きょうのコラム「時鐘」 2010年5月24日

 台湾から富山空港へのチャーター便の客が覚せい剤所持で逮捕された。地方空港への覚せい剤密輸が問題視されているさなかの摘発だった

昨年3月には小松空港でも台湾から覚せい剤を運んだ男が逮捕されている。かつての貨物船や漁船を使った大量密輸に対する取り締まりが厳しくなり、最近は密輸量が小口・分散化し、成田や関西空港などを避けて警備の手薄な地方空港が狙われているのである

地方空港の国際化が進んでいることが背景にある。「地方の国際化」には華々しい経済や文化交流など表舞台の裏で、危険なバイキンも合わせて入ってくる現実がある。覚せい剤密輸事件はその象徴だろう

16世紀、日本は西欧と出会った。いわば最初の国際化時代だが、西洋は天使と悪魔の両方を日本に持ち込んだと言われている。天使とはキリスト教の教えであり、悪魔とは殺人兵器の鉄砲や梅毒などの伝染病である。国際化の窓口は琉球列島や九州といった「地方」だった

犯罪は、地方都市が国際化の最前線にあることを教えてくれる。バイキンの侵入を水際でふさぎ、免役力をつけることも必要だ。