韓国、日本、中国が入り乱れての「造船三国志」の行方はどうなるのか。国内の造船業界屈指の論客であり、中国での大型造船所の合弁事業を成功させた国際通でもある川崎造船の谷口友一社長に聞いた。
―― 新規の造船受注はほとんどない状況が続いています。今後の需要回復にどのような見通しを持たれていますか。
谷口 慌ててもしょうがない。造船は景気の循環に左右される産業であり、今は我慢の時代になっているということです。
良く見れば分かりますが、韓国の方がはるかに厳しくて深刻な状況にあります。予想されたことですが、生産能力という「胃袋」を大きくすれば、ちょっと不況になると、すぐにひもじくなってしまう。
韓国にしても、仕事がなくて、餓死してしまうような状況になるかもしれません。韓国は最大手の現代重工業にしても、生産現場において正規社員の比率が日本よりも、かなり高いでしょう。だから、人員削減のようなリストラも簡単ではない。
商談が動き出すのは「リーマン後」2年半
―― 韓国の造船業界はこの2〜3年で、生産能力を一挙に2倍以上も拡大しています。日本の2倍の4000万総トン以上は生産できるはず。過剰供給になる以上、安値受注に突っ走り、日本にも影響が出てくるのではないでしょうか。
谷口 韓国は仕事確保のために必死なのかもしれませんが、日本は大幅な能力増強に踏み切っていません。国内では2012年末ぐらい、うちの中国の合弁造船会社は2013年まで受注残があります。
だからこそ、焦らず、我慢する。来年は厳しくても、2011年初めにはさすがに商談が出てくるはず。さすがに昨年秋のリーマンショックから2年半ぐらい経てば、商談も動き出すでしょう。
最近はロシアの大型ガス田「シュトックマン」での液化天然ガス(LNG)輸送船の商談が盛り上がっていますが、それだけではない。豪州の大型ガス田「ゴーゴン」プロジェクトのようなものもあります。
そこでは日本の電力・ガス会社も購入するでしょうから、そこでLNG輸送船の需要が出てくる。こうした密接な取引関係のある顧客との商談をしっかり進めていくことが大切です。
中国の合弁造船所で韓国勢と戦う
―― 川崎造船には中国・上海近郊の南通に合弁造船所があります。これが今後の価格競争を乗り切る上では切り札になるのでしょうか。
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