、残りは殆ど吹き飛んだか。ジャスティンも中々タイミングが判ってきたな。

新しい罠は荒野方向に傾斜を持たせて、吹き飛んだ敵が後続の上に落ちるようになっている。

デイジーカッターや各種爆弾を大量に使ったトラップの爆発力は以前の2倍。今頃砦は結構な地震に見舞われているだろうな。

『自走榴弾砲、発射開始します』

直撃すれば対象を無力化できる。でも至近弾では怯ませる位か。威力自体は500ポンド爆弾にも劣る。

『残存戦力に向けて多目的誘導弾、発射開始します』

戦車の正面装甲も破壊可能な多目的誘導弾。いくら巨大とはいえ、生物であるオ○ムが耐えられる訳が無い。しかも、これは器用に誘導できるのだ。

確実に個体個体に誘導できる。一体に念を込めて三発の誘導弾を叩き込む。

着弾を受けて次々とオ○ムが各坐していく。

『戦車部隊、砲撃開始』

120mm滑腔砲がタングステンの装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)を次々と発射する。

ダーツの矢を火薬で飛ばすという表現が似合うこの砲弾は、砲口から発射と同時に加速を得るための装弾筒を分離させ、弾芯が音速の4倍で飛び出し、従来の徹甲弾とは比較に出来ない貫通力を誇る。

反面、破壊力は全て運動エネルギーに頼るので、装甲貫通後に爆発する従来の徹甲弾に比べれば劣る。

正直、巨大生物相手に効果は未知数だ。とは言え、今となっては貫通後に爆発する大砲用の徹甲弾なんて無くなってしまったが。

滑腔砲を受けたオ○ムはやはり、一撃では死なない。複数弾を受けてようやく倒れる。駄目だ、押し切られる。

ダガァァーーーン!!

防壁に次々と体当たりするオ○ム。だが、戦車も自走砲も高機動車も撤退済みだ。

「…最終トラップ発動」

『判ったわ』

防壁の中に仕込んだ大量の指向性爆薬が爆発する。

爆発に指向性を与えるのは意外と簡単だ。手榴弾を和式便器に放り込めばそれだけで爆発は指向性を持つ。

今回は防壁をコの字に鉄筋コンクリート。開いてる部分はただのレンガ。爆発はレンガを吹き飛ばしてそちらに向かう。

防壁に辿り着いたオ○ムも結局、完膚なきまでに吹き飛ばされた。

な、長かった。心が挫けるかと思った。

『ユウシャ、第二派、第二派!』

うそ~ん!? orz

「OH(偵察ヘリ)の情報、こっちに回して…」

そして、画面に映ったのは…。

「ロボット?」

正式名称は無いが、城が空に浮ぶ物語でロボットと呼ばれていたビーム装備の二つ目のロボットだった。しかも、その後ろには飛行戦艦が続いている。

「冗談だろ…。飛行戦艦は置いとくとして。あれ、確かセラミックで出来てた筈だぞ。成型炸薬弾とAPFSDSの天敵じゃねぇか」

複数の素材を重ねて防御力に優れる複合装甲だが、その中で成型炸薬弾やAPFSDSに対抗するために使用されるのがセラミックである。

正確には金属ではなく、陶磁器なので、科学力が劣れば金属か粘土か理解出来ないのも頷ける。

瞬間的な衝撃には強いが、何分、割れ易い。だから、低初速の攻撃は有効なのだが…。

「現代兵器で低初速……。移動目標に命中させる精度が必要…。しかし、重機関銃レベルでは耐えられてしまう…。……A-10に30mmで攻撃させるか? よし、それで行こう。AH-64Dも居るし何とかなる! …多分」

『トオル、聞きましたか?』

「新手だろ? でかいのは戦闘機を対艦兵装で発進させろ。小さいのはAH-64Dにロケット弾を積んで発進させろ。こっちからはA-10を出す。対戦車弾は積むだけ無駄だから積むなよ」

『対戦車弾が? 何故?』

「あれの装甲は対戦車弾に対抗する目的で使われる物だ。効果は期待出来ない」

『了解』

はぁ、それにしても、ロボットはともかく、戦艦はこちら(科学の)側じゃ無いのかよ?魔物図鑑確認……ロボット、愛称なし、カテゴリーは無機物兵士。飛行戦艦、愛称はゴリ○テ、カテゴリーはロボット母艦。…って、あれが母艦なのかよ!?

オ○ムが砲戦距離まで近付いたので航空機が帰還していた要塞では補給を急いでいる。

サンドトウ飛行場では新たに装備満載で召喚した方が早い。次々とA-10を召喚する。

あのロボットの機動性は不明だが、亜人型である以上、そこまで高くは無いはずだ。A-10やAH-64Dでも勝てるだろう。

F-15E、F/A-18E、JAS-39は対艦兵装で飛行戦艦に向かう。あの飛行戦艦の対空装備は明らかに超音速に対応していない。

でも、下方への艦砲を持つので要塞に到達させると厄介だ。流石に要塞でも航空攻撃には対応していない。

次々とロボットを吐き出すゴリ○テ。全く、どうなっているんだか。

「航空部隊、母艦を最優先で叩け! これ以上の発艦を許すな!」

百機を超える戦闘機から放たれる二百発を超える対艦誘導弾。迎撃も回避も出来ずに着弾する誘導弾。

元々、軽量化の為に装甲など高が知れている飛行戦艦。誘導弾は装甲車にも劣る装甲を次々と破り艦内で爆発する。

黒煙を上げて傾くゴリ○テ。今度は次々と上空に舞い上がり、急降下染みた動きで爆弾を投下する。

そして、対地下用に信管をきつく設定した爆弾は艦内に侵入して爆発する。

ゴリ○テは見事に二つに割れて爆発炎上した。そのまま、ゆっくりと地上に落下していく。

…呆気無かったな。武装と装甲の設定は原作遵守なのか? それにしても、軍艦が、あれだけ派手に燃えるって、色々問題あるんじゃないか?

一方のロボット戦は熾烈を極めていた。ロボットは30mm機関砲やロケット弾を受ければ破壊される。しかし、ロボットのビーム砲も直撃すればAH-64DやA-10を破壊する。しかし、どうやら数の多いこちらが優勢のようだ。

飛行戦艦を撃破した戦闘機隊もロボット駆逐に動き出す。しかし、戦闘機は飛行速度が速く、機銃を用いた対地攻撃には向かない。

それでも毎分6000発の連射速度で20mm弾を発射するのだから一瞬の射線が取れれば敵を蜂の巣に出来る。

空に浮ぶ城の敵は何とか撃破できた。でも、複合装甲じゃなくて良かった。これにチタンや鋼鉄まで使われてたら、俺マジ泣きだったよ。

『ユウシャ、第三派、第三派!』

もう、泣いて良いですか?orz

『トオル、orzしていないで、早く指示をください!』

うお!? ジャスティン、何故に俺がorzってるのが判った!?

『トオルは単純ですから。それより早く次の指示を』

え~と。……ト○ロじゃん。こいつ戦闘能力あんの? 魔物図鑑…、森の精霊、愛称ト○ロ、所構わず木を生やして森にしてしまう。あ~、基地を持つ俺との相性最悪だな。

『トオル、指示を』

「…え~と、とりあえず、レーザー誘導で下の独楽だけ吹き飛ばしてください」

『コマ?』

「あのくるくる回ってるヤツ」

『了解』

ト○ロは独楽を吹き飛ばされるとそそくさと逃げていきました。

「………」

『………』

どんなリアクションを取れば良いんだろうか?

『ユウシャ、第四派、第四派!』

次の敵がモニターに映し出される。

「お~い?」

魔物図鑑、B-29、愛称スーパーフォートレス、爆弾を落とす、近づくと機銃で撃って来る。……これ、魔物?

次に出てきたのは皆さんご存知、B-29。米空軍の戦略爆撃機である。

レシプロエンジンのプロペラ稼動機としては頂点を極めたと言っても過言ではない機体である。

しかし、それは1940年代の話。当然ながらミサイルに対する装備など持っているはずが無く、

「まだ残弾が残っている機体に攻撃させて」

あっと言う間に全機撃墜された。

『ユウシャ、第五派、第五派!』

次は、何だこれ? 飛行船? 武装を積んでいるようには見えないが?

いや、何かぶら下げてる。これは…パトカー?

魔物図鑑、飛行船、愛称無し、敵の上でパトカーを降らす。……良く分からんが、近寄るな。

『トオル、どうしましょうか?』

「俺が聞きたい。…OH、人は乗っているのか?」

『ムジン、ムジン』

「なら墜としてくれ。機銃弾で、あの胴体を狙えば良いから」

『了解』

あ、そう言えば、ゴリ○テに人が乗っているか確認するの忘れてた。

…まぁ、大丈夫だろ。それにあっちは飛行戦艦、軍艦だし。

次に出てくるのは何だい!?

『ユウシャ、第六派、第六派!』

そーか、そーか。次は水上戦闘機(戦闘艇)に飛行艇か。紅いヤツとか、青いヤツとか、でっかいヤツとか居るが、知ったことかい。

魔物図鑑、戦闘艇、愛称色々、機銃で攻撃してくる。……性能はオリジナルと一緒。さよですか。

「AH-64D、人は?」

『居ナイ、居ナイ。ア、撃タレタ。イタ、イタタタ』

「気にするな。お前の装甲を貫ける装備は無い。反撃しろ」

『リョウカイ、リョウカイ』

戦闘機が出るまでも無かったな。戦間期の機体じゃ、ヘリにも勝てないよ。

それにしても、30mm弾、エンジン部以外は反対側まで貫通してるし。対装甲用の砲弾じゃ、信管が作動すらしないか。

『ユウシャ、第七派、第七派!』

はいはい、次は何ですか?

「……お化け? 百鬼夜行か?」

『トオル、あれは?』

「…OH、熱源反応とレーダー反応は?」

『ナイ、ナイ。何モ、映ラナイ。映ッテルノ、可視光線ダケ。デモ、りあるたいむデシカ映ラナイ』

「録画出来ないって事か」

『ウン、ソウ』

『トオル…』

魔物図鑑、狸の化学、愛称妖怪大作戦、特に害は無し。……どうせよと?

「生憎と実体を持たない物には攻撃出来ない。魔法で対処は?」

『無理ね』

「じゃあ、ほっとこう」

これは結局、第一次防衛線に到達する前に消えたけどね。

『ユウシャ、第八派、第八派』

で、次は何?

プギィィーー、プギィィーー!

魔物図鑑、猪、愛称ヌシ、猪突猛進に注意。

…猪ですか、そうですか。でも、ご免な。種子島以前の鉄砲に敗北するお前等が、現代兵器に挑むなんて千年遅いわ! 千年前に遡って出直して来い!

ここから先は一方的な虐殺なので割愛。何か、明らかに最初の方が苦戦したぞ。


今回の襲撃を何とか凌いだ俺はヘリに乗って要塞に帰ってきた。

俺だけ疲れているが、兵器補給を担当した兵以外は元気なものである。

最近、敵が強大化してきたこともあって、歩兵の出る幕が無くなって来たな。

「トオル、お疲れ様です」

「お疲れ~。本気で疲れたぞ」

「それにしても、荒野がえらい事になったわね」

「ああ。戦場処理が大変だ。ったく、どうしてゲームみたいにやられたら消えないかな~」

「トオル、現実と創作の混合は危険だわ」

「それを、異世界の住人である貴女がいいますかねぇ!?」

「で、あの戦場、どうするの?」

「…とりあえず、全域をナパームで焼き払って、穴掘って埋める」

そう、俺の仕事はまだ終らんのですよ。結局、カール・ヴィンソンからF-4にナパームくっ付けて発進させて戦場全て焼き払いましたよ。

え、何でF-4かって?ナパームつったらF-4でしょ、拘りです。

でも、オ○ムとか、どないせえっつーの。重すぎるでしょ。小型の軍艦が丘に上がったくらいあるよ? しかも、数多すぎ!

「………これは放置! こんなの一々処理してたら年が変わる!」

結局、谷と砦間の荒野はオ○ムの墓場と化しましたとさ。

対艦ミサイルの射程内だけは土の魔法使いに頼んで地下に落としてもらいましたけど。皆、げっそりでしたよ。

範囲を限定しても洒落にならん数でしたからね。余りの異臭に作業はガスマスク着用で行いましたよ。あ~、酷い目に遭った。


補足:何作品か足りなかったり、最新のが無かったりしますが、作者が見てなかったり、内容を忘れたり、どんな敵を出せば良いのか判らなかっただけなのでお気になさらず。



[18458] 閑話4 第一次防衛線修復&強化
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/23 16:43
さて、皆さんこんにちは。先のジ○リ襲来を何とか乗り越えた北条透です。

第一次防衛線は切り札の内蔵地雷を使っちゃったので半壊状態です。

空爆で終らせる心算だったのに、オ○ム恐るべし。


で、旧第一次防衛線は第二次防衛線となり、再び製作中です。

今回は凄いですよ。見た目が万里の長城なのは変わりませんが、内部に空間を設けて戦車が複数配備できるようにしました。

も○ののけ姫の踏鞴場みたいに防壁中腹からの発砲が可能になったわけですね。

で、最上部には多目的誘導弾と155㎜自走榴弾砲とMLRSに陣取ってもらいます。この程度じゃ、オ○ムクラスの敵にはしんどいんですけどね。

防壁の高さは約40m。

その手前に20mの最終トラップ内蔵の攻性防壁を設置しました。これははっきり言って爆薬の塊です。

TNT(高性能爆薬)やダイナマイト、C4(プラスチック爆弾)といった爆薬を可能な限り指向性を持たせて仕込んでいます。

どれもこれも衝撃に強い爆薬なので、こちらの指示以外で誤爆することは有り得ませんし。

全部爆発したら結構凄い事になりますね。まぁ、デイジーカッターには劣りますが、あっちは爆風の大部分が上を向きますが、こちらは横を向いています。その分、与える損害も大きい…筈。

それにしても、この半ば自爆装置、先の第一次防衛線に仕込んだのは念には念を込めた以外の何物でもなかったのに、いつの間にやら、正規装備になっちゃいましたね。

それにしても、現代兵器は巨大生物との戦いを想定していないと思い知らされます。


そうそう、戦車を増やしました。

今までは120mm滑腔砲搭載の90式戦車だけでしたが、62口径105mmライフル砲を搭載するスウェーデンの戦後第二世代戦車、Strv.103に登場してもらいます。

砲を直接車体に固定した駆逐戦車みたいな戦車ですね。

何で態々、こんな戦車を呼んだかと言うと、粘着榴弾(HESH)の使用をしたいからなんですよね。

120mm滑腔砲に比べて長射程で、榴弾よりは直撃時の効果に勝る。

まぁ、相手が甲殻類じゃなきゃ余り意味が無いですけど。

この砲弾は着弾後に装甲に粘土みたいに張り付いて起爆。装甲の裏側の剥離を引き起こして、それで内部を破壊するんですが、これ、甲殻類にも応用できそうなんですよね。

剥離が引き起こせなくても、甲殻に爆薬が張り付いた状態で爆発されて無事で済む生き物が居るとは思えませんし。何より命中性が高いのが良いですね。同じFCSを積むなら、ライフル砲は滑腔砲に命中精度で勝ります。

そして、最終型のStrv.103Cはそこそこ優秀なFCSを積んでるんですよね。精霊が何とかしてくれるにしても、下地は大切です。

それに、砲は西側戦後第二世代の標準装備、51口径105mmライフル砲を長砲身にしたモデルです。

この砲は優秀で、米国のM1や韓国のK1といった戦後第三世代にも最初はこの砲が搭載されていました。

現在でも発展途上国では普通に現役ですね。日本でも富士を除いた本州や九州には本砲装備の74式戦車しか配備されていないですし。

それに、99式155mm自走榴弾砲に比べれば直射に効果的なんですよね。あっちは長射程の曲射を目的としていますし。

ただ、砲が車体に固定されているので照準には車体ごと動かさないといけません。

この戦車が配備されるのは攻性防壁の上です。最終トラップが発動しても影響は無いですが、発動するときは退避してもらいます。

普通の戦車が良かったんですが、自動装填装置の装備されている戦車の少ないこと少ないこと。ライフル砲を積んだ第二世代ではこいつだけではないでしょうか。

先の作戦で再び使った落とし穴ですが、今回は合計で五つの落とし穴から構成されます。

しかし、内蔵する爆薬量はそれぞれ違って、一つ目は普通に対戦車地雷が埋まっている程度ですが、二つ目から四つ目は2000ポンド爆弾やトマホーク弾頭を含む大量の爆薬が埋まっています。そして、五つ目はデイジーカッターを含むトン単位の爆薬が埋まっています。

これはかなり第二次防衛線から離されて、航空攻撃の限界点でもあるここを第一次防衛線にしました。距離的には空爆と第二次防衛線からの砲撃との合間の空間に設置しています。

この外側はオ○ムの墓場ですね。これより外は爆弾が真上から降り注ぐ空爆のみのエリアなので、敵はその墓標を盾にはできません。でも、オ○ムは巨体なので良い感じにバリケードになってくれそうです。

俺はあちらこちらに出向いて工事の指示を出したり、新しい装備を召喚したりします。疲れました。最近、過労気味です。疲労困憊で要塞に帰ると何やら皆さん、慌ただしいです。

パパパパパーーーン、ドドドドドド、シュパーーン…ドゴーーン!

おや、銃声です。これはAKとFN-MAGですね。最後のは無反動系の大砲。多分、110mmでしょうか? 何かあったのかな?

「撃ち方、止め! 即時移動。次弾装填、構えー!」

要塞の一角でジャスティンたちが何やら訓練に励んでいます。ハンガーの方ではJAS-39に群がって何かしていますね。見た感じ、給油と給弾の訓練でしょうか?

「ジャスティン、精が出るな。何かあったの?」

軽く耳を塞ぎながらジャスティンに訊ねます。俺の記憶にある限り、これだけ真剣に訓練に打ち込んだのは見たことが無いですし。

「ああ、トオル。…ねぇ、私達って役に立ってる? 先の襲撃でも殆ど何もできなかった。要塞の拡張にしても魔法使い以外は何もすることが無い」

「何を今更。幹部連の指揮能力や、魔法使いの能力、補給係の補給、兵隊の要塞維持、何が無くなっても立ち行かないっての」

何せ、俺は一人では何も出来ない勇者(仮)ですから。

「うん、確かに私達が討伐軍に必要なのは判ってる。でも、不可欠じゃない。本当に不可欠なのはトオルだけ。私達は何も出来ない」

そりゃね。唯一現代兵器を上回る可能性がある魔法があの有様じゃ、そんなものだべ。

「私達が今までどれだけ勇者に負んぶに抱っこだったか思い知ったわ」

今更? 勇者に頼って当然と言う空気は割と浸透してたんだな。俺もさっさと帰ることだけ考えて、その辺はスルーして来たが。

でも確かにあらゆる努力を笑い飛ばす力量を持つ勇者。並び立てるのはこの(ファンタジー)世界の住人でも極僅か。それじゃ、並び立とうとする気も失せるか。

でも、俺は多くの人間の随伴を必要として、それで幹部クラスとの戦いを目の当たりにした。今までは獣クラスの魔物としか戦いしかしてこなかったみたいだし。

事実上、国家存続の危機に対処してきたのは勇者だけか。

そもそも、国家存続の危機なのか? 敵の幹部クラスの襲来は荒野辺りから、それ以前は獣と変わらず。…何処か勇者を対象にした出来レース染みたものを感じるな。

「それを自覚しとけば問題ないんじゃね? 勇者がアホみたいな力量を持つのは事実、他の人間じゃ勇者クラスの力量を持たないのも、また事実」

力の無い者がある者を頼りにするのは悪いことではないだろう。しかし、それが依存まで行ってしまうと問題だ。人間が文明を離れて生きられないように。

「トオル…」

「勇者は所詮、一過性だ。聞いている限り、魔王はまた現れる。その時に勇者を頼るのは良い。だが、頼り切るな。俺みたいな例外が呼ばれる場合もあるんだ」

歴代の勇者の中でも例外中の例外、それが俺。俺自身には何の能力も無い。能力が自前の物ではないのは歴代も同じだが、俺は一人で完結出来ない。機甲部隊には歩兵の随伴が不可欠。戦闘機も給油と給弾をする人員は不可欠。要塞も運営する人員が必要。俺ってとことん勇者っぽくないなー。

「そうね…」

まぁ、やる気を出してくれたのは良いことですよ。

「ちなみに、ジャスティン」

「何?」

「俺的には、書類仕事を代わって貰えるだけで、とても凄く助かるんだが…」

「それは駄目」(キッパリ)

「そんな、即答しなくても」

「それは討伐軍司令官殿の仕事だもん。……そもそも、私だって書類仕事は嫌いだし(ボソ)」

「…最後、何か言わなかった?」

「気のせいよ、気のせい。とにかく、書類仕事頑張ってね。参謀の補助はつけてあげるから」

「…その参謀達が皆、目の下に隈を作ってるの、知ってる?」

「さぁ、射撃訓練、再開するわよ。第一小隊、構えー!」

「…逃げたな」

そうなのです。俺にとっては魔物の襲来より書類仕事の方が切実な問題なんですよ。

首都と輸送機で簡単に往復できるようになったことから、報告書の提出を求められたり、法事とか家内が出産だとかで、休暇を取りたいとほざく隊員の為に色々と手回ししたり、食料品の受取りを確認したりと、明らかに勇者っぽくないことをやっています。

大学の文化祭実行委員で皆の雑用、総務部に所属してたんで慣れた物ですけど。でも、あれですね、パソコンを使いたいです。

報告書は何故か俺は読み書きできるこの世界の言語で書いているんで、日本語のパソコンじゃ何も出来ないんですよね。

俺は要塞の増築もあるから割と免除されるんですけど、参謀達は書類の処理が仕事なだけあって、寝る、食う以外に自由になる時間は一日に二時間程度です。

これ、明らかに労基法違反ですよね。訴訟を起こされたら負ける自信が有ります。この世界に労基法があればの話ですが。

それにしても、あれですね。数多くのリリカルな二次創作で無限書庫のユ○ノがク○ノに過労死させられそうな描写をよく見かけますが、こんな感じなんですかね。俺も手首が痛いです。腱鞘炎にかかっているかもしれません。

結局、この日も参謀に混じって書類仕事を片付けました。俺も休暇が欲しいです。湖でゆっくりと釣り糸を垂らしたいです。最後に休暇取ったの何時でしたっけ?

「で、何で私までここに居るのかな?」

討伐軍No.2である貴女が逃げられるとでも思っていたのですか? そんなに世の中甘くねーです。

「私、書類仕事はちょっと…」

サインするだけでしょーが。口動かしてないで、手動かせデス。

「私、部隊の訓練を監督しないと…」

マダ何カ?

「…いえ、何でもないです」(ブルブル)

涙目で震えるジャスティン。

普段なら萌えーとか言ってたかも知れないですが、無我の極地に達した我等に煩悩は存在しないです。三大欲求のうち、極端に睡眠欲が強すぎる状態ですね。

書類仕事は結局、それから食事休憩を挟みつつ32時間後に終了しました。

「うう~、何なの、この書類の量」

ジャスティンが一番燃え尽きてましたが、貴女、32時間しか仕事してないでしょうが。って言うか、マケドニアに居るときは貴女もやってたでしょ?

「首都に居るときはフィリスの面が強く出るんだけど、遠征するとジャスティンの面が強くなるの~…」

フィリス? 誰ですか、それは?

「zzz……」

…寝ちゃいましたね。まぁ、今はゆっくり休むですよ。………これで、一週間とか経ったら、また同じ量の書類が届けられるんですから。



生まれ変わった旧第一次防衛線簡易要塞


第一次防衛線、空爆可能限界領域に設定。最後尾は第二次防衛線から30キロ。合計五つの落とし穴から構成。


第二次防衛線、旧第一次防衛線。要塞から50キロ前方に存在。高さ40mの防壁と高さ20mの攻性防壁で構成される。

第二次防衛線簡易要塞常駐戦力

90式戦車 108台

Strv.103C戦車 36台

99式自走榴弾砲 108台

MLRS 12台

多目的誘導弾搭載高機動車 36台

87式自走高射機関砲 12台


討伐軍要塞 カール・ヴィンソン

F/A-18E 24機→48機


サンドトウ飛行場常駐戦力

F-15E 108機→324機

A-10 36機→108機

B-1 12機→36機

JAS-39 0機→108機

常駐機数の増加に伴って、ハンガーを拡大。

発進速度は滑走路運用の限界もあって、若干速くなった程度。

全力出撃が必要な場合は全滑走路を発進専用とし、攻撃後に機体は返還、新しい機体を召喚する。その為、兵器格納庫は拡大していない。

JAS-39は適当な空間を1km確保し、そこを舗装して第四、第五、第六滑走路とした。第四~六滑走路はJAS-39とC-130、C-17が使用。

…保有する戦力的に在日の全戦力を相手にしても普通に勝てる気がしてきた今日この頃。



[18458] 番外編 ジャスティンの出生
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/22 09:33
さて、皆さんこんにちは。魔王討伐軍副指令のジャスティン・クライトンです。

今回は私の出生の秘密を明かすそうです。正直な所は作者が私の名前を男性の名前と間違えた事に端を発するのですが、いい加減ですね。

私の生誕したクライトン家は何代か前の勇者の子孫だそうです。

正直、勇者の数が多すぎて何代前かは誰にも分からないそうです。

ただ、勇者は稀にその能力の一部をこの世界に残すことがあるらしいです。

魔王討伐の後にこの世界に残ることを選択した勇者。その子孫が私。

19 years ago.

「双子とは、何と不吉な」

「勇者の血を引く我等クライトン家で双子、それも二人とも女子が生まれる。…過去、類を見ない事態じゃ」

「…これは、どうするべきか」

クライトン家の長老達が母親と父親をさて置いて勝手に色々と話が進んでいく。

「…長老方、勝手に話を進めないで貰いたいのですが?」

「おお、済まん、済まん」

「で、長老方としてはどう判断されますか?」

「少なくとも吉兆ではあるまい。過去、例が無いのでな。正直な所、何とも言えんよ」

「…クライトンに双子生まれし時、災い現る…ですか」

「まぁ、所詮は伝説じゃ。何とかなるじゃろうて」

「…それで良いんですか? 最初の重い始まりかたは?」

「ノリじゃ」

「初孫に悪いようにする訳あるまい」

「初姪に悪いようにする訳あるまい」

「いや~、最近は赤子も産まれて居なかったからの」

最初の威厳は何処にやら。典型的な初孫を甘やかす爺共である。

「さよけ」

幼少よりこの爺共に育てられたマイク(父)も慣れたものである。

「それに、マリア(母親)のあの幸せそうな顔を見るとの~」

「大人の都合で子と引き離す訳にも行くまい」

まぁ、クライトン家とはこんな家系である。

「しかし、あれじゃ。クライトンに女子の双子が産まれたとなると世間が煩い。片方は男子としておくとするか」

「名前は決めてあります。フィリスとジャスティン」

13 years ago.

「姉さん早く早く~」

「待ってよ~、ジャスティン」

クライトン家は小さいながらも領土を持つ。領土というよりは村長や町長と言った方がしっくり来るかもしれない。

クライトン領は治安も良く、良い環境なのだが、人が少ないのが欠点ではある。子供の数は更に少なく、姉妹は互いを遊び相手として育って来た。

「ジャスティン、危ないよ~」

「平気平気」

二人の子供はすくすくと育っていた。金と銀の髪をした少女達。

ただ、金髪のフィリスの方は体が弱く、病気がちではあったが。銀髪で戸籍上男の子のジャスティンではあるが、男の子なのは名前だけである。

でも、何だかんだで男の子っぽく逞しく育っている。

「くぉら~、悪ガキ共~!!」

「キャ~、逃げろ~!」

「も~う、ジャスティンのバカ~!」

悪戯をして領民に追っ駆けまわされたり。

「どうも、お嬢さま。私、執事の義娘、キャサリンでございます」

「へぇ~、うちに執事なんて居たんだ~」

「ジャスティン…。でも、確かに見たこと無いよね?」

「普段は傭兵として盗賊の討伐を行っておりますので」

「「執事が傭兵!?いや、傭兵が執事!?」」

「本業は執事です。ただ、本人の腕が立ち過ぎて騎士団が中々手放してくれませんが」

新しい友達と出会ったり。

「私、将来、騎士になる!」

「どうしたの急に?」

「だって、格好良いじゃん!」

「そんな理由?」

「お姉ちゃん。切欠なんてそんなので充分なのよ」

「キャサリン、そーなの?」

「フィリスお嬢さま、間違ってはいませんが、そのやる気を達成まで維持できるかどうかは別問題です」

「え~、出来るよ~。ぶぅ」

「では、明日から私のジョギングと素振りに付き合いますか?」

「あ、私、用事を思い出した」

「このように外見しか見ないと実際にその職に就いた時、あるいは就く為に必要な困難で早々に挫折する可能性が高いです。あ○ない刑事を見て刑事になったは良かったが、実際には踊○大捜査線のようだった。という事も珍しくありません」

「キャサリン、その例えは色々と不味いわ」

「そうでしょうか?」

11 years ago. 遂にその時が来てしまう。

「お父さん! お姉ちゃんが倒れたってどうゆう事!?」

「落ち着きなさい」

「落ち着いていられますか!」

「落ち着きなさい」

「……ぶぅ」

「で、フィリスだが、クライトン家の女子が低確率で発症する魔力衰弱の病だな。最後に発症が確認されたのは、10世代は前のご先祖なんだが」

「治るの…?」

「分からない。そもそも情報が少なすぎる。回復法どころか、症状の情報すら事欠く上に、余りに発症例が少ないんで病名すら付いていない有様だからな」

「そんな…」

「まぁ、努力はしよう。ジャスティンはフィリスの側に居てやりなさい。病気は気からと言うし」

「はい…」

クライトン家の女子が低確率で発症する魔力衰弱。

呼んで字の如しだが、魔力は生命エネルギーと置き換えても過言ではなく、これが衰退する=寿命が縮まるである。

「ねぇ、ジャスティン。私、死ぬのかな?」

「何言ってるんだか。死ぬわけ無いじゃない」

フィリスは日に日に衰弱していった。

外に出られる日も減って、部屋から外を見るだけの日々が続く。

大人達は過去の記録を漁り、国中の医者に当たり、あらゆる健康法を試す。

しかし、どれもこれも効果は今一だった。

「うわぁ~、いつの間にか紅葉の季節になってたんだね~」

「お姉ちゃん、外に出るの久しぶりだもんね~」

「ジャスティンお嬢様、車椅子を押す速度が速すぎです。もう少しゆっくり歩いてください」


フィリスの体調は良くなっていない。寧ろ悪化している。

今まで外に出られなかったのに何故今、散歩が許可されているのか。それは大人達がフィリスの回復を半ば絶望視していると言う事でもあった。

勿論、全員寝る間も惜しんで調べ物をしている。一人も音を上げない辺り、クライトン家の人間は根強い。

9 years ago.

遂にフィリスはベッドから起きられなくなってしまう。碌に休みも取らないで調べ物に明け暮れていた大人たちもやつれて来ていた。しかし、それでも治療法は見つからない。

しかし、そんな中、ジャスティンはフィリスを救う方法を見つけていた。それは偶然に近い。

キャサリンの養父である執事のセバスチャンの部屋に忍び込んだ時に見つけた古代の魔法書。

そもそも、元々はフィリスとジャスティンは一卵性である。余りに大きすぎる魔力故に双子になり、魔力を分散した。そして、マイナス面は殆どフィリスに行ってしまった。

フィリスとジャスティンが元は同じ存在である双子だから出来る芸当、魂の融合。

フィリスの魔力減衰を強大な魔力を持つジャスティンの魔力を融合させて回復させる。古代の禁じ手。しかし、それを行えばジャスティンという存在はこの世界から消えてなくなる。

とりあえず、その行い方だけ写しておくだけに留める事にする。

8 years ago.

遂にフィリスはいよいよ末期症状へと突入した。

「…私達は娘に何もしてやれなかった」

「…無力だ」

両親は激しく落ち込んでいる。他の使用人やキャサリンも沈痛な表情をしている。その中でジャスティンだけ何かも決心した顔をしていた。

「…うっ、ぐす。何で私だけ。…死にたくないよ」

普段は気丈に振舞っているフィリスだったが、一人になると本心が口から出ている。

「大丈夫。お姉ちゃんは死なないよ」

「っ!? ジャスティン!?」

突然現れたジャスティンに驚くフィリス。

「私は今までお姉ちゃんの分も外で遊んだ。色んな物を見てきた。今度はお姉ちゃんの番だよ」

「な、何を?」

「我、勇者の血を引きし一族。二つに分かれた魂を再び一つに」

「ジャスティン!? 何をして…」

「お姉ちゃん。私は何時もお姉ちゃんと一緒だよ」

「ジャスティン!」

次の瞬間、ジャスティンの姿は無くなっていた。まるで最初から存在しなかったかのように。

「……ジャスティン、…バカ」

あれだけだるかった身体が今は嘘のように軽い。産まれてから一度も体感したことの無い全快という状態だ。

そして、中にはジャスティンの存在を感じる。とても小さい、それでいてとても温かい存在が。

何より、金髪だった髪が金と銀を足した様な色になっていた。

「フィリス、何が!?……その髪は…まさか」

「父さん、母さん。ジャスティンが…」

「まさか、合魂の術を。では、ジャスティンは…」

「う、うわぁぁぁーーーん!!」

この日、ジャスティンという娘はこの世界から消えた。


「フィリス…」

「父さん、今日から私、ジャスティンって名乗る。私があの娘の存在を忘れない為に。皆がジャスティンが存在していたんだって忘れない為に。私が今、生きているのはジャスティンのお陰なんだって忘れない為に」

「フィリス……分かった。でも、勘違いするな。ジャスティンが自分の生命を使ってフィリスを助けたのは幸せになってもらいたいが為だった筈だ。それを理解しているならジャスティンと名乗りなさい」

「はい、父さん」

4 years ago.

「只今をもって、騎士育成学校卒業式を執り行う。卒業生…」

私は騎士になる事にした。ジャスティンがなりたいと望んだ騎士。ジャスティンの陰を何時までも引き摺る訳じゃ無いけど、それでも私はジャスティンが生きていた証をこの世界に残したい。

あの日からフィリスとジャスティンは一つなった。今の私はフィリスでもジャスティンでもない。二人の特徴を併せ持った存在、それが私。

特にジャスティンは騎士になりたいというのはかなり強い思いだったらしい。私は特になりたい職は無かったのでジャスティンに引っ張られた感じかな。でも後悔はしてないよ。

「ジャスティン・クライトン」

「はいっ!」

「第一重装騎士団に配属とする」

「はいっ!」

この先、何が起こっても私なら乗り越えられる。だって、私は私達、二人で一人なんだから。

たった四年間で団長って、どんな出世速度だって突っ込みは無しですよ?



[18458] 設定や説明
Name: タンクさん◆74790b16 ID:addd9404
Date: 2010/05/24 03:59
ここでは作中の世界観や登場するキャラクター、火器等の説明をして行こうと思います。作者の主観が混じるかもしれません。正確な知識を得たい方はご自分でも調べることを推奨します。

主人公 北条透 職業 勇者(仮)

 理系大学生。とりあえずの目的は元の世界に帰ること。多くの兵器では俺Tueeするには威力不足。核は放射能の影響が読めないので使わない。デイジーカッターは割と使うが、広域破壊系は拠点攻略には向かないので城に対しては結局は使わない。本人は余り認めたがらないが、勇者補正を所有しており、普通に谷に行けば魔王の元に辿り着く。しかし、安易に空爆するとそのルートが潰れてしまうので、とりあえず保留中。結局、今現在は要塞で対処法を考案中。戦闘機や戦車、自走砲といった戦術級の兵器で戦術的な勝利を目指す。今は偵察と迎撃の日々。身長177センチ、体重68キロ。

ジャスティン・クライトン 職業 騎士 第一重装騎士団団長

適当に持っているゲームのキャラから引っ張った名前なのだが、実は男の名前でしたというオチでした。作者は感想で指摘されるまで知らなかった。修正するのも何なので、ジャスティンが男の名前を名乗っているのに適当なエピローグをつけて番外編を作ろうかと企んでいる。
身長165センチ、体重no date。金と銀を足して二で割った色の髪を腰まで伸ばしている。騎士としても優秀だが、指揮官としても優秀で多くの騎士から尊敬されている。しかし、その手腕を活かせるかどうかは作者の文章力次第。

マケドニア

主人公が呼び出された世界に存在する国家。積極的に交流をできる距離に他の国家は無い。交流可能な距離にある町や村は全てマケドニア領。政治は王政で、国軍は騎士と国防軍に分けることが出来る。更に各地方で自警団も所有しており、国防軍が軍隊、騎士は軍警察、自警団が警察に相当する。魔王の存在ゆえに、もう百年単位で人間同士の戦争をしていない。
国防軍は徴兵制、騎士と自警団は志願制となっている。自警団が人手不足の時は国防軍から出向で人員が補強されるが、本来自警団は米国州軍みたいに非常勤なので、若い世代が居ない等の例外を除けば、その地方は全国から白い目で見られる。
アルデフォン等の北部は激戦区なので、国防軍出向者も普段から常駐し、平均して駐留軍の七割は国防軍出向者、残りは地域住民である。尤も、自警団が本格戦闘に駆り出されるのは稀。所詮はパートタイムの警察組織ですから。

89式小銃

透が書の能力を試すために召喚した小銃。大量に呼びすぎたが返還済み。陸上自衛隊の制式小銃。口径は5.56×45mm。単射、3点射、連射を選択可能。セレクターは64式小銃のアタレから左上から時計回りでアタ3レの順番に変わっている。アタレはそれぞれ安全、単射、連射の頭文字。
軍用ライフルとして採用されている以上、そこそこの堅牢性は持ってはいるのだろうが、限界領域まで使用されることがまず無いので、その辺はあやふや。資料によって使えるか、使えないか、判断が全く異なる。透も整備が期待出来ない異世界で不安の残る銃を使う気は無いのでもう出てこないかも。

FN-MINIMI

自衛隊や米軍で採用されているSAW(分隊支援火器)。一個班、もしくは一個分隊に一丁支給され火力支援を担当する。給弾はベルトリンクか、89式と同じ30発マガジンを使用する。ベルトリンクはボックス型マガジンに200発入れられているのが標準。ベルトリンクとマガジンで連射速度が実は違う。

FN-MAG(M240)

7.62×51mm弾を使用する軽機関銃。1950年代の設計だが、その信頼性の高さゆえに今でも世界各国で使用されている。米軍でもM60の後継(造られた時期は変わらない)として湾岸戦争以降配備を行っている(車載機関銃としてはもっと早く採用していた)。AK-47とは弾薬の規格が違うので共有は出来ない。

110ミリ個人携帯対戦車弾

使い捨ての対戦車ロケット弾。84mm無反動砲の後継として採用された。弾頭は基本的に成型炸薬弾。着弾と同時にメタルジェットが秒速7~8kmで前方に噴射され装甲を撃ち抜く。通常装甲での防御は難しく、複数の素材を重ねた複合装甲での防御が得策。正面以外なら戦車の装甲も貫通可能。
映画ほど派手な爆発は起こらない。映画などで歩兵相手に用いられ、大爆発を起こすのは榴弾使用時。しかし、榴弾では装甲貫通力は無きに等しい。透は成型炸薬弾を使ったので爆発は地味だった。後方に発射弾頭と同等の質量を持つ金属粉を飛ばして反動を抑えている。金属粉は空気抵抗で直に失速するので、爆風を出す砲に比べれば閉所からの発射も容易。

AK-47

1947年にソ連で制式採用されたライフル。故障が少なく、高い堅牢性と量産性を持っている。世界で最も使用されているライフルだが、紛争地域に出回っている分はその殆どが密造銃。生産が簡単すぎるのも考え物である。口径は7.62×39mm

90式戦車

陸上自衛隊が1990年に制式採用した戦後第三世代戦車。その性能は今現在でも世界最高水準にあるのだが、市街戦などで効果を発揮するC4Iシステムの搭載が困難として他の同世代戦車には0.5世代開けられてしまった。また、重量が50tあり、本州での運用は困難。それでも他国に比べれば10t以上軽い。FCSは優秀で走行しながらの砲撃でも命中精度が高い。
1500馬力ディーゼルエンジン搭載。44口径120ミリ滑腔砲搭載。最高速度70km/h。

Strv.103C

スウェーデンの戦後第二世代戦車。62口径105mmライフル砲を車体に直接据え付けた戦車。MBTに分類されるが、待ち伏せに特化しているので平野での機動戦闘は苦手とする。正面装甲は薄く、傾斜装甲による被弾経始に依存しているので、傾斜で弾くことがまず出来ない現代主流のAPFSDSには耐えられない。一応、前面に防御柵があるので成型炸薬弾には耐えられる(?)。本作では粘着榴弾と榴弾を持つ。滑腔砲の方が効率の良い装弾筒系統の徹甲弾は使用しない。

ハープーン対艦ミサイル

西側の代表的な対艦ミサイル。艦対艦、空対艦、地対艦とあらゆる状況で使用できる。自衛隊では国産の対艦ミサイルに更新している。射程は100km以上。

88式地対艦誘導弾

陸上自衛隊が運用する地対艦誘導弾。ミサイル96発、発射機16基、装填機16基、捜索・標定レーダー装置6組、レーダー中継装置12基、射撃統制装置4基、発射統制装置1基で構成される。尤も、討伐軍ではSH-60からのデータを精霊が統合して発射しているので大部分は略されている。大型ゴーレム級の敵に対抗する目的で配備され、レーダー反応が期待出来ない敵には慣性誘導で凡その場所に無差別攻撃を加える。主に戦艦を持たないサンドトウ飛行場の火力支援を担当。

トマホーク巡航ミサイル

射程1000km以上を誇る巡航ミサイル。派生が多く、中には射程3000kmに届く物もある。作中のレーザー誘導は「ジパング」を参考にしたオリジナル。実際は途中まで地形照合で飛び、予めインプットされた形状の物体に突入するか、ハープーンと同じレーダー誘導で突入する。

OH-1 ニンジャ

陸上自衛隊の観測ヘリコプター。二人乗りだが、コックピットは縦列に配備されており、外見的には戦闘ヘリに近い。観測ヘリとしては運動性も良好で、短射程の空対空ミサイルを4発搭載できる。機体もエンジンも全て国産。作中でOHと書いたらこのヘリを指す。

AH-64D アパッチ・ロングボウ

世界最強の戦闘ヘリと呼び名の高いアパッチに全天候での作戦能力が付加されたモデル。機体主要部は23mm弾の直撃に耐える設計で、どこに被弾しても30分は飛行を続けられるらしい。
30ミリチェーンガンを固定武装し、ヘルファイア対戦車ミサイル、70mm対地ロケットを機体側面に装備する。余談だが、作者は続戦国自衛隊で使われたロングボウ・アパッチという呼び名に馴染んでしまって、正式な名称のアパッチ・ロングボウに違和感を感じる。

UH-60 ブラックホーク

西側最新鋭の多目的ヘリ。ワイヤーで車両を吊り下げながら空輸することも出来るし、機銃やミサイルを積んでガンシップとして運用することもできる。レスキューウイングでお馴染みの航空自衛隊航空救難団でも採用している。

SH-60 シーホーク

UH-60の海軍版。ソナーや魚雷を積んで対潜水艦戦闘や、上空に上がって空中管制機の真似事も出来る。主に海上から水平線の向こうへミサイルを撃つ時は本機を上空に上げてデータをもらう。欠点として、レーダーが下方にしか付いていないので上空からの攻撃に弱い。

CH-47 チヌーク

兵員55名を空輸可能な大型ヘリ。ローターが二つとも地面と水平に回転するタンデムローター方式。テイルローターをメインローターのトルクを打ち消すのに使う通常型と違って、両方のローターで揚力を得ながらトルクを打ち消せるので効率は良い。ただし、小回りが利かない。熟練者が操れば、機体を着水させて、後部ハッチから部隊をボートごと収容なんて神業も出来る。

JAS-39 グリペン

透が陸上滑走路での運用の為に呼び出した小型軽量戦闘機。戦後4.5世代機の中では最小。スウェーデンは中立国なので先制攻撃を受ける前提で装備を整えているので本機は高速道路直線部での離着陸とトンネル内での整備で運用が出来るSTOLと整備性を与えられている。PCゲーム「群青の空を越えて」の主人公メカ。自重は僅かに6.5tしかない。

F/A-18E スーパーホーネット

米海軍の主力戦闘機。汎用性の高さからF-14を退役に押しやったF/A-18C/Dだが、出力不足から来る搭載量、安定性、航続距離の低さが問題となっていた。そこで大幅な改良を施した結果、C/D型とE/F型の共通部品は一割にまで減ってしまった。もはや、見た目が似ているだけで別の機体。
C/D型でも騒音がうるさく、訴訟沙汰になるほど。E/F型はそれより更にうるさくなっている。一応F-X候補の一つなのだが、その騒音の大きさと、4.5世代機の中では性能で劣ることから、F-X候補に載せない雑誌も存在する。A~Dまでをホーネット、E/Fをスーパーホーネットという。現役なのはC/DとE/Fで、CとEが単座、DとFが複座となる。

F-15E ストライク・イーグル

米空軍主力戦闘爆撃機。基本設計は戦後4.5世代機の中で最古だが、F-22の生産停止とF-35の開発遅延を受けて暫く主力機の座に留まる予定。C/D型以前とは六割を再設計しているので半ば以上別の機体。お隣の韓国がE型ベースのF-15Kを採用したので、C/D型ベースのF-15J/DJを扱う空自の優位性は失われつつある。F-X候補に本機を空対空戦用に再設計したF-15SEが提案されている。E型のキャッチフレーズはF-15シリーズの空対空能力を引継ぐ攻撃機なので、C/D型に比べて対空戦闘が強いわけではない。

F-4 ファントムⅡ

元々は艦載機として配備が始まった重戦闘機。優秀な機体だったので空軍型も製造された。運用開始は1960年。航空自衛隊でも採用しているE型は空軍使用で20mmバルカンを標準装備している。初期型は機銃を持たず、ベトナムでIFFの未発達で視界外戦闘を禁止されたので、格闘能力で勝る軽量のMiGに大苦戦を強いられた。その反省からF-15等の第四世代機は格闘戦闘にも対応しているのだが、皮肉にもレーダーとミサイルの性能向上で格闘戦は必要無くなりつつある。函館にMiG-25が強行着陸した際に、低空目標のレーダー探知能力(ルックダウン能力)の低さが露呈し改良された。高高度を飛ぶ戦略爆撃機の迎撃を想定した冷戦時代の機体らしく、上昇制限はF-15より高い。空自のF-4EJと改はそろそろ引退なのだが、後継機が決まらないので中々引退出来ない。西側の戦闘機としては生産数が最多。優秀という言葉は良く聞くが、何処がどう優秀という具体的な描写は少ない。
以前、ブルーエンジェルスが来日した際にF/A-18で騒音で訴訟を受けたと書いたが、訴訟を受けたのはF-4運用時だったみたいです。ごめんなさい。

A-10 サンダーボルトⅡ

30mm七連装ガトリングガンを備える対地攻撃機。滞空時間の長い攻撃機を求めた米軍が開発した。異常なまでの撃たれ強さを誇り、機関砲の類で撃墜するのは容易ではない。ただ、低速なのでミサイル攻撃に弱い。30mmガトリングガンGAU-8はとにかくでかく、一度画像を見ることを推奨したい。本体は自動車と、弾丸はフィルムと並べると三日は笑える。

C-130 ハーキュリーズ

プロペラ稼働のターボプロップ・エンジンを四発備える戦術輸送機。1950年代の機体だが、1000mの未整地滑走路で運用できる能力を買われて現在でも現役で運用されている。多くの派生機を持ち、105mm榴弾砲、40mm及び20mm機関砲を持つ本家ガンシップや、空中給油を行う支援機、民間仕様機も存在する。
日本では国産のC-1輸送機が、『長距離を飛行でき、大量の物資を運搬できる輸送機は軍国主義の復活だ』という開発当時の笑えない国勢もあって意図的に能力を落とされた結果、北海道から沖縄まで無着陸飛行出来ないという機体になってしまったので本機が海外派遣でも使用されている。

C-17 グローブマスターⅢ

戦車も空輸可能な大型輸送機。それでいてC-130と同等の滑走路で運用できる。ジェット機ではあるが、未舗装の滑走路でも運用できるので世界中で活動する米軍には必要不可欠な機体である。

施設作業車

75式ドーザの後継として配備が進んでいる施設車両。外見は73式装甲車に排土板とショベルアームをくっ付けた感じ。レーザー検知機やスモークディスチャージャーを備えて航空攻撃に対する生存率を向上させている。

グレーダ

民間でも良く見かける土木車両。六輪車で前輪2つと後輪4つから構成された非常に細長い車両。排土板は胴体下に設置されている。雪国では除雪車として見かけることも。

掩体掘削機

まんまパワーショベル。操作はレバー四本で行い、二本を移動に。残りで上体の回転やアーム、バケットの操作を行う。先端のバケットはアームの伸縮に合わせて角度を変えないといけないので、素人がやると土をばかばかこぼす羽目になる。

バケットローダ

別名ホイールローダー。外見はブルドーザーを装輪にした感じ。雪国の人間には除雪車と言った方が馴染み深い。ハンドルを切ると胴体中央部が曲がるので外見からは想像出来ない回転半径の小ささを実現している。その関係上内輪差が存在しない。作者も小特サイズ(それでも自重10t近い)に乗った事があるが、あの操作性には感動した。

カール・ヴィンソン

勇者軍本拠地。ニミッツ級航空母艦の3番艦で、全長333m、全幅77m、喫水12m、満載排水量101,264トン。ニミッツ級は各艦で微妙にスペックや見た目が異なる場合がある。何でこの艦にしたのかと言うと、作者が「沈黙の艦隊」好きだから。

ミズーリ

アイオワ級3番艦。第二次世界大戦はこの戦艦の甲板上で終結を迎えた。米海軍最優の戦艦だが、対艦戦闘に限れば前級のサウスダコタ級の方が優れている。アイオワ級は高速を実現させるために全長270m、全幅33mと非常に細長い(大和は全長263m、全幅39m)艦体をしているので、波の影響を受けやすく、長距離で精密さを求められる対艦射撃には向かない。また、被弾時の復元性にも乏しく、容易に転覆してしまう。
しかし、33ノットという空母機動部隊に随伴できる速力を発揮し、大戦末期、カミカゼから多くの空母を護った。元々は日本の金剛級高速巡洋戦艦に対抗するために建造されたので、速度優先で防御力は二の次とされている。
50口径16インチ砲三連装砲塔三基搭載。5インチ連装両用砲、20mmCIWS、トマホーク巡航ミサイル、ハープーン対艦ミサイルを搭載。

クラスター爆弾

親子爆弾。親爆弾が空中で展開し、中身の子爆弾を広範囲に撒き散らす。百発単位の子弾を入れた対人用から十数発の子弾を入れた対戦車使用まで存在する。国際条約への署名をした日本からは近く姿を消す。MLRSはこれのロケット発射版。そちらも日本からは姿を消す。余談だが、米国、中国、韓国、北朝鮮、ロシア、台湾といった周辺国は所有禁止条約に署名していない。大丈夫か? 日本。

デイジーカッター

気化爆弾と混合されがちだが、全くの別物。これは単純に大きな爆弾である。兵器と勘違いされているが、本来は密林にヘリポートを造ったり、地雷処理を行うための工兵装備。主にC-130などの戦術輸送機からパラシュートで投下される。現在ではGPS誘導で投下される後継が作られ、米軍所有の最後の一発も爆破処分された。

勇者軍要塞

カール・ヴィンソンとミズーリの浮ぶ湖を中心に全方位を空堀と城壁で囲んだ要塞。モデルは「続戦国自衛隊」の大阪城編、さくら丸。詳しくは本編で書き尽くしたので特に書くことはない。
最新では荒野森林間の第一次防衛線簡易要塞とサンドトウ飛行場の2拠点と立体的に稼働するようになった。やたらと航空機や車両の数が多いが、主人公が毎回召喚するのも面倒なので予備も含んだ数字。要塞と第一次防衛線は約50km離れている。要塞と飛行場の距離は160km。第一次防衛線は荒野と森林の境目にあり、第一次防衛線を破っても、森林で行軍速度が大きく制限される。その間に撤退か迎撃かを選択し、行動する。第一次防衛線は万里の長城をイメージしている。ただ、車庫の類は殆ど無いので常駐戦力は少ない。



モデルは長野県大町市に存在する仁科三湖。15年くらい昔は湖畔で車のウィンカーを出すと蛍が寄って来たのに最近は見当たらない。「白線流し」「男はつらいよ」「犬神家の一族」などでロケ地として使われ、「おねがい☆ティーチャー」「おねがい☆ツインズ」では舞台となった。何でこんなマイナーな湖にしたのかと言うと、作者がリアルに見たことのある湖がこれだけだから。
リアルに行くには電車なら松本駅からJR大糸線に乗って一直線。長野市からは直通路線が無いので注意。
車なら長野自動車道豊科ICから高瀬川の堤防上を走る長野県道306号有明大町線を北上。この県道は国道147号線と合流して終るが、交差点の向こう側から市道が国道148号線と合流地点まで続くので北上は継続できる。余りに自然な路線変更なので、普通は道が変わった事に気付かない。蓮華大橋で高瀬川を渡り、市道と148号線の合流地点が仁科三湖最南端の木崎湖付近。1998年の長野五輪にて長野自動車道から白馬へのアクセスを容易にする為に造られたので県道市道合わせてオリンピック道路とも言われる。
松本市から国道147号線経由で国道148号線に出ても結局は合流するので行くことが出来る。ただ、途中自治体の中心部を抜けるルートなので信号が多い。
聖地巡礼に比較的好意的で、イベントを組んだりもしたらしいが、作者はやっているところを見た事がない。そもそも2002年当時おねがいシリーズの存在を知らなかった。

精霊の能力について。

兵器が無人で行えることはすることが出来る。逆に人力でやることは出来ない。例えば74式戦車を召喚しても砲弾の装填は人力なので無人では砲撃出来ない。また、憑依出来るのは兵器本体のみで、誘導弾や砲弾には憑依不可。なので、正規手順で発射する必要がある。
また召喚から憑依までタイムラグがあるので、空中で飛行機を呼び出す等は出来ない。結果、航空戦力は大きく制限されている。また召喚は半径10m以内。その為、物理的に一度に召喚できる量には限度がある。軍艦などの大質量を呼び出す場合は、距離と、津波にかなりの注意が必要。

魔物

多くは獣と言った方が良いレベル。作者が魔物と一括りにした場合はゴブリンに近いものを想像している。知性が低く、一応、魔王の命令も聞くのだが、目の前にエサがあるとそちらを優先してしまう。

ゴーレム

歴代勇者でも苦戦を免れない強敵。その真価は何と言っても固さ。コンクリートの五倍の強度があるスエズ運河の底の岩壁とタメを張れる。コアを破壊しないと無限に再生する。一撃でコアを破壊できれば良いが、出来ない場合は回復速度を上回る破壊速度を達成しなくてはならない。

オ○ム

全長80mの巨大ダンゴ虫。本来は知性が高く、慈愛も持っており、人が腐海で暴れなければ怒らないのだが、今回は何故か最初から怒りMAX。外殻がとても硬く、抜け殻はガンシップや日常品に利用されたり、目の部分はガラスの代用品になる。普通にセラミック鋼より硬い。でも、生き物なのでデイジーカッターの高温や高圧で死んでくれると信じたい。原作はジ○リ創立前の作品なので正確にはジ○リの作品ではない。

ロボット

頭部に大小二つのビーム発射口を持つ兵隊。初登場時は恐怖の権化として登場するが、実は飛行石の持ち主を護りたかっただけ。後にその忠誠心や、鳥の巣を心配する慈愛を持つことが確認できる。しかし、兵隊タイプはヒロインに勘違いされたり、某色眼鏡大佐の命令で働かされたりと不運が目立つ。装甲は劇中では触れられていないが、形状記憶弾性セラミック。原作は今でこそ有名だが、観客動員数はジ○リ作品中最低だったりする。

ト○ロ

皆大好き森の精霊。大人になると見えなくなってしまう。作中では寝ている時間が多く、ト○ロの由来も、何語だか知らないが、「眠いよ」と言ったのがト○ロと聞こえたから。人に好意的で、5月由来の姉妹を何かと気に掛ける。

B-29

戦時中に日本にたらふく爆弾をばら撒いてくれた戦略爆撃機。日本に原爆を落としたのも本機である。今の航空機同様、機内は気圧を保てるので高高度でも搭乗員は酸素マスクを着用する必要がない。反面、被弾によって穴が開けば気圧の変化で吸い出されるという欠点もある。この作品はハッピーエンドが基本のジ○リにしては珍しく救われない。

飛行船

クライマックスでト○ボくんがぶら下げられていた飛行船。作者はこれ見たの結構昔なので、なんでト○ボくんがぶら下げられる羽目になったのか覚えていない。

戦闘艇

アドリア海の空賊や賞金稼ぎの物語。子供にはちと難しいが、中学生以上になれば普通に楽しめる。この作品は数々の名言を生んだ。そこに出てくる、実在したりしなかったりの飛行艇。搭載火器は軽機関銃レベルなので残念ながらAH-64Dの装甲には歯が立たない。水上戦闘機と戦闘艇の違いは、陸上機にフロートを付けて水上機に転用したか、最初から飛行艇として造られたかの違い。作中で言えば、主人公は戦闘艇、カ○チスは水上戦闘機に近い。この当時は高出力化を進めると重力が増し、滑走距離に制限の掛かる陸上機では運用し辛かった。その後は高揚力の翼の開発が進み、陸上機も高出力化が進んだので、着水の為に重い装備を持つ戦闘艇は急速に廃れ、この時代が戦闘艇が活躍した最後の時代でもある。これ以降、水上機が陸上機を上回った例は少ない。(日本の二式水戦は零戦に最高速で劣るものの、米軍機よりは機動性に優れた)

狸の化学

化学はばけがくと読む。高度成長に沸く日本で自然が次々と破壊される状況を憂いた作品。これも、最後こそ明るいが、どこかバッドエンドっぽいのは否めない。これを見て自然保護に興味を持った人も少なくないはず。作中の妖怪大作戦、人間や土地に全く被害が出なかったので、どこかの企業が宣伝でしたと名乗り出て、結局神秘への畏怖を取り戻すには至らなかった。

ヌシ

神として崇められる獣達。主に猪のことを指す。日本では人の手の入らない森は殆ど無く、舞台となるような森は全国でも本当に少数。その最後の時代なのだろうか、ヌシ達は荒ぶる神々と人との対決で主力となった。しかし、火薬を用いた武器を所有する人に惨敗する。何気にあの石火矢、種子島より強いんじゃないだろうか。物語の主要人物は基本的に良い人しか居ないので、善悪という概念を超えたものを考えさせられる。

F-X候補

説明文で何回か出ている単語。航空自衛隊の次期主力戦闘機の事を指す。F-4EJの退役を埋める形で採用されるのだが、現在、選定作業は難航している。以下、候補。作者的にはF-22が候補から外れた今、どの機体を採用しても周辺国に今後の航空優勢が確保できるとは思えない。補足だが、空自では現在F-15J/DJ、F-4EJ、F-16ベースのF-2を運用している。F-15JはF-15Cの日本版なので、F-15Eの韓国版、F-15Kに比べて古い機体となる。
更に補足すると、中国はSu-27系統を輸入とライセンス生産し、殲撃十型という新型国産戦闘機を配備している。韓国はF-15Kを採用し、将来的にはF-35の導入を計画中とある。ロシアのステルス戦闘機は2015年の量産を目指すとしている。対して自衛隊はその時代時代で常に金銭に拘らずに最強の戦闘機を配備してきており、今現在の候補機はどれもこれも同水準にあり、数の差を覆せるレベルの性能を有するとは思えない。

F-22 ラプター

現在、世界最強の制空戦闘機。未だ実戦(空戦限定)で被撃墜無しのF-15を手玉に取る性能を持つ。3S(ステルス・STOL・スーパークルーズ)を持ち、その中のステルスとスーパークルーズ(超音速巡航)が第五世代機の条件とも言われる。しかし、同じく第五世代機のF-35がスーパークルーズを出来なかったり、4.5世代機のEF-2000がそれを出来たりと、曖昧な部分も多い。米国防省は本機の生産中止を決定。それに伴ってF-X候補からも外れている。

F-35 ライトニングⅡ

F-X候補に残っている機体では唯一の本格ステルスであり、最有力とも見做されている。しかし、未だ開発途中にあり、開発参加国ではない日本への輸出は遅れるとされている。ライセンス生産は話すら出ていない。本機の供給を待っていてはF-4EJの退役に間に合わないという現実的な問題もある。また、マルチロール(汎用)機と言うのは強みでも有るが、同時に器用貧乏にもなり易く、絶対的な制空能力を求められるF-Xというより、性能的にはFS(支援戦闘機)に近い。元々はF-22とのHi-Lo-MixのLoの機体なので仕方が無いとも言える。米軍はF-X候補に本機を推している。作者的には国産の心神が完成するなら、それまでの繋ぎやステルス機運用ノウハウの獲得の為に本機を採用するのもありだろうと思っている。

EF-2000 タイフーン

欧州連合が開発した4.5世代機。マルチロール性が高く、あらゆる任務を遂行できる。同じマルチロール機でも主力機として開発されたので、ステルス性以外の全ての性能でF-35を圧倒する。空自への売込みに最も熱を入れており、ライセンス生産も最初から認めるという好条件である。開発元はF-22には劣るが、F-35よりは空対空戦能力で勝ると自称している。F-4EJの退役に間に合わせるには最も有力。しかし、空自は米国製と国産以外の戦闘機を運用した実績は無く、本機を採用した場合、日米間に確実に陰を落とすと言われている。作者的には小型ステルスのF-35より、スーパークルーズと搭載量、運動性に勝るこちらの方が、レーダー波や警告をバンバン出しながら接敵するF-Xには向いているのではないかと思っている。

F-15SE サイレント・イーグル

戦闘爆撃機のF-15Eを空対空戦重視に再設計した機体。ミサイルは機内に納められ、正面からのみならステルスを自称して問題ないレーダー反射面積の小ささを誇る。しかし、候補機の中では基礎設計が最も古く、発展性を使い切った機体でもある。寧ろ、70年代設計の機体が最新鋭機と肩を並べている事実の方が驚きである。

F-18E/F スーパー・ホーネット

先に紹介した通り。一応F-X候補に残ってはいる。本機を運用している米海軍でも近くF/A-18C/Dを退役させてF-35を採用予定なので、本機とF-15Jの組合わせは色々と問題が有ると思う作者である。次期主力戦闘機なのに空対空戦闘ではF-15Jと同等、下手をすれば劣る。


戦車砲弾の種類

徹甲弾(AP)

装甲貫通を目的とし、砲弾の大部分を比重の重い金属で構成された砲弾。少量だが爆薬も入っており、信管で装甲貫通後に爆発する。戦車砲では第二次大戦以降は使われていないような気がする。質量で装甲を破るので垂直に落ちてきた方が貫通力がある。戦艦用の砲弾としては一般的。戦艦大和の九一式46cm徹甲弾で頂点を極め、大口径砲の衰退と共に姿を消した。

高速徹甲弾(HVAP)

砲弾の貫通力は「質量×速度の二乗÷正面積」で表すことが出来る。ならば、質量を増すより速度を増した方が効率が良いとの考えから生まれた砲弾。弾芯に劣化ウランやタングステンといった比重の重い金属を。周囲にアルミなどの軽量金属を用いている。近距離では初速の高さから高い貫通力を持つものの、質量が軽いので失速が早く、長距離ではAP弾に劣る。軽量金属部分は命中時に剥離するので、口径より数段小さい弾芯しか装甲を貫通しない。戦車砲では装弾筒を用いる砲弾の開発で廃れたが、機関砲弾などでは現役。

装弾筒付徹甲弾(APDS)

高速徹甲弾の理論を更に突き詰めた砲弾。発射と同時に周囲の軽量金属が分離し、弾芯のみが飛翔する。装弾筒は火薬の化学エネルギーを運動エネルギーに変換するための傘みたいな物体の事を指す。この類の砲弾は弾頭口径が砲身口径より小さいので、弾頭と砲身の隙間を埋めて、効率よく加速するのに用いられる。装弾筒が砲身を飛び出すと同時に分離するので、この砲弾が実用化された以降の戦車は引っ掛かるのを防ぐために砲口にノズルブレーキが付いていない。

装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)

APDS以前はライフリングによる回転で安定を得ていたが、この砲弾は安定翼にて安定を得る。砲弾の形からしてダーツに装弾筒が付いている様にしか見えない。平均して1500m/s、マッハ4の高初速。ここまで高速になると装甲に対する着弾角度が斜めでも構わず貫通する。滑る前に貫通するので砲弾を滑らせて弾いていた避弾経始は、砲弾が貫く距離が垂直よりは増す程度の意味しか持たなくなってしまった。砲弾は全くと言って良いほど回転しないので横風に弱い。理想状態で発射すれば1m近い均一圧延鋼板(以後鉄板)を貫通できる。ライフリングによる回転を与えられると寧ろ弾道が不安定になるのでライフル砲から発射するときは回転を抑える処置をする。低速だと従来の徹甲弾にすら貫通力で劣る。

榴弾(HE)

弾頭の内部の大部分を火薬にした砲弾。爆風の加害半径を増したいなら金属は極少量とし、デイジーカッターはこのタイプになる。しかし、通常の砲弾ではそれだけの爆発力を得られないので、普通は爆薬の周囲に金属を集め、それが爆発時に飛び散るようにする。戦車の上部装甲は通常、この破片に耐えられる程度の防御力しか有さない。

粘着榴弾(HESH)

榴弾なのに徹甲弾と同様、装甲への効果が期待できる砲弾。プラスチック爆弾など粘土みたいな爆薬を多用した弾頭が装甲にベチャリと張り付いて起爆。装甲の反対側の剥離を引き起こす。トリビアのバズーカvs10cm防弾ガラスで防弾ガラスは貫通を防いだが、多数の破片が飛び散るのが確認できる。あれが人員や機材に損害を与える量と速度で襲い掛かると思えば良い。一見すると装甲に穴も無く、撃破済みの車両には見えない。イギリスのチャレンジャー戦車が現役で使っている。

成型炸薬弾(HEAT)

現代の戦車砲で用いられるのは稀。高回転で発射されると効率が悪くなるので、ライフル砲からの発射には向かず、APFSDSに比べ複合装甲に対する威力も落ちるので滑腔砲でも使う理由は特に無い。砲弾初速と貫通力に関係性が無いので、主に低初速の無反動砲で用いられる。戦車砲としては多目的対戦車榴弾として榴弾としての役割も担っている。RPG-7クラスでも30cm以上、陸自の110mm個人携帯対戦車弾なら70cmの鉄板を貫通できる。


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