山崎元のマルチスコープ
【第128回】 2010年4月28日
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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

企業年金、次の一手は店じまい!

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相場と会計制度、投資家対策

 筆者は、現在が、DBの企業年金の店じまいに取りかかる絶好のタイミングではないかと考えている。相場が絡むことなので保証は出来ないが、今から作業に取りかかるくらいがちょうどいいのではないか、と思っている。

 先ず、投資環境の話をする(アテにしないで聞いて下さい)。

 世界の株価と日本の株価は、向こう1年後前後に転機を迎える可能性が大きいと考える。現在、欧州経済のもたつきや、米国の金融規制の行方など、株価に少々の懸念材料はあるが、仮に米国の金融規制の影響で投機的な資金の供給が減ることがあるとしても、米国の失業率が高い間はFRB(米連邦準備制度理事会)は金融緩和を継続せざるを得ないし、新興国を先頭に米・日と回復軌道に乗った経済を背景にして、企業の業績は、世界レベル、日本レベル双方で改善を続ける公算が大きい。当面は、まだ「鈍感なふりをしつつ」株式のリスクを取っていてもいいように思う。

 しかし、先日のG20の会合を前にIMFが発表したレポートが「世界経済は世界危機から当初の予測以上に好調に回復している」と言うように、現在から1年くらい後には、先進国、特に米国が金融緩和の「出口戦略」を具体化する頃合いになる公算が大きい。この場合、日本や米国はまだ回復半ばの印象かも知れないが、先行して経済を回復させ、いささかバブルの気配が漂いはじめている新興国の資産価格(根本的には先進国の金融緩和で支えられている)は大幅に下落する時期に入る可能性がある。

 その場合、日本の株価は、日本の景気がまだまだ回復過程にあると見える中で頭を打つ公算が大きい。民主党政権を単なるフロントとして、実質的に財務省が運営している日本の経済政策を考えると、景気が回復すると財政赤字を意図的に絞り始めるだろうし、これに日銀が早期引き締めの悪い癖を出した場合には、日本の株価はひとたまりもないだろう。

 こうした状況が何時起こるのか、それまでに株価はどこまで上昇するのかは予想できないが、仮に、現時点から株価が低迷するとした場合でも、DBの企業年金は手仕舞いに掛かる方がいいだろう。

 今後、会計制度は、企業年金の積み立て水準の変化を直ちに損益に反映させる方向に進むはずだ。付け加えると、会計制度に関係なく、今でも投資家は企業年金の状況を直ちに企業評価に織り込むことが正しい。

 また、株主から見たときに、企業がDBの企業年金のリスクを負っていることは、株主が年金運用のリスクを負わされることを意味するから、全く余計だ。多くの事業会社は運用が本業ではないのに、企業によっては企業の株式時価総額に匹敵するくらいの年金資産の運用リスクが存在する。株主は、企業の事業の普通株に投資したつもりが、投資資金の何割かが企業年金(バランス型の投資信託のようなものだ)に投資したのと同じことになってしまう。普通株に投資する積もりが、投資信託をセット販売されるのでは、投資家は迷惑だ。

 経営者にとっても、株主にとっても、DBの企業年金は邪魔な存在なのだ。ならば、金融危機の底から株価が回復しつつある今の時期に手を打つことにするのがいいのではないだろうか。これまでもそうだったように、将来はアテにならない。

 経営者は自分の会社が運用会社なのかどうかを今一度よく考えてみるべきだ。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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旬のニュースをマクロからミクロまで、マルチな視点で山崎元氏が解説。経済・金融は言うに及ばず、世相・社会問題・事件まで、話題のネタを取り上げます。

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