個人情報の売買、なりすまし、フィッシング、ウイルス、ネットストーカーにネットいじめ等々、近年、急激に増え続けているネット犯罪は、多種多様な形態を伴い、摘発体制すらままならないのが現状です。

そこで、livedoor×株式会社シマンテックでスタートしたニュース特集「ネット犯罪の恐怖から身を守る方法」では、ネット犯罪に関して専門家の方々にネット犯罪の実情や対策をインタビューし、ネット犯罪についての実態を追求します。

第6回目は、子どもをネット犯罪から守る方法について、書籍「ネット犯罪から子どもを守る―被害者にも加害者にもしないために親がすべきこと」の著者、唯野司(ただのつかさ)氏に寄稿いただきました。

――もしも我が子が犯罪に巻き込まれたら・・・・・・。 

通常の生活を送っていれば、子どもが犯罪に関わる可能性はまずありません。しかし最近はネットに対する正しい知識を持たず無防備に身をさらしている子どもが多く、非常に危うい状況にあります。我が子が犯罪の被害者、もしくは加害者になってもおかしくないといわれる中、どうすれば親は子どもを守れるのでしょうか?

――危険なサイトには近づけさせない!

ネットには子どもに触れさせたくない情報が飛び交っていることは、すでに周知のことです。アダルト向けの出会い系や自殺、暴力、麻薬など有害サイトはネット上から消えることはありません。
その現実を踏まえて、パソコンやケータイなど情報端末を子どもに与える親が、事前に対処しなくてはなりません。具体的にはパソコンならフィルタリングソフトの導入、ケータイなら業者のフィルタリングサービスへの加入といった手段をとることです。
こうして有害サイトから子どもを遠ざけたとしても、親は気を許してはダメ! フィルタリングは有効ではありますが、子どもをネット犯罪から完全に守りきることはできません。子どもに迫るネットの闇は、有害サイトが入り口とは限らないのです。

――ネット上で起きるトラブルの数々

2004年6月、長崎県佐世保市で女児殺害事件が起きました。加害者・被害者ともに小学6年生、白昼の教室で相手の首をカッターナイフで切り裂くといった残忍な事件でした。
この事件のきっかけは、2人が楽しんでいたブログでの交流です。きっかけは、ちょっとした言葉の行き違い。直接顔を合わせることができるクラスメイト同士なのに、互いに関係を修復することができず、殺人にまで至ったのです。加害女児は被害女児のブログのパスワードを知っており、相手のブログを初期化した翌日に犯行に及んでいます。仮想世界であるネットで相手を消しても、すぐに蘇ってくることから、完全に相手を抹消するために殺人という道を選んだのでしょう。
この事件は子どもがネットを"遊び場"にすることの危険度の高さを示すものでした。とはいえ、その後に事件を教訓とした的確なネット教育が学校で行われてきたでしょうか? 学校裏サイトの出現、ネットいじめの横行などを見ると、残念ながらYESとはいえない状況があります。

――ネットに散在する危険な罠

ネットを利用できる環境与えるということは、子どもが"情報を発信できる"ようになることを親は忘れてはいけません。
子どもとはいえ、ネット上に公開して良いもの・悪いものを判断する能力は不可欠です。名前、住所、電話番号そして顔写真といった自分の個人情報はもちろん、友人など他人の情報も安易に公開してはなりません。
アメリカではケータイで自分のセクシーな写真を撮って送る「セクスティング(Sexting)」が十代の若者の間で流行しています。恋人同士のときは愛の証であった彼女のヌード写真を、彼氏がケンカ別れした後に友人に転送し、それが学校だけでなく街中に広まったことから、彼女が自殺に追い込まれた、といった事件も起きています。いったん流出した個人情報は回収することができず、大変な事態を引き起こすのです。
また子どもたちに人気のブログやプロフは、多くが無料サービスです。そのため保護者に許可を求めることなく利用する子どもが大半です。ブログやプロフには掲示板機能があり、そこでは見知らぬ人との交流が簡単に始まってしまいます。互いにハンドルネームで呼び合っても、相手の素性はわかりません。テキストだけのやり取りに飽きたらず、直接会いに行ったら相手は大人の男性! そこで誘拐、監禁などの犯罪に巻き込まれてしまうというケースもあります。
ネットの使い方を間違うと、人生を狂わせてしまう危険性があることを親も子も知っておかねばなりません。

――メディアリテラシー教育は親の使命

最近は子どもの安易な行動が、大きな事件を招くケースも珍しくはありません。
たとえば実在する学校名を挙げて「幼女を狙います」と某掲示板に書き込んだ高校生が、威力業務妨害容疑で逮捕されるなど、子どもにはイタズラであっても、それでは済まされない事態へと発展します。
また学校裏サイトなどに友人を名指しで中傷したり、投稿サイトに隠し撮りした写真や動画を遊び感覚で投稿する子どもがいます。
こういった子どもは「ネットでは素性がバレない」と思い込んでいます。確かにネットは匿名性が高いのですが、完全に身を隠すことはできません。パソコンやケータイには、すべてIPアドレスが振られており、掲示板などに書き込みをすると、IPアドレスがログとして残ります。事件性があれば、警察がIPアドレスから身元を突きとめるのです。こうしたIPアドレスの仕組み理解すれば、軽率な行動をする子どもはいなくなるでしょう。
今やネットは私たちの生活から切り離せないツールになっています。子どもとはいえ、変わりはありません。子どもがネット犯罪の被害者にも加害者にもならないよう、必要なマナーと情報を見極める能力を身につけることが不可欠です。そういったメディアリテラシー教育を行うのは、ネット環境を与える親の使命なのです。

記事執筆:唯野司(ただのつかさ)氏
テクニカルライター

福岡県北九州市在住。主にパソコン・インターネット関連の記事や書籍執筆を行う。著書には『ネット犯罪から子どもを守る ~被害者にも加害者にもしないために親がすべきこと』(毎日コミュニケーションズ)、『トラブル解決&回避「ファイル」の仕組みのここがわからなかった!』(技術評論社)などがある。

このコーナーでは、ネット犯罪の予防と対策について様々なアンケートを行ないます。
みなさんが日々どのようにインターネットに接しているかをお伺いして集計し、その結果をこのブログ「ネット犯罪の恐怖から身を守る方法」の今後の記事に生かしていければと思っています。ぜひご協力をお願いいたします!

前回のアンケート「2010年度には、7.6兆円のEC市場 ショッピングやオークションで気をつけていることは?」では沢山の投票ありがとうございました!
最も多かった回答は「利用規約や注文画面での記載内容を確認する」でした。みなさん、慎重に購入されているようですね。記載内容で注意するポイントは、このサイトでも、行政書士の吉田安之氏へのインタビュー記事で触れていますので、ぜひご覧ください。

そして!
第3回目のアンケートは「子供がネットを使うときに注意させる事は?」です!
お子さまをお持ちのご両親にお聞きします。

インターネットの浸透や携帯電話の進化によって、ネットを使う子供が現在多くなりつつあると思います。そのような状況のなか、子供がネットを使うときにどのような注意をされているのでしょうか?
子供がネット犯罪に巻き込まれないために、特に注意していることを教えてください!

※2010年5月27日まで投票していただきたく、お願いします。
投票できるのは1つの回答のみとなりますので、よろしくお願いいたします。

■関連リンク
ケータイ・インターネットと子ども達

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このブログでは、多くのインターネットユーザーに、インターネット上の犯罪や、闇経済の危険性をより深く認識してもらうこと、そして、セキュリティ対策の重要性と具体的対策を提案することを目的として、ネット犯罪被害者の実情を取材したレポートや、セキュリティ対策の専門家からのアドバイスなどを連載いたします。