◇夏場所14日目
すでに14度目の優勝を決めている横綱白鵬(25)=宮城野部屋=は大関琴欧洲を寄り倒して14連勝し、初場所からの連勝も31に伸びた。千秋楽に自身初となる2場所連続の全勝優勝を懸ける。大関魁皇(37)=友綱部屋=が安美錦を送り出して勝ち越し、通算1000勝にあと1とした。大関琴光喜も大関日馬富士を押し出して勝ち越し。新大関把瑠都は北太樹を上手投げで下し10勝目。関脇稀勢の里は勝ち越しを決めた。
◆執念ダメ押し
魁皇は立ち合い、真っすぐ当たった。左をこじ開けようとした圧力で、安美錦は横を向く。右手を相手の頭を押さえて送り出した。だが、安美錦は土俵の外に出ておらず、魁皇は再度向かっていった。安美錦は戦意喪失していたが、今場所の魁皇には相撲への執念が感じられ、珍しいダメを押す形になった。
「きょうは攻めようという気持ちがあって、最後はああ(いう形に)なった」と魁皇は振り返ったが、いつものように首をひねる。「気持ちと体がかみ合わないよ」と。それはずっと続いている。
この13日間は腰にテーピングがなかったが、この日は例の紺色まわしの下にでっかく張られていた。「昨日の夜から痛みが激しいんだ。少しでもいい状態で土俵に上がれればと思ってね」。満身創痍(そうい)で悪くないところを探すのは難しいくらいだ。
とにもかくにも8勝(6敗)まで積み上げて、9場所連続勝ち越し。通算勝ち星も999勝で、いよいよ夢の1000勝に“王手”を懸けたが、「勝ち越しにほっとした気持ちはある。1000勝? そんなに言われることではない。考えていない」と魁皇はさらりとかわした。前日は記録についてちょっぴり意識していると発言したが、この日は乗ってこなかった。
1988(昭和63)年夏場所で西序ノ口15枚目に本名の「古賀」として番付に初めて名前が乗り、2日目に小林に勝ってから積み上げた勝利。この場所に一緒にデビューした曙、若乃花はとっくに角界を去り、貴乃花は協会の理事として活躍している。しかし魁皇は37歳になった今も現役で大相撲を支えている。
武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)は魁皇を絶賛した。「大したもんだ。魁皇の場合、相撲の内容どうこうではない。一生懸命やっている姿を見てもらえばみんなが感動するだろう」
いよいよ大台の1000勝。「思い切っていければそれでいいんだ」。魁皇は、琴欧洲戦で、千代の富士(現九重親方)に次ぐ2人目の偉大な記録に挑戦する。 (近藤昭和)
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