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質問なるほドリ:過去の事件も時効が廃止されるの?=回答・石川淳一

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 ◆過去の事件も時効が廃止されるの?

 ◇施行時に未完成なら適用 遺族に配慮、憲法上可能と判断

 なるほドリ 重大事件の公訴時効見直しが法制審議会(法相の諮問機関)の刑事法部会で決定されたね。過去の事件にも適用されるようだけど、なぜなのかな?

 記者 今回の見直しは、殺人など凶悪事件に遭った被害者の遺族が、時効廃止を求めて声を上げ始めたのがきっかけです。05年に刑事訴訟法が改正され、殺人などの公訴時効は15年から25年に延長されました。この時は、過去の事件に適用するという発想はありませんでした。05年の刑訴法改正前に起きた事件の時効は、今も15年のままです。今度は時効を迎えていない過去に起きた事件の被害者遺族の思いにも応えるため、法改正前の未解決事件にも廃止や延長を適用すべきだとしました。

 Q はるか昔の事件も一気に時効がなくなるの?

 A そうではありません。部会は、過去に起きた事件でも、施行までに時効が完成していない事件に適用すると定めました。既に時効が完成してしまった事件は仕方ありませんが、今も時効を迎えていない事件は、時効完成間近の事件も含めて新制度が適用される方向です。

 Q 時効未完成の事件も含めるのは当然だと思うけど。

 A 被害感情からすればそうですが、今回は、憲法39条に定められている「遡及(そきゅう)処罰の禁止」を巡って議論が起きました。時効完成を狙って逃走中の犯人にとって、時効が廃止されれば不利益となりますよね。そのため、時効未完成事件への適用は違憲だとの意見も出ました。最終的には、刑を重くするわけではなく、時効完成を狙って逃走する犯人を法が保護する必要もないだろうとの考えから、憲法上可能との結論に至りました。

 Q そもそもなぜ時効という制度があるのかな。

 A 公訴時効がある理由は(1)証拠の散逸(2)被害者・社会の処罰感情の希薄化(3)一定期間犯人が処罰されなかった状態の尊重--が挙げられます。(3)は加害者の権利を考慮するものですが、犯人が明らかになったのに処罰できないのはおかしいという国民感情の高まりもあります。それが今回の制度見直しに結びつきました。より多くの事件で逃げ得を許さないという考えが、未完成の事件への適用につながったと言えます。(社会部)

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 〒100-8051(住所不要)毎日新聞「質問なるほドリ」係(naruhodori@mainichi.co.jp)

毎日新聞 2010年2月9日 東京朝刊

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