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音楽格差、地方に響く ホール助成の行方〈上〉(2/2ページ)

2010年5月17日10時36分

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写真:日本フィル鹿児島公演本番前のロビーコンサート。多くの観客が生の演奏を少しでも身近に感じようとしてか、にじり寄って聴いていた=吉田写す日本フィル鹿児島公演本番前のロビーコンサート。多くの観客が生の演奏を少しでも身近に感じようとしてか、にじり寄って聴いていた=吉田写す

■楽団ツアーに黄信号

 地方格差が如実に表れているのがオーケストラだ。日本オーケストラ連盟の2009年度調べでは、加盟団体による鹿児島でのオケ公演は年間8回。広島では年間114公演あるが、鳥取は9回、島根では10回と近隣でも大きな差がある。10楽団がひしめき、年間1033回の公演が開かれている東京との格差はなおさら広がる一方だ。

 オーケストラがひとつしかない九州で、1975年から年に1度ツアーを続けているのが日本フィルハーモニー交響楽団だ。今年2月で35回目を迎えたツアーは3年前、文化庁の助成対象になり、約80人の楽団員の移動費、楽器運搬費など2900万円分の補助を受けていた。しかし、文化庁の新規事業誕生にともなってこの助成は撤廃され、ツアー継続に黄信号がつく。

 楽団を招じ入れてきた鹿児島の実行委員会の真辺典子事務局長は「主婦や高齢者は他県の公演に行くことなどできない。日フィル公演は、私たち九州の住民にとって、オーケストラ文化のよりどころ。ぜひ続けて」と訴える。

 そんな声に応え「望んでくれる人たちのために演奏せずして、何のためのプロオーケストラか」と、平井俊邦専務理事(元東京三菱銀行取締役)は赤字覚悟で続行を決断した。しかし、移動費やギャラなどの赤字分は日本フィルが負担し、受け皿の地元実行委も高齢化が進む。共にギリギリという現状で、今後に不安を残したままだ。

    ◇

 劇場やホールなどのハコと、オーケストラや声楽家団体といったソフトが、地域社会と今後、どんな創造的な連携ができるのか。次回は、双方向での創意工夫の事例を紹介する。(吉田純子)

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