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所長
神浦元彰
軍事ジャーナリスト
Director
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Military Analyst

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日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。(1999年11月)

2010.05.24

 米と合意 自衛隊と共用検討 普天間代替施設 

カテゴリ沖縄問題 出典 読売新聞 5月24日 朝刊 
記事の概要
日米両政府は23日、月内にまとめる米軍普天間飛行場移設に関する共同文書に、辺野古に建設する代替施設について、自衛隊との共同使用を検討すると盛り込むことで合意した。

施設内で事故や環境汚染などが起きた場合、日本側が関与しやすくなるとされ、県民の住民感情を和らげることにつながると判断した。

日本側は将来自衛隊が施設管理することも視野に入れているが、米側は慎重だ。
コメント
この新たな辺野古基地の自衛隊共用案は、沖縄を海兵隊の統一運用(陸海空部隊)が可能な拠点にする案に、自衛隊を施設の留守番警備役に使うという活用案である。

すなわち米海兵隊の基地警備に自衛隊を差し出すという意味である。

鳩山首相が「海兵隊は抑止力に必要と気がついた」と言うなら、その海兵隊を自衛隊が守れと突っ込まれた。

これは自衛隊の任務を根底から変質させる要素を含んでいる。

沖縄の海兵隊は沖縄を守ったり、日本防衛が主な任務でないことはすでに何度も書いた。

米大統領の命令で世界どこにでも出動し、与えられた任務をこなす緊急即応部隊である。(米議会の承認は必要ない)

そのような世界規模の紛争に対処する海兵隊を、自衛隊と基地を共用することは我が国の憲法の精神に逆行する。

真っ先に世界の紛争に派遣される海兵隊が留守をすれば、自衛隊にその留守の基地を守れというものである。

自衛隊は日米安保条約に基づいて米軍の陸海空部隊と連携しても、海兵隊とは任務の性格上から一線を画するべきなのである。

首相に海兵隊は抑止力として必要と吹き込めば、次は海兵隊基地を自衛隊が守れという対米追随が吹き込まれる。

嘉手納空軍基地を自衛隊が警備するとは別の次元の話なのである。軍事が正しく理解されていないと、このような誤魔化しが見抜けない。

これでますます私の辺野古移設案に反対する気持ちが強くなった。辺野古案は単に普天間飛行場の移設だけでなく、海兵隊の全部隊を運用できる第2グアム基地の機能以外に、自衛隊と海兵隊を一体化させる考えが隠されているからだ。

これで普天間移設問題は日本の国防の根幹を変質させる軍事問題に変質するだろう。そのことを米海兵隊は慎重になっているのである。
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