7年前、中国東北部の旧日本軍の弾薬庫の跡地から毒ガスが漏れ出し、1人が死亡、43人が健康被害を受けた事故をめぐり、被害者らが日本政府に賠償を求めていた裁判で、東京地方裁判所は「被害者の精神的、肉体的な苦痛はきわめて大きいが、日本政府が事故を未然に防ぐことは困難だった」と指摘して訴えを退けました。
この事故は、7年前、中国の黒竜江省チチハル市の旧日本軍の弾薬庫の跡地で、地中に埋まっていた化学兵器から毒ガスが漏れ出し、作業員1人が死亡、こどもを含む住民43人が皮膚のただれや呼吸器障害などの被害を受けたもので、被害者や遺族が日本政府に14億円余りの賠償を求めていました。判決で東京地方裁判所の山田俊雄裁判長は「被害者が受けた生命や身体への被害は甚大で、精神的な苦痛もきわめて大きい」と指摘したうえで、「日本政府が、旧日本軍の毒ガス兵器が存在する中国のすべての地域を調査して、事故を未然に防ぐことはきわめて困難だった」と述べ、訴えを退けました。この事故をめぐっては、事故の2か月後、日本政府が化学兵器の処理費用の名目で3億円を支払うことで中国政府と合意し、すでに被害者に配分されています。