きょうのコラム「時鐘」 2010年5月23日

 子どもたちの行儀の悪さが目立つ時代である。電車の中でも繁華街でも、よその子を叱る大人がいなくなったからだともいう

20年ほど前にはいた。高校相撲金沢大会の土俵下に陣取っていた。よその子も叱る痛快な老役員だった。選手がタオルをかぶって呼び出しを待ったり、無駄話をしているとバシッと叱った。その後、静かに土俵を掃き清めてくれるのだった

相撲大会は教育の場であり人生の道場だった。卯辰山会場になって50回目の大会になる。半世紀で高校生の体格は大きく変わった。選手の意識はもっと変わった。立ち合いの乱れが気にかかるここ数年である。審判団の注意もなかなか浸透しない

練習場へ行くと監督の指導に素直にうなずく選手の姿があるが、勝ちにこだわる本番では消えてしまうのだろうか。きちんと土俵に手をつき、呼吸を合わせ、びしっと立つ勝負を見せてほしい。それでこその相撲道である

スポーツ観や教育観がいくら変わろうと、若葉の季節に若者がぶつかり合う高校相撲は日本の宝である。役員と選手、ファンと応援団も呼吸を合わせて伝統を守って行きたい。