山崎元のマルチスコープ
【第128回】 2010年4月28日
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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

企業年金、次の一手は店じまい!

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「3度目の正直」その後は?

 企業年金が、不振から回復して一息つく状況は過去に2回あった。

 1度目は、98年度、99年度と続いた株価の上昇で、いわゆる「バブル崩壊」の損を取り返した時だった。前年まで暗い顔をしていた年金担当者が、急に浮き浮きしていたのが記憶にあるが、その後、2000年の春をピークに米国のネットバブルが崩壊し、年金運用は強烈な逆風を迎える。2000年度、2001年度、2002年度と3年連続で続いたマイナス利回りで多くの年金基金の財政ががたがたになり、厚生年金基金の代行部分を返上してリスクを縮小する基金が増えたり、厚生年金基金を解散して確定拠出年金(通称「DC」)に移行したりして、確定給付(通称「DB」)の企業年金を縮小する企業が相当数出た。

 この時点までの傷は各社大いに深かったのだが、この損を相当程度取り戻すことができる「風」が吹く。2003年に入ると、当初さらに株価は下がったが、りそな銀行救済の後に株価のリバウンドが始まると、その後日本株の株価は大きく戻った。これに、日本株が大いに活況だった2005年度の相場が加わって、サブプライム問題を迎える2007年の前には、損失の大半を回復しつつある企業が相当数あった。

 ところが、日本の企業年金は、サブプライム問題から金融危機に至る「100年に一度の危機」で再び痛めつけられた。今度は、日本だけでなく、世界の年金運用が傷んだのが少し慰めになったが、窮地に立たされたことに変わりはない。

 そこから戻ってきた「回復1年目」が現在の状況だ(2年目があるかどうかは不確定だ。筆者は「ある」と思うが、これはアテにならない)。

 企業としては、ここで2通りの考え方がある。

 一つは、年金運用は長期投資なのだから、将来を信じて、基本的にこれまでと同様な運用戦略を取りながら、DB(確定給付)の企業年金を続けるのが得策だというものだ。リスクの取り方に個体差があるが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や企業年金連合会のような公的性格を帯びた年金基金は、今のところ同様の考え方に立っているように見える。

 もう一つの選択肢は、損が縮小してきた現状からDBの企業年金を畳む準備に入るということだ。特に年金基金を通じて企業がリスクを取る運用を手仕舞う。具体的には、DBの企業年金を止めて、DC(確定拠出年金)に移行するのが一つの方法であり、企業年金の形は同様にしながらも運用リスクを母体企業が負わずに済む「ハイブリッド型」と言われるような年金に衣替えする方法もある。後者の場合、たとえば長期国債並の利回りで良くなるので運用リスクは大幅に引き下げられる。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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