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[18960] スカさんち 『習作』
Name: スカ山スカ太郎◆aa6d013b ID:9fbb64d9
Date: 2010/05/20 09:53
この商品には

・オリ主

・キャラ崩壊

・独自解釈など

・シスプリとか12人の妹とか

以上の成分が含まれております。アレルギーをお持ちの方はご注意ください。



[18960]
Name: スカ山スカ太郎◆aa6d013b ID:9fbb64d9
Date: 2010/05/20 02:29

 ありえないなんてことはありえない。

 どこか哲学的な、矛盾した言葉である。

 まぁ要するに、可能性というのは無限にも等しい数があるということだ。

「スカさんスカさん」

「どうしたんだい、セイ君」

「ベビーシッターまでは業務内容に入ってなかったと思うんだ」

「ははは、気にしないでくれたまえ」

 さすがに異世界でベビーシッターやらされるとは予想してなんだ。

「セイさん、そこ邪魔です」

「おにーさん、御飯まだ?」

「セイどの。後でしゅぎょうをしてください」

 ちびっ子三人組。上から順にウーノ、ドゥーエ、トーレである。

 ウーノが10歳で、ドゥーエが9歳。トーレは少し離れて6歳。みんな可愛い盛りの女の子たちだ。

 大人びた長女、小生意気な次女、堅気な末っ子。

 何となく、そんな感じだ。

「すまん、ウーノ。飯はまだだ、ドゥーエ。昼飯の後にな、トーレ」

「お気になさらず」

「早くねー」

「分かりました、セイどの」

 聖徳太子には及ばないが、この程度なら聞き分けられる。

 聖徳太子の名が出てきたことから分かるように、俺は第97管理外世界の出身だ。

 それも外側、とでも言うのか。

 まぁ皆さんもご存知のように、転生者という奴だ。

 体はスカさんことドクター・スカリエッティが作り出した人造人間。そして中身は元平凡な青年。

 それが俺だ。名前はセイ。年は現時点で14歳。

 人造人間っていっても、ナンバーズを作る以前のものだからISなんて物はない。戦闘機人とは別の存在
だし。

 そういう意味では純粋な人間に近い。どちらかというとナンバーズのチビたちよりも、スカさんに近い存在
だと思う。

 スカさんの話は難しくてよく分からないが、たぶんそんな感じだろう。

 今はっきりしているのは、俺はスカリエッティ一家の中で長男ということだけだ。

「あー、それでスカさん。第97管理外世界にはいつごろ飛べるようになるんだい?」

「そうだね。今やってる研究がひと段落してから……今年中には飛べるかな」

「そいつはありがたい。俺の知ってる料理はほとんど向こう側ものだから、飛べるようになったらもっと美味い
もんを作れるようになるぞ」

「それは楽しみだ。よーし、パパ張り切っちゃうぞー」

 正直言って20代の男が両手を挙げて喜ぶ図は気持ち悪いです。

「……」

 ウーノの手が一瞬だけ止まった。普段からクールな子だが、たまに見れる微笑がとても可愛い。

「あ、私アレが食べたい。ハンバーグっていうの」

 ドゥーエは普段から笑うことが多い。この中では一番、女の子らしい。少しマセてる感じはするが。

「セイどの、しゅぎょうー」

 トーレはもう少し、修行や特訓以外の趣味を見つけて貰いたいな。身が持たん……。

 今年は新暦61年の春。

 世界は、おおむね平和だ。




[18960]
Name: スカ山スカ太郎◆aa6d013b ID:9fbb64d9
Date: 2010/05/20 02:29
「トーレ、もう少し近付いてから叩け。浅いぞ」

「はい、ししょー」

 俺とトーレは、スカ家特製のトレーニングルームに居る。

 食材なら分かるんだが、トレーニングルームが家の特製ってどうなんだろうか。まぁこの家なら
仕方ないで済まされるんだけど。

 まぁ、そんなスカ家特製の修行部屋でトーレの特訓に付き合ってる訳だ。

「そーだ、体格差がある敵は懐に飛び込むんだ」

「こうですか?」

 トーレは基本的に戦いに関することの飲み込みが早い。理論的なことも、実践的なことも。

 戦いに関してはまさに綿が水を吸うかのように、という表現が当てはまるくらいに自分の物にしている。

 戦いに関してだけ、というのが少し不安だ。将来的な意味で。

「そうだ。よし、それじゃおさらいな」

「はーい」

 トーレは少し距離を取ると、突っ込んできた。

「少し拳を捻って」

「はい」

 トーレは戦闘機人のため、身体能力そのものが強いらしい。スカさんの説明は一般的な男の子の頭では理解
不能なのだ。

「懐に飛び込んで」

「えいっ」

 つまり、人造人間とはいえ戦闘機人とは比べ物にならない程度の身体能力しかない俺は。

「なぐぼアッ!」

「あっ!」

 6歳の女の子相手でも、簡単に吹き飛ばされるということだ。


 ■


 所変わってスカ家の食卓。研究所のすみっこにある、六人がけの机が我が家の食卓だ。

 スカ家では研究が第一なので、食卓の重要度は低い。スカさんは一人にしておくと栄養を直接取ってしまうような人
なので、食卓の場所を確保するのも一苦労だった。

 ただ、それだと子供の教育上大変宜しくない。

 美味しいものを食べると、空腹を満たすだけの行為がとても素晴らしいものになる。

 それを知らない幼少期を過ごさせるのは、一応兄として見過ごせるものではなかった。

 という訳で、先ほどの訓練も終わり昼食タイム。今日は小麦を練って作ったそうめんだ。ちなみにスカ家では箸は全員
使える。というか教育した。

 俺の向かいにトーレ。ウーノの向かいにはスカ博士。ドゥーエの向かいには誰も居ないが、気にせず食べている。

「ししょー、ごめんなさい……」

「気にすんな。それより、良い拳だったぞ」

「ありがとうございます! ししょー!」

 トーレは素直、というか実直な子だから扱いやすい。悪い意味ではない、もちろん。

「でも、下手したら大怪我だったよね」

 そしてちょっかいをかける次女ドゥーエ。

「あう……」

 箸を止めてうつむくトーレ。落ち込んだ姿も可愛い。可愛いが、やはり笑った顔の方が可愛いな。

「そんなこと無いって。仮にも師匠だ、アレくらいで怪我はしないさ」

 顔を上げて満面の笑みを浮かべるトーレ。やっぱ可愛い、うん。

「嘘を教えないでください。いくら身体強化されていても、限界はあります」

 何というか、その優しさは嬉しいんだ、ウーノ。ただ時と場合と場所というもんがあるんだ、うん。

「ししょー……」

「な、なんだ?」

 上目遣いに見られると、正直可愛すぎて死にそうだが表情には出さない。なぜなら俺は兄だからだ。

「私、ししょーのめいわく?」

「そんなことは無い! 断じて否!」

「ほんと……?」

「本当だとも」

「ししょー……」

「ま、なんだね。死にそうなくらいの大怪我でも治せるから安心しなさい」

 スカ博士はそう言うと、食べ終わったそうめんのつゆと器を持って席をたった。

 こういう空気の読めなさが、博士が博士である要因の一つなのだろうか。

 俺はついに涙ぐみ始めてしまったトーレをあやしながら、スカ博士の背中をにらみつけるのであった。

 今年は新暦61年の夏。

 世界はまだまだ平和だ。



[18960]
Name: スカ山スカ太郎◆aa6d013b ID:9fbb64d9
Date: 2010/05/22 03:49

 唐突であるが、我が家はでかい。

 何故かというと、我らが父にしてスカ家の大黒柱であるドクター・スカリエッティは金持ちなのだ。

 偉い人たちと"ズキューン"したりデータを"ピー"したり、昔取った特許(別名義)の特許料などから得られる資金は、一般
的なサラリーマンの収入と10桁ほどの差がある。

 それらの大半を研究に注ぎ込むため、研究所も大きくなる。

 結果として、研究所兼家であるスカ家は大企業4個分くらいの広さがあるのだ。

 で、何が言いたいのかっていうと。

 掃除が滅茶苦茶大変ってことだ。

 もちろん専門の機械やら何やらとかは、スカ家特製の機械であるガジェットたちがやってくれる。

 だがガジェットのサイズではどうにもならない場所も幾つかある。

「ガジェ丸くん、そっちの方頼むよ」

『sir,yes,sir』

 という訳でガジェットたちに一通り指示を出し終えると、今度は自分でやらなきゃならない。

 正確には自分たちか。

「トーレ、モップ取ってくれー」

「はーい」

「それじゃ、行くぞー。よーい、どん!」

 合図とともに、ガジェットが通るには狭いが、人間が通る分には十分な広さの通路を駆けた。

 体格的には俺が有利だが、身体能力的にはトーレのほうが優れている。俺とトーレはデッドヒートを繰り広げた。

 ジャージ姿のトーレが、額に汗を滲ませながら駆けて行く。まだ夏も盛りで、空調の聞いた研究所内でも走れば
体が熱くなる。

 そんな姿を見ていると、一人だけなら疲れるだけの掃除も楽しくなるってもんだ。

 ふいに、トーレが立ち止まった。視線に気づかれたかな?

「ししょー」

「どうした?」

「だれかが呼んでます」

「ふむ?」

 耳を澄ませる。確かに、誰かが呼んでいるな。

「あー、ひょっとすると」

 心当たりが一つあった。少し前に外部で調整をする、といって少し前に出て行った姉妹の一人だ。

「よし、行くか」

「はーい」


 ■



 研究所の入り口。と言っても複数あるが、スカ博士や姉妹たちが使う個人転送用の転送陣に、声の主であるの女の子が
居た。

「誰か居ませんかー」

 俺は三角巾とエプロンを取ると、トーレに耳打ちする。トーレも心得たといった表情で頷いた。

「誰も居ないんですかー?」

「はいはい、ここに居ますよ」

 その女の子、振り向いたチンクは笑顔で俺に寄ってきた。

「兄上、お久しぶりです」

「久しぶりだな、チンク。元気にしてたか?」

 十歳くらいの、可愛らしい女の子。姉妹の中では一番礼儀正しく、そしてやや硬い性格の女の子だ。

「はい。兄上もお変わりないようで。ところで、他の方々は?」

 辺りを見回すチンク。ちなみにスカ博士とウーノは姉妹の調整中で、ドゥーエはたぶん自室で第97管理外世界から持って
きた雑誌でも読んでいるだろう。

「みんなちょっと所用でな」

 そして、トーレはというと。

「そうですか……」

「おかえりっ! チンクっ!」

 チンクの死角から近付き、飛びついた。あ、すっ転んだ。

「あ、姉上。ただいま戻りました」

「いてて。大丈夫? チンク」

 可愛らしい妹たちが重なり合ってる図はなんというか、ちょっとなまめかしいというか生々しいというか。なので即効で手を
貸して立ち上がらせた。

「大丈夫です。ありがとうございます、兄上」

「ありがとー、ししょー」

 前が妹で後ろが姉ってどういうことだ……。アレか、俺が鍛えすぎたせいで頭まで筋肉になっちまったのか。今からでも教
育方針を変えるべきか……。

「ねえねえ、修行の成果ってどうだったの?」

「あ、はい。ISに関しての調整ですが、十分にデータは取れました」

「よし、それじゃさっそく行こうか!」

 うーむ。しかし、トーレの戦闘センスはたぐい稀なるものだ。それを捨ててまで勉強をさせるのは如何なもんか。いや、適度
な折り合いをつけてやれば何とか……。

「うーむ……ってあれ?」

 気が付いたらトーレもチンクも居ない。……こういうとき、トーレが何をしているのかパッと分かる辺り、俺もあの子の兄なん
だなぁと思う。

 行き先は分かっているので、のんびりと歩き出す。

 まぁ、最低限のことは分かっているし、特に問題も無い。暫くはトーレのやりたいようにやらせてみるか。

 そう思いながら歩いていると、いつのまにか隣にドゥーエが居た。

「どうしたの? 兄さん」

「いや、別に」

「考え事、してたでしょ」

 ドゥーエは、どうにも聡いな。トーレと足して割ったら丁度良い感じになるんじゃないか。

「もう解決したよ」

 ま、そんなことを口に出したら何を言われるか分かったもんじゃないな。

「……ふーん。ところで、どこに行くの?」

「トレーニングルーム」

「トーレは?」

「チンクと一緒に先に行ってる」

「帰ってきたんだ、チンク。どうだった?」

「それを今から確認に行くのさ」

 そしてトレーニングルームに着いた俺たちを待っていたのは、すす塗れになったトーレとチンクだった。

 苦笑するドゥーエと、ため息を吐く俺。

 さて、これからどうしようか。取り合えず風呂にでも入れてやらないとな。

 新暦61年の夏。

 世界はのんびりと平和だ。



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