我慢強くパーを積み重ねていた金田に最高のご褒美だ。8Iを手にした打ち下ろしの12番(パー3)。青空に飛び出したボールはピン手前50センチに落ち、ワンバウンドしてカップに消えた。
「普段は低い声ですけど、あの時は高い声で『キャー』ですね。入るところもきれいに見えた。ブレていたショットがあの時だけピン筋に打てた。ちょっと感動です」
ジュニア時代も含め、試合では初のホールインワン。プロ初となるイーグルはあまりに劇的だった。アマ時代から数多くのツアーに挑戦し、優勝争いも演じた。だが、08年のプロテストは1打及ばず不合格。最終QTをトップ通過し、プロとなった昨季も出場34試合で14試合が予選落ち。最低目標だった賞金シード権も逃した。
かつての天才少女はもがき苦しんだ。「昔のように何も考えずにゴルフがやれなくなった」と技術的にも精神的にもスランプに陥った。今季もこれまで予選通過は1試合だけ。「でも、今は昔のように自分の感覚だけを信じてやるようにしている。トレーニングもやっているし、少しは大人になったんですよ」。過去に物議を醸した自由奔放な言動も最近は封印。それでもキンクミはキンクミだった。
14番(パー4)でバーディーを奪い、自身3度目のボギーなしで通算4アンダー。順位も前日の20位から10位に上げた。「今の気持ち? 最高ポーかな」。半年ほど前から語尾に「ポー」をつけての感情表現が、友人たちとの間で流行。主催者推薦による8試合など出場機会が限定される苦しい今季も、遊び心は忘れていなかった。
「3位以内に入れば来週の試合に出られる。まずはそこですね」。2位とは射程内の4打差。たくましくなった“ギャルファー”が地元・愛知で天才少女と呼ばれたかつての輝きを取り戻す。(臼杵孝志)