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2009-12-03
「男はケモノ」が「女性の自衛」と結びついていること自体が差別
「男はケモノ」という論法は確かに問題かもしれませんが、それ以上に「男はケモノ」ということで何を言おうとしているのかがもっと問題です。
「強姦するのが男の性なら去勢するのが自己責任」は、単なる極論に極論をぶつけているわけではありません。「強姦するのが男の性」いわゆる「男はケモノ」という前提を、「だから」女性は自衛しなければならない、という結論に接続させること自体が女性蔑視的である、ということを暴露しているのです。
「男はケモノ」であるとしましょう。世の中に、人間を手当たりしだい襲うような「ケモノ」がうろうろしている場合、まっさきに対策されるべきは「ケモノ」の排除です。たとえば野犬が増えて人々の身が危険になった場合、ふつうは野犬を捕まえて隔離するか、酷いのになると殺してしまったりするわけです。「自衛」はこの野犬対策というのがいまだ貫徹しない場合においてはじめて、緊急的にやむをえずやらなければいけない対策であって、目指されるべきは、野犬がいない、つまり「自衛」の必要がない社会です。野犬対策会議において、「そんなことより「自衛」しようぜ!ひとりひとりがマッチョになれば野犬も恐くないよ!」といったことをわめきたてる人がいたら、われわれは彼に空手道場か何かを紹介して、丁重にその場からお引取り願うでしょう。
ところが「男はケモノ」論はこれとはまったく逆の帰結をもたらします。「男はケモノ」といって、この世の中があたかも野犬が跳梁跋扈している社会であるようにみなしておきながら、その対策は女性の「自衛」の問題になってしまうのです。論理的に考えれば、「男はケモノ」であるならば、野犬が駆除されるのと同様に、去勢されるか、少なくとも行動の制限(たとえば、深夜に出歩くことを禁止する、混雑時は電車に乗らない)が、まず男の側にもたらされるのが筋です。しかし、「常識」は、これが女性の「自衛」の問題になるのです。「常識」が間違っているのです。
http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20080213/p1
まあ何が言いたいかと言うと、白人に席を譲らなかったら逮捕されるのが理不尽なのと同様に、夜に街を遊んでいたらレイプされるのも理不尽なわけです。しかし、社会の理不尽さには文句を言ってはいけない決まりが日本社会にはあります。
■「米兵が悪いのは当然として」って本当?
http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20080218/p1
「米兵が悪いのは当然として」「少女にも責任が」は、間にある社会の問題をスルーすることで成り立っている。被害者少女の視点から出発すれば、「米兵が悪いのは当然として」であり、米兵の視点から出発すれば「少女にも責任が」となる。まだ根強く存在する「それは単に自衛策の話をしているに過ぎない」という反論が、まさに象徴的である。なぜ自衛が必要か?そのような社会の体制は変わることが無いからだ*5
実は前回のエントリでいろいろ例を出したのは、この問題を指摘したかったからであった。ローザ・パークスが白人に席を譲らなかったから逮捕されたのは、ローザ・パークスが悪いのか警察が悪いのか。いろいろな視点でいろいろなことが言えるだろう。しかし本質は、その裏にある人種差別の構造が一番問題なのだ。
■
http://b.hatena.ne.jp/flurry/20090119#bookmark-11733215
芥川の『藪の中』を思い出しました。「それぞれのひとに真実がある」「事実の解釈は多様である」と見せかけつつ、実のところ、作中のすべてが「女の奪い合い」や「妻の不貞」というもので媒介されている点において。
「好きな時間に出歩くこと」「好きな服を着ること」が、もし「ケモノ」のせいで阻害されているとするなら、「好きな時間に出歩くこと」「好きな服を着ること」を守るために「ケモノ」を駆除するのが正当な手段であって「好きな時間に出歩くこと」「好きな服を着ること」が制限されてよいのだ、という結論にはなりえません。ところが、この問題に対して「交通安全のたとえ」を持ち出したがる人は、そうは考えていないようです。交通ルールの中にもくだらないものは多々ありますが、たとえば赤信号のときには道を横断しない、というルールに一定の合理性はあるとみなしましょう。しかし、その場合、「好きな時間に出歩くこと」「好きな服を着ること」が、「赤信号のときに道を横断する」ことと対応していることになってしまいます。この人たちは、単なる「自衛」の話をしているのではなく、「ケモノ」に襲われる人々――多くは女性――は、一定の規範(夜は出歩かない、服装は目立たないものにする)に服すべきである、という(意識的あるいは無意識的に)内面化した規範を語っているにすぎないのです。リスクテイクがどうとか言う人もいますが、それはリスクを引き受ける側は常に一方的であるという事実を見落としているか、それは当然だと思っているのです。
「自衛」論は、一見価値中立的な議論をまとって展開されます。しかし、たとえばさんざん指摘されているように「扇情的な格好」と「レイプ」は結びつきません。「自衛」論のほとんどは具体的な情況から帰納されたものではないのです。「自衛厨」は、喧々諤々、百家争鳴的に「レイプにあわない」方策を提案しているようにみえて、実はその議論のすべてが、「女性の不貞」というものにおいて媒介されているのです。
「レイプを防止するためにまずレイプしうる男性の行動をガチガチに規制しよう」という帰結に同意しないのならば、その人たちこそ、「男はケモノ」というレトリックを使ってはいけないのです。にもかかわらず、むしろ「ケモノ」とみなされる側によって「男はケモノ」説が積極的にとなえられています。それによって自分たちの行動が制限されうるとはみじんも考えていないのならば、その人は結局のところただの男尊女卑野郎なのです。
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