海外脱出ブログ
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フィリップ・トルシエ(元日本代表監督)
「日本には守備の文化がない」

この本のおかげで、トルシエが何を言っていたのか、やっとクリアになった気がします。



今回のワールドカップ、日本では盛り上がっていないなどと言われています。しかしそれは、サッカーファンが減っているのではなく、これまでの岡田ジャパンを見たうえで、どうも期待できない、いや期待できないというより、とても勝利のための最善の方法をとっているようには見えないので、何ともいえない脱力感を感じているというのが実情ではないでしょうか。

その、モヤモヤしたものを、本書では、イタリアの監督たちが見事に説明してくれています。

守備とは、ただやみくもに、体力の続く限りボール保持者を追いかけ回していればいいのではなく(それはプレスとは呼ばない)、きちんとした方法論・セオリーがあります。
岡田ジャパンは、その基本ができていない、というのが本書の内容です。

岡田ジャパンの7試合
・ワールドカップアジア最終予選 対ウズベキスタン(ホーム)
・ワールドカップアジア最終予選 対オーストラリア(ホーム)
・ワールドカップアジア最終予選 対ウズベキスタン(アウェイ)
・ワールドカップアジア最終予選 対カタール(ホーム)
・キリンカップ2009 対ベルギー
・国際親善試合 対オランダ
・国際親善試合 対ガーナ
について図解でダメ出ししているのですが、解説は詳細かつ具体的です。

「プレスをやるのは当たり前のことだ。問題は、それをどのゾーンで、どのように行うかであり、それをセオリーという常識に照らせば、今の日本代表のプレスは、残念ながら非常識の範疇を出ない」
「ここに右のアタッカーがいないのはなぜだ?」
「メチャクチャだ・・・プロのDFが、しかもA代表のDFが、なぜこんなポジションを取るのだろうか・・・」
「次に起こり得るリスクを予め想定したポジショニングは、たとえばイタリアではU12のカテゴリーで叩き込まれることだ」
「ボール保持者に対して2,3人が寄せて行くことを連動というのではない」
「相手が前を向いてフリーでボールをキープしているときは、決して無闇に突っ掛けてはならない」
「日本が1対1に弱いとするならば、単に技術面だけでなく、フィジカルの弱さをカバーするために数的優位を確保しなければならない」
「プレーとは直接的に関係のないこのようなエリアを「死のエリア」と呼ぶが、サッカーの常識からすれば、内田はそこにいること自体が無意味だ。内田は、あの遠いエリアで何を守っていたのか」
「この場面における阿部のポジショニングは理解に苦しむものがある。阿部はこんなに離れたゾーンで一体何を守っているのか」
「これは予防的カバーリングの欠如という話につながってしまうが、やはり日本のサイドバックにその概念は存在しないのだろうか」
「自らの持ち場に穴が出来ることを顧みず前に出て行った長谷部と遠藤は、その穴を敵に突かれている以上、猛然と戻るべきだ。ところが、2人ともそんな素振りさえ見せていない」
「ここまでセオリーを無視したポジショニングは、イタリアではアマチュアの試合でもなかなか見ることはない」



英語をサッカーで勉強しよう
ベッカム、ランパード、ベンゲル、セスクのインタビューを収録!



「この田中達也のランニング(DFラインでボールを回しているときの猛チャージ)が決して報われないという点。まったく意味のない動きだ。ただ疲れるだけで、非効率極まりない。こうした動きをFWに要求しているとすれば、それは直ちに止めるべきだろう。どう考えてもこれでは90分間体力が持つはずがない」
「数的不利の状況でボールを奪いに行っても、それは限りなく高い確率で失敗に終わる」
「中村俊輔のパスは、やはり精度が高い。だからこそ彼の使い方を工夫する必要がある。トップ下か右サイドのどちらかに専念させるべきだ。彼に過度な負担を課さないことが重要であることは間違いない」
「日本のエース(中村俊輔)であるはずの彼がボールを奪った位置が右SBのポジションという点(中略)ボールはウズベキスタン陣内で右サイドを駆け上がっていた中村俊輔に渡っている。しかしながら、問題はこの一連の流れで右SBの位置から前線まで長い距離を走ってきた中村が完全に疲れきっていることだ。まさに得点機にFWがガス欠状態になるという典型的な場面だ。これこそ、非効率な守備が得点力不足の原因であることの証だ」
「日本のFWのクオリティは高いレベルにあると思う(中略)問題は、その能力を活かす前に彼らを無駄に疲れさせてしまう戦い方にあるのではないか」

「あらゆる局面、あらゆるゾーンで、ボールを持った相手に対して日本の選手が突っ掛けて行くシーンを目にする。しかしそれがかわされ、次の瞬間、必ずスペースを相手に与えてしまい、結局そのスペースを埋めるために慌てて誰かが戻る羽目になる。そういった場面が余りにも多い。これでは、選手たちの疲労が蓄積されるペースが早くなってしまうのは当たり前のことだ」
「日本は、積極的な姿勢というものを間違って解釈している」
「オランダからすると思う壺の展開だった(中略)日本のFWは果敢にオランダのDFラインにプレスを仕掛けるが、しかしMFとDFのラインは上げてこないので、少しずつだが日本の布陣全体が間延びしてくる。そこに疲労という要素が加味されれば、その間延びはさらに大きなものとなる」



『テクニックはあるが、サッカーが下手な日本人 日本はどうして世界で勝てないのか?』
スペインでコーチングライセンスを取得し、現在はFCバルセロナ関連組織であるバルサスクールのコーチである著者の、バルサ式日本サッカー改革論。



「CBである以上、まずここは自分の持ち場に帰るべきだ。これも、CBとしての自覚が低過ぎると言わざるを得ない。さらに信じ難いのは、それ以降も闘莉王にDFとしての動きが見られないことだ。(中略)闘莉王は終始ジョギング程度のスピードで何となく戻っているだけだ」
「一体、阿部は何の意味があって前に歩を進めたのか。守備的MFの選手が、これだけ広大なスペースを中盤で空けるなど、考えられない」
「ロングボールに対して、往々にして日本のDFラインが下がり過ぎてしまう」
「このデ・ゼーウ対闘莉王の1対1はサイドでの攻防なのだから、ここでDFに求められるのは相手を絶対にピッチの中央側に反転させないことだ。だが、それを闘莉王はまるで出来ていない(中略)さらに重要なポイントは、デ・ゼーウに反転を許した後の闘莉王の動きだ。(中略)闘莉王は実に緩慢な動きで戻っている。これほどの初歩的ミスを犯しておきながら、彼は事の重大さに気付いていないのではないか」
「またしてもCBの闘莉王がスルスルと前に出て行く…。言うまでもなく、この不可解な動きによって日本の最終ラインにはポッカリと穴が空き…」
「また闘莉王だ。これも完全にリスクマネージメントを欠いたプレイだと言わざるを得ない」
「仮に中澤のポジションで守っていたのがイタリアのカンナバーロであってもスペインのプジョルであっても、おそらくギャンに振りきられていただろう。(日本の報道では中澤1人だけがこの失点の原因とされていたことを筆者が伝えると)だとすれば、それは日本に守備の文化がないことの証となってしまう」



とにかく、本書は目からウロコでした。

■関連書籍
本場イタリアのゾーンプレスを構築するための1年分の練習メニュー244種!



一応、日本代表には、まだ本番までに時間があります。
実戦を通じて問題点を修正する機会も残されています。

■テストマッチ日程
5月24日:対韓国 (埼玉スタジアム)
5月30日:対イングランド (オーストリア・グラーツ)
6月 4日:対コートジボワール (スイス・シオン)
(グループリーグ第1戦、日本−カメルーンは6月14日)

これらの試合を、カミカゼ・プレスなどと呼ばれる日本のディフェンススタイルがどう修正されたのか、に注目して見てみるのも面白いかもしれません。


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