【コラム】韓国史を必須科目に
問題は、歴史教育の現実に目をそらした教育科学技術部の一方的な行政運営にある。教育部は2007年の教育課程で、高校での歴史教育を強化する方針を決め、それに従い、高校1年の課程で韓国近現代史と世界史を結合させた「歴史」を必須科目として指定し、教科書検定審査を行った。ところが09年には「未来型教育課程」を導入するとして、「歴史」を必須科目から選択科目に変更してしまった。だが、これに対して歴史教育がおろそかになるとの批判が起こると、韓国史教育は断念しないという意向を示すため、科目名を「韓国史」に変更した。そして、既に「歴史」という科目名で検定を終えた教科書を、「韓国史」という科目名に合わせて作成し直すよう求めたのだ。
教育部のこうした姿勢を見ると、歴史教育に対する哲学と意志があるのか疑わざるを得ない。それでなくても韓国史は、間違った教育と入試制度のために、生徒たちの間で軽視されており、生徒たちの歴史知識も極めて低い。
ソウル市江南区のある高校教師は、「安重根(アン・ジュングン)“義士”を “医師”と思っている生徒もいれば、庚戌国恥(庚戌は1910年。日本による韓国併合のことを指す)が何なのか知らない生徒も多い」と語った。こうした状況が起こっているのは、現在の高校の歴史教育に構造的な問題があるからだ。
ソウルのある高校には、3学年で16クラス、およそ600人の生徒がいるが、韓国史を勉強している生徒は10人にも満たない。1年では近代以前の韓国史を必須科目として学ぶが、2年、3年になると、ソウル大を志望する生徒を除いては、韓国史を学ぶ必要がないからだ。大学入試では、短期間に勉強しやすい科目を選択すればよいため、分量が多く、出来事や人物、年代を覚えにくい韓国史をあえて選ぶ必要はない。
したがって、これまで高校1年で必須だった韓国史が、「2009年未来型教育課程」により、選択科目に変更されれば、事態はさらに深刻化するとみられる。生徒たちが選択しない韓国史の科目を、各高校の校長が学校で教えるわけがない。結局、入試で競争力のない韓国史が学校教育から消え去るのは時間の問題ということだ。
韓国ほど、学校教育において自国の歴史を見下している国はない。将来を担う世代に自国の歴史を教えるのは、国家の魂を伝えることにほかならない。今後さらに、韓国の若者が世界中にはばたき、競争する時代だ。そうなればなるほど、自己のアイデンティティーを持つことが大切で、そのためには自国史に対する知識が必要だということは言うまでもない。グローバル化の時代とはいえ、米国や中国、日本、ロシアが自国史を必須科目に指定し、「社会」から独立させているのはこのためだ。韓国の教育部も、早く目を覚まさなければならない。韓国史を必須科目に定め、大学入試でも韓国史を必須科目とすることを再度検討してみる必要がある。
金泰翼(キム・テイク)論説委員
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