農家へ獣医師「一緒に戦い抜く」 新富町文書

 牛・豚を無駄死ににさせたくないから、ワクチン接種後も消毒を続けてください―。新富町は23日、ワクチン接種が始まった町内の全畜産農家に、獣医師のメッセージを掲載した文書を配布した。殺処分による消失感や将来の不安で士気が下がる農家に対し、獣医師は感染拡大を防ぐための消毒徹底を呼び掛け、「最後まで、牛や豚たちに変わらぬ愛情をそそいでください。われわれも最後まで一緒に戦い抜きます」と結んでいる。

 同町ではこれまでに6農場で口蹄疫の疑似患畜が確認されており、町全域が「全頭処分」の対象となっている。23日は町内の6養豚農家でワクチン接種が実施された。

 町関係者によると、「全頭処分」という方針が明らかになって以降、農家から「結局殺処分になるなら消毒しても仕方ない」「ワクチンを打てば、もう病気にならない」という意見が出始め、通行止めの個所を消毒しないまま横切るなど高齢農家を中心に意識の低下がみられるという。

 町は同日、町内の全農家にワクチン接種時、接種後の注意点を紹介した文書を配布。その裏面に、現場でワクチン接種をする獣医師会児湯支部の青木淳一さん(38)の手記を掲載した。

 青木さんは「ワクチンを打つということは、口蹄疫にかかったと同じこと」と指摘。接種後の牛、豚が新たな感染源となる可能性を説明し「感染が広がり日本が口蹄疫の汚染国になれば、今まで殺処分された何万頭もの命も、ワクチン接種された牛、豚の命も“無駄死に”になってしまう。悲しむ農家を増やさないために消毒を続けてほしい」と訴えた。

 同町新田で約150頭の牛を養う長友淳さん(30)は「接種後に体力が落ち、病気がまん延した海外の例もあるので、2、3日はビタミン剤を与えるなど細心の注意を払いたい」とする。「動物を生かすための仕事を選んだ獣医師も精神的ダメージが大きいだろう。難局を一緒に乗り切り、今後も一緒に頑張ろうと声を掛けたい」と話した。

【写真】新富町が全農家に配布した文書。裏側には獣医師の手記が掲載された