◆オリックス10−6阪神
沸き上がる怒りを抑えきれなかった。古巣・阪神との初対決を制した喜びはみじんもない。矛先は5回に急きょ崩れて5失点降板し、あわや8点リードからの大逆転負けを演出しそうになった先発のエース金子千。試合後、岡田監督は「勝った気がしない。開幕投手がああいうことになるんだから、そらもう信じられん。阪神の印象? そんなん全然見てない。自分とこのことで精いっぱい」とまくしたてた。
待ち望んでいた一戦だった。選手として14年、指導者として11年、計25年間、身も心もタテジマに染まった人生だった。著書『オリの中の虎』で「阪神に関してやっていないことがひとつだけあった。それは敵として阪神を倒すこと」と、オリックス監督を引き受けた最大の理由を明かしていた。前日には「楽しみちゃう奴おらんやろ」と武者震いを隠さず、試合前には相手が先発投手を読み切れなかったことにほくそえんでいた。
それだけに、金子千の降板以降は鬼気迫る采配(さいはい)を振るった。5人の救援投手をつぎ込み、5回には日高が「仰木監督のとき以来」と驚いたイニング途中での捕手のみの守備交代も見せて白星をもぎ取った。「今日のはゲーム違うで、こんなん。野球になれへん。考えられへんくらい腹立ったよ」。最後まで喜びは見せなかった指揮官に、誰もがまるで敗戦のような表情で球場を後にした。 (宮崎厚志)
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