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FIFA、ワールドカップを前に高まる存在感

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 【ロンドン】国際オリンピック委員会(IOC)よりは目立たないかもしれない。だが、国際サッカー連盟(FIFA)は、サッカー界を統括する唯一の国際的な機関として、これまで再三にわたって地域的内紛を切り抜け、世界的な経済危機も乗り切った。そして今、ほぼ間違いなく地球上で最も強力なスポーツ組織となった。

 それもこれも、すべてはワールドカップのおかげだ。ワールドカップは、4年に一度、世界で最も強いサッカーチームを有する国はどこかを決める大会であり、オリンピックに匹敵する世界が最も注目するスポーツイベントだ。

Reuters

スイス・チューリッヒにあるFIFA本部で行われた記者会見で、会計報告書をかかげるFIFAのブラッター会長

 ジョセフ・ブラッターFIFA会長は先月、FIFAの2009年度の年間収入が史上初めて10億ドル(約930億円)を突破し、1億9600万ドルの黒字となったと誇らしげに語った。

 英スポーツ情報配信会社スポートカルによると、前回のワールドカップ終了後から今回のワールドカップ終了までの4年間のFIFAの総収入は、予想どおり約34億ドルに達する見込みだという。これは、前回のワールドカップまでの4年間は23億ドルだった。

 FIFAは、国際的なサッカーの試合数の増加を受けて、それらを統括する団体として1904年にパリで設立された。

 基本的に各国のサッカー協会で構成された連合組織であり、会長をはじめ執行委員会メンバーは加盟協会によって選出される。現在、200以上のサッカー協会が加盟している。

 FIFAの影響力は広範にわたり、欧州サッカー連盟(UEFA)や北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)など、地域別のサッカー連盟の承認も行っている。

 また国際的なサッカーの競技ルールの調整や設定を行っている国際サッカー評議会(IFAB)にも4人代表者を送っており、競技ルールの決定をめぐり強大な影響力をふるっている。

 FIFAおよびブラッター会長は、世界各国の指導者や大物から厚遇を受けている。そのため、ブラッター会長は加盟協会に気前よく振る舞うことで、自らに対する異論を封じ込めているとする批判の声も上がっている。

 マーケティング会社インターナショナル・スポーツ・アンド・レジャー(ISL)の01年の倒産をめぐっては、さまざまな議論が噴出した。ISLはFIFA関連の商品化や商業上の権利を管理していたため、同社の破綻(はたん)はFIFAの財政に大きく響いた。ただし、実際の損害額については一切明確にされていない。

 ブラッター会長は、同社に関連して汚職の疑いを掛けられていたが、スイス検察当局は02年に捜査を断念した。これにより、同会長は同年後半に行われた会長選挙での再選を確実なものとした。

 こうした半面、「大胆かつ賢明な意思決定を行ってきたFIFAは称賛に値する」という声もある。こう述べるのは、かつてFIFAを相手取った裁判で原告側を代表した弁護士のアダム・サリバン氏だ。

 例えば、FIFAは現在、スポンサーに契約期間をワールドカップ周期の2回分(8年間)とすることを要求している。世界的な金融危機を経た今、この決断は一層賢明なものに見える。サリバン氏は、この決断がなければ、14年のワールドカップに向けた大手スポンサーからの契約確保は困難くなっていただろう述べる。

 FIFAは、ISLの破綻によって一次経営難に陥ったものの、うまく再起を果たした。

 とりわけテレビ放映権の販売による増収が大きく寄与している。今年6月に南アフリカのヨハネスブルクで開催されるワールドカップ終了までの4年間の放映権収入は、前回ワールドカップが開催された06年までの4年間と比較して、11億ドル増の25億ドルとなる見込みだ。スポートカルの副編集長、サイモン・ワード氏は、ワールドカップは「絶対にはずせない試合中継だ」と述べる。

 同氏によると、FIFAがテレビ放映権の販売方法を変更したことも収入増に一役買ったという。

 例えば、欧州では、FIFAはこれまでメンバーの大半が公共放送である業界団体ヨーロッパ放送連合(EBU)に権利を一括販売していた。だが、今回のワールドカップからは、そのやり方を変え、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国の欧州の5大サッカー市場に個別に放映権を販売し、その他の欧州各国についてはEBUと別途契約を交わしたという。

 ワード氏は「国ごとに個別に販売することができれば、放送局同士の競争が促されるため、料金を上げることができる」と述べる。

 それに加え、FIFAは携帯電話やインターネットでの放映権を含む、新たな収入源も活用しているとワード氏は語る。

 そして、これに、さらにスポンサー料が加わる。前述のFIFAの決定により、「オフィシャルパートナー」と呼ばれる主要スポンサーは、2周期連続で契約を締結しなければならなくなったため、スポンサー収入はさらに増加した。

 オフィシャルパートナーには現在、ドイツのスポーツ用品大手アディダス、米飲料大手コカ・コーラ、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイのエミレーツ航空、韓国の現代自動車、ソニー、米クレジットカード大手ビザらが名を連ねているが、具体的なスポンサー料については不明。

 巨額と思われるスポンサー料収入だけではなく、主要スポンサーの大半は他の協賛を通じてサッカーに深く関与している。スポンサーとしての地位を確保した後も、彼らはさまざまなイベントを通じて資金を投入することに熱心だ。その一例が、コカ・コーラが主催する、世界86カ国をワールドカップの優勝トロフィーが巡回する「コカ・コーラ FIFAワールドカップトロフィーツアー」だ。

 米スポーツマーケティング会社プレミア・グローバル・スポーツのロバート・タックマン執行副社長は、こうしたイベントは、スポンサーがいかに競技に深く関わっているかを示していると述べる。

 インフラをはじめとする、さまざまな懸念にもかかわらず、FIFAは2010年のワールドカップ開催地を南アフリカに決定した。だが、タッチマン氏は、マーケティングという点において、10年のワールドカップは非常に成功を収めており、FIFAの決断はやはり正しかったということになりそうだと語る。

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