鳩山由紀夫首相が23日、再度沖縄入りする。米軍普天間飛行場の県内移設に理解を求めるのが目的だとすれば、徒労に終わるだけだ。2度も出向いて誠意を示したと言いたいのだろうか。それではアリバイ作りでしかない。
県民の多くが求めているのは「国外・県外移設」「無条件返還」であり、何度足を運んでも答えは同じだ。
首相は昨年8月、衆院選に向けた主要6政党の党首討論会で「(普天間飛行場は)最低でも県外移設が期待される」と言明した。全国の米軍専用施設面積の74%が集中し、さまざまな基地被害にさらされている沖縄県民の負担を少しでも和らげたいという純粋な思いから出た言葉だったと信じる。
米軍基地は有事の際、敵の攻撃対象になる。万一攻撃を受ければ多数の県民が巻き添えになるのは必至だ。基地の集中は生命軽視に等しい。これ以上の差別はない。
国は太平洋戦争で沖縄を本土防衛の「捨て石」にし、約9万4千人もの一般住民を死なせた。兵士らを含めると12万人以上の県人が犠牲になっている。
普天間飛行場を沖縄や徳之島に押し付けるのは、辺境の地を「捨て石」にして本土住民の安寧を保つ発想であり、戦前と大差ない。
沖縄は凄惨(せいさん)を極めた地上戦を経て米軍に占領された。米国の施政権の下、広大な土地が軍用地として接収され、自治権も抑圧された。
本土復帰後も巨大な基地は存続した。米軍人・軍属による犯罪は日常茶飯事で、米軍機の墜落や誤射なども起きている。基地周辺の騒音被害は甚大だ。
本土には「基地から経済的な恩恵を受けているからいいじゃないか」との意見も一部にあるが、県民総所得に占める基地関係収入の割合は約5%で観光収入の半分以下だ。むしろ立地条件のいい場所を軍用地に取られ経済発展を妨げている側面が強い。経済的利点を強調する人は自分の地元に誘致すればいい。
鳩山首相の初心は正しかったが、米国や日本の官僚に洗脳されたのか、「県内移設」に回帰した。
今や取り返しのつかない過ちを犯そうとしている。過失を犯したと分かればためらわずに改める姿勢が為政者には欠かせない。改めようとしないことこそ真の過失であり、将来に禍根を残す。鳩山首相は沖縄の現実を曇りのない目で見極め、初心に帰ってほしい。
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