女子プロレス25歳定年制度について(中編)   

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須山浩継(すやまひろつぐ)
1963年広島県出身。大学卒業後、5年間のサラリーマン生活の後に「趣味で食えたらラッキー」と、プロレス&格闘技を主に取材対象とするフリーライターに。 プロレスに関してはもっぱらインディー系と女子が専門分野で、メジャー団体や選手の取材経験は非常に少ない特殊マスコミ。 現在はサムライTVの怪番組「インディーのお仕事」の企画構成、大日本プロレス中継の解説などを担当。

女子プロレス25歳定年制度について(中編)   

2010年05月21日アダルト

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いいことづくめのように思える女子プロレス25歳定年制は、どうして無くなってしまったのでしょうか。理由はいくつかあるのですが、93年から95年にかけての女子プロレス対抗戦ブームと、その後の多団体化が大きかったように思えます。

93年からそれまで団体間の交わりが無かった女子プロレス界で、老舗の全日本女子プロレスを中心とした、団体対抗戦が盛んに行われるようになります。これが予想を上回る大人気を博して、女子プロレス界はビューティー・ペア、クラッシュ・ギャルズ時代に続く3度目のブームを迎えます。このブームの主役となったのが、クラッシュ・ギャルズに憧れて女子プロレスの門を叩いた世代の選手たちでした。

彼女たちの多くは85年から88年あたりにデビューしており、対抗戦が始まった頃は20代前半から半ば。キャリアは5年から8年といったところでしたが、当時の全日本女子プロレスは年間250大会以上の興行を開催していたので、実質的には現在の女子プロレスラーの倍以上の経験値を積んでいました。つまり多くの選手が精神的にも肉体的にも脂が乗り切っていた時だったのです。

このブームの主役となったのが北斗晶でした。その北斗が93年の時点で実は25歳だったのです。本人が語るところによれば、対抗戦ブーム前には肩たたきに近い扱いも受けていたそうですが、伝説の神取忍との死闘で一気に時代の主役に躍り出ます。その人気たるや凄まじいものがあり、全日本女子プロレスも25歳だからという理由だけでは、おいそれと肩を叩けなくなってしまいます。

その後も年を追うごとに25歳を超える選手は増えていったのですが、いずれも対抗戦ブームの中心選手たちだった上に、すでに北斗という先例ができていたこともあって、彼女たちの多くも現役を続行することになります。結果、この数年間で女子プロレス界から25歳定年という不文律は事実上消滅してしまいました。

さらに95年に長与千種をエースとしたGAEA JAPANの旗揚げを皮切りに、女子プロレス界には毎年のように新団体の旗揚げが続きました。93年には女子プロレス界はは全日本女子、JWP、LLPWの3団体だったのですが、5年後の98年には7団体にまで増えてしまいます。

各団体とも当然のように新人の育成にも力を入れたのですが、何しろ団体数が倍以上になってしまったので、どの団体も基本的に選手数は不足気味でした。こうなってしまうと、いよいよ25歳定年などと言っていられなくなってきます。単に数の問題だけでなくベテランの知名度や経験を積んだファイトは、各女子団体にとっては手放せないものになっていたからです。

「女子プロレスはいつまでもベテランが幅をきかせて、なかなか世代交代が進まない」というイメージは、この7団体時代に定着することになります。今から考えても狭い日本に女子団体が7つというのは無理がありましたし、誰もが「そのうちどこかが潰れるだろう」と考えていました。ところが各団体とも予想以上に踏ん張って、この7団体時代は2005年までかれこれ7年も続くことになります。

7団体時代は2005年に全日本女子プロレスとGAEA JAPANの解散という形で終焉を迎えます。それまで女子プロレス界の中心を担ってきた2つの団体が無くなってしまったことで、それまでの女子プロレスラー不足が一転して、今度は上がるリングの方が不足するという事態が訪れます。つまり選手にとってはインフレ状態がデフレ状態に転化したワケです。

この年から現在までの数年間で多くのフリー選手やベテラン選手が事実上淘汰されました。もはや知名度や過去の実績だけでは、海千山千のベテラン選手も健全な現役生活を継続していくことがむつかしい時代になったのです。実際、現在の女子プロレス界ではキャリア20年を超えるベテランが中軸を担っている団体は少数派になっています。

ならば余計に今こそ25歳定年制度を女子プロレスに復活させるべきだ!

いやいや、話はそう単純なものでもないのです。(次回に続く)


※こちらとは別に「須山浩継伯爵の身勝手日記」というブログの方もご愛読頂ければ幸いです。またhirotsugukunというアカウントでツイッターもやっております

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