事務所が半壊したことそれにより雇用主が怒り狂っていることを露知らず、ツヴァイはいつも通りイエローフラッグのカウンターでグラスを傾けていた。
「あんたトコの会社随分景気がいいみてぇだな。」
そう言って店の店主バオは新聞に目を落としながら語りかけてきた。
「おかげさまで。」
あいさつ程度の口調でツヴァイはグラスに新しい酒を注ぎながらぶっきらぼうに答えた。
考えてみれば酒代を稼ぐために働くなどアメリカ時代には考えられないことではあったが、そうやって飲む酒は不思議と旨いと感じるようになってきた。
この変化が自分にとっていいことなのか悪いことなのか分からないが、少なくとも悪い気はしなかった。
そんなことを考えていると、いつの間にか隣に奇怪な格好をした女が座っていた。
一言で言い表すならメイドだった。
まるで映画の中でしか見たことがない本物のメイドがそこにいた。
店どころか、この街そのものに不釣り合いなメイドをバオも一瞬驚愕の表情を浮かべるが、この手の相手には関わらない方が身のためだと瞬時に理解したのだろう。
再び新聞に視線を落とし、
「ミルクはねぇよ」
と、ぶっきらぼうにメイドに吐き捨てるように言った。
「では、お水を・・・・・」
幽霊のような消え入りそうなか細い声で、メイドは淡々と続ける。
「この街には今日着いたばかりでして、右も左も分かりませんのコロンビア人の・・・・」
そこまで言って、メイドの台詞は強制的に終了を余儀なくされる。
中身が零れるのも構わず、バオがビールの入ったジョッキをメイドの前に叩きつけるように置いたのだ。
「ここは酒場だ・・・・・酒を頼め、アホタレめ」
あからさまに「とっとと帰れ」と態度に表すバオにツヴァイは興味なさげにグラスを傾ける。
このメイドに興味がないわけではないが、下手なことに首を突っ込めば命が危ないのはこの街の摂理ともなっているのでバオの態度も分からなくはない。
しかし、
「この街には今日着いたばかりでして、右も左も分かりませんのコロンビア人の友人を頼って来たのですが、事務所はどちらにございましょう、ご存じありませんか?」
メイドは、何事もなかったかのように律儀に先ほど言いかけた台詞を最初から言い直す。
「姉ちゃん!ここが観光案内所や職業斡旋所に見えんのか!?」
遂に怒鳴り声を上げるバオにメイドは眉一つ動かさず静かに、「いえ」と、呟いた。
酒瓶を一つ空けたころ、店の外からこちらに向かってくる無数の殺気を感じ、ツヴァイは意図的にアルコールを体内の奥底に押し込める。
それと同時に隣の座るメイドからも肉食獣の様な殺気が立ち込めていた、それはあまりにも強烈でありツヴァイの闘争本能を無自覚に刺激する。
思わず懐のベレッタに手を伸ばしかけるが、それを遮るようにメイドに握られたジョッキが盛大な音を立てて砕け散った。
申し合わせたように、店の入り口の扉が開き店内に数人のガラの悪い男達がズカズカと侵入してくる。
それを見たほかの客は危険を瞬時に嗅ぎ取り、逃げるように店を後にする。
顔つきから予測するに、男達達はメイドの探していたコロンビア人のようであったが、乗り込んできた雰囲気から察するに、メイドを歓迎する為に来店したのではないのだということは、子供でも察しがついた。
いつの間にか店の中には、バオ、ツヴァイ、メイド、そして乗り込んできたコロンビア人の男達しか残っていなかった。
バオとツヴァイは無関係だが、この状況で店を後にできるほど空気が読めないほどバカではない。
願わくば、穏便に事が済めばよいのだが・・・・・。
「女、テメーに用がある。」
男達の先頭に立つ髭面の男が掛けていたサングラスを外しながら低いドスの利いた声でメイドに詰問を口火を切る。
「おかしなメイド姿の女が一人、コロンビアマフィアの居場所を嗅ぎ回ってると聞いたんでな。
ハリウッドの時代劇でしかお目にかかれねぇイカレたナリだ。そんな服で街中を歩いてりゃあどんな馬鹿の記憶にも残らぁ・・・・・。俺達をここに呼び寄せたのは何が目的だ!!貴様何者だ!!」
ツヴァイの予想通り男達はコロンビア人であることには間違いないようである。
しかも、メイドが探していたコロンビアマフィアの者達であることは男の台詞から容易に想像できる。
この背徳の街で人を探す言うこと自体常識的に考えられない、表社会からはみ出した者で作られた街にまっとうな人間などいるはずがない。
しかも、それが探し人の個人名であるならいざ知らず、コロンビア人などと酷く曖昧なものであったならばそれはマフィアの警戒心を煽るに理由には十分すぎる。
しばしの沈黙の後、メイドは椅子の脇に置いてあった大きなカバンの取っ手と桃色の日傘を握り、立ち上がると警戒心で殺気立つコロンビアマフィア達と対峙する。
「見つけていただくのがこちらの本意でございます。マニサレラカルテルの方々でございますね。私めはラブレス家の使用人にございます。聞きたいことが幾つか」
マフィアを前にしてもメイドの口調は変わらず淡々としたものであった。しかも、自分を見つけてもらうことを目的としていたなど狂気の沙汰としか思えないが、それでもツヴァイはこのメイドの底知れぬ威圧感ならば例えこのまま撃ち合いを始めたとしても納得してしまうだろう。
そして、メイドはさらに信じられない事を口にした。
「失礼ながら・・・・少々御無礼を働くことになろうかとも」
その言葉の理解するまでに数秒、その後に店内はコロンビア人の豪快な嘲笑に包まれる。
その中でも、ツヴァイはこれから起こり得るであろう銃撃の嵐に内心うんざりしながらもそれに巻き込まれないよう僅かに体を強張らせていた。
「ぎゃははははは!おい、聞いたかよ?御無礼を働くとよぉ、このアマぁ!!」
「お笑いだぜ!はははははは」
「どうするってんだよぉ~姉ちゃん!!」
下品な笑いを撒き上げながらカルテルの連中は、メイドに腹を抱える。
無理もない、あくまで丁寧な口調で自分達に危害を加えると宣言するメイドなど酔っ払いの冗談にも出てこない珍事であり、それが目の前で現実に起こったとあれば笑い転げるのが当然の結果だ。
「手加減は出来かねますので、一つ御容赦を・・・・・」
だが、それでもメイドは表情一つ変えず、静かに右手に持った傘の先を持ち上げた。
「では、ご堪能くださいまし」
瞬間、傘の先端から火花と轟音が飛び散り、その延長線上に立っていた屈強な男の体を穴だらけにしながら吹き飛ばす。
「なっ・・・・・・?」
数秒前まで笑い転げていた男達も含め、流石にこの展開までは予測できなかったツヴァイも驚愕に目を丸める。
誰が信じられよう。屋敷で主人にお茶を汲むだけに存在するメイドがあろうことか傘の先端から銃弾を放ち人一人を穴だらけにしたのだ。
あっけに取られる男達をよそにすでに冷静さを取り戻したツヴァイは、次に起こり得るであろう鉄火場の襲来に備え、一足でカウンターのテーブルを飛び越え身を隠す。
「や、野郎ぉぉぉぉ!!」
ツヴァイの行動に遅れること数秒、ようやく事態を理解した男達が動揺を隠しもせずに次々と持っていた銃を握る。
「このクソッたれぇ!!てめぇら!!構うことねえ!!ぶっ殺せぇ!!」
震える銃を片手にリーダーと思しき男が部下達に号令をかける。
だが、それでもメイドは何も変わることはなく、淡々とした口調で言葉を紡ぎだす。
「いかようにも・・・・・お出来になるのならば」
「ほざくなぁぁ!!」
十数個の銃口から無数の銃弾が吐き出される店内のカウンターの裏では、ツヴァイとバオが顔を合わせていた。
「俺の店は射撃場じゃねぇってんだよ・・・・」
「それは気付かなかったな、よくこの店で世界大戦が行われているのは店の小粋なイベントかと思ったよ」
「んなわけあるかぁ!!こっちだって毎回毎回迷惑してんだよ!!あいつらだってお前のダチじゃねぇのか?」
「言葉は悪いが二挺拳銃の台詞を借りるなら、ダチじゃねぇ!知らねぇよこのタコ。かな?」
このような会話の間にもメイドの豪快な銃声がすでに数人の男達を吹っ飛ばす音が聞こえる。
「駄目だ兄貴!!どうなってやがんだ!?防弾繊維か畜生!!」
銃声と共に聞こえる泣き出しそうな声が空しく響き、ある程度の状況を教えてくれる。
恐らく、あの傘の布部分は防弾繊維によって編み込まれているのだろう、それにショットガンを組み合わせるなど、冗談の様にしか聞こえないが事実それがあるのだから認めるしかない。
狙いも定めず引き金を絞れた銃口から吐き出される鉛玉が、カウンターの酒瓶を見事に打ち砕いていき、その破片が真下で身を隠していたバオとツヴァイに降り注ぐ。
「畜生!!弁償しやがれってんだ!!」
護身用のショットガンを抱えながら、バオは撃った相手も分からず吐き捨てる。
「慰めにもならんと思うが・・・・ご愁傷様バオ君とでも言っておこうか?」
「同情するなら金をくれってんだ畜生め!!」
悪態を吐きながらバオはポケットから煙草を取り出し、おもむろに火をつける。
「ち、酒瓶の弁償一万ドル・・・調度品が同じく一万五千ドル・・・・プラス建物の修理費二万ドル・・・その他。問題は請求書の送り先だ・・・・あ、レヴィ!」
気だるげに大まかな被害総額を検証するバオの口調が、ある人物を捕らえるなり怒りの色を帯びる。
バオの視線の先には流れ弾に当たらぬよう姿勢を低くして裏口からでようとカウンターから顔を出したラグーンのレヴィだった。
「また、お前か・・・・」
トラブルが生まれ変わったと言っても過言ではない女を確認すると、ツヴァイは誰に言うでもなくため息を漏らす。
だが、それツヴァイ以上に過去から被害を被っているバオは、顔を引き攣らせ、咥えていた煙草を床に落とした事すら気付かずに、レヴィを怒鳴りつける。
「てめぇ・・・レヴィ!!またテメェの仕業か!テメェのダチは何回俺の店をぶっ壊しゃ・・・・!!」
この惨劇の原因がレヴィであるという確証はどこにもなく、むしろ良く考えなくとも原因はメイドなのだが、頭に血の上ったバオにとってはレヴィがトラブルを持って来たと考えるのが手っ取り早いのだろう。完全に八当たりに他ならないが。
「ダチじゃねぇ!知らねぇよこのタコ!!」
当然、レヴィは苛立ち相変わらずの口汚い言葉をバオに吐き捨てる。
「ほらな?」
「・・・・・ちぃ!!」
先ほどツヴァイがレヴィの言葉を借りたままの台詞を投げかけられ、バオは忌々し気に舌打ちをする。
「ち、静まり返るんじゃねぇよこのバカ・・・」
レヴィの言葉通り、先ほどまでの銃声や怒号が嘘の様に収まり、店内には、むせ返る様な血と硝煙の匂いが立ち込めていた。
バオとレヴィの言い争いにあれほど銃撃の喧騒に満ちていた空間が突如静寂に包まれた。
それほど、この場には居ないはずの人物の声音は音波の波長が違っていたらしい。
「ラグーン商会!お前ら何でここにいる!!うちが頼んだ荷物の運搬はどうした!?」
まだ生き残っていたリーダーの男がラグーンに詰問する。
それに答えたのは、レヴィの後ろに続いていたラグーンのボス、ダッチだった。
「まぁ待て!結論に飛びつくなアブレーゴ!」
直後、幽霊の様に立ち上がったこれまたこの街には不釣り合いなほど仕立ての良い服装をした少年を確認したアブレーゴと呼ばれた男が声を張り上げる。
「あぁぁ!!?なんで荷物が何でここにいる!?テメェら契約の仕事を!!」
「だから、話を急くんじゃねぇ!!料金の件はゆっくり話を・・・!」
荷物、契約、少年、メイド。
これまでの話の流れとこれまでの事態の流れにキーワード当てはめ、ツヴァイはおおよその事態を掴む。
「そういうことか・・・・・まったく、やはりラグーンに絡むとろくな事がない」
ため息混じりに呟くツヴァイの耳に、今度は意外な人物の意外な声が鼓膜を震わせた。
「若・・・様・・・・」
それまで無機質な口調でしか言葉を発して来なかったメイドが初めて感情の籠った声をあげていた。
「ロべルタ・・・・」
荷物と呼ばれた少年がメイドの名を呟く。
「こんな所にいらしたのですね若様、ご当主様も心配なさっております。さぁ」
そう言って、メイドは少年に一歩踏み出そうとするが、少年の表情は強張りメイドの進んだ分だけ後退する。
メイドの戦闘力は目の当たりにしたのは初めてなのだろう、明らかに少年は怯えていた。
それを、メイドも感じ取ったのか、僅かに悲しみの色が見える口調になり、
「怖がられるのも仕方ありませんね・・・・理由はいずれ、ご説明申し上げます」
そこまで話したメイドの視界に、少年の後ろにしゃがむロックを捕らえる。
「そちらの方々は・・・?」
少年に向ける慈愛の視線とは明らかに異なる気配を放ちメイドは、ロック他ラグーン商会の面子のメガネのレンズ越しに睨みつける。
「やばい・・・・目が合った」
ダッチが強張った口調で呟いた。
「・・・・・・」
ゆっくりとショットガン仕込みの傘(それはすでに傘ではないが、便宜上傘と呼ぶことにする)の銃口を持ち上げる。
「待って!ロべルタ、駄目だ!!」
どういった理由なのかは知らないが、少年は銃口とロックの間に身を躍らせ、ロべルタと呼ばれる殺人メイドを制止した。
だが、そこに余計な人物の余計な行動で事態は余計にややこしくなる。
レヴィが少年の細首に腕を撒きつけ、銃口を突き付けた。
当然、メイドの銃口を上げる腕が止まる。
「下がりなよ、メイド。ここにいる全員が死んでるよか、生きてる方が好きなはずだぜ。テメェだってそうだろ?」
「バカよせ!それじゃぁ悪役だ!!」
「まったくだ・・・」
レヴィを嗜めようとするロックの言葉に、ツヴァイも賛同するが、何事も力ずくで解決しようとするレヴィの辞書には「話し合い」と言う単語すら存在しないようである。
もしくは、存在しても「話し合い」と書いて「脅迫」と読むのかもしれない。
「うっせぇ!!」
二人を睨みつけ、レヴィはさらに少年の首を締めあげながらメイドに視線を移す。
「無理な撃ち合いをしなけりゃ、お前の若は五体満足で家に帰れる。床にオミソをぶちまけずにな。分かるか!?」
「・・・・・考えております」
完全に悪役となり下がったレヴィの台詞に意外にもメイドは激昂することなく、静かに答えた。
少なくとも、レヴィ以外の人間はメイドと一戦交える気もないようであるし、旨く事が運べばこれ以上無駄な争いも回避できるかもしれない。
ところが、
「勝手に話進めてんじゃねぇぇぇぇ!!」
カルテルの残党の一人が背後からメイドに銃口を向け突進してきた。
「空気を読め!」
これ以上話をややこしくされるのは面倒にも程があるので、ツヴァイはカウンターから立ち上がるなり、正確に男のこめかみをベレッタで撃ち抜く。
「・・・・・・」
「邪魔したか?」
「いえ・・・手間が省けましたわ」
ツヴァイの軽口にメイドは律儀に返答しながらも、少年とレヴィから片時も視線を外そうとはしなかった。
そして、沈黙。
一秒が数時間にも感じられる重苦しい空気の中、誰一人として身じろぎ一つしようとはしなかった。
どれくらい時間がたったのか、ようやく口を開いたのはやはりメイドだった。
「考え終わりました・・・・」
映画の中でしか見たことはないが、もし、殺人ロボットっと言うものがこの世に存在するならば、このメイドではないだろうか・・・・。
そんな気持ちすら起こさせる無機質な声に紡がれる次の言葉を誰もが固唾を飲んで待ち構える。
「Una vandicion por los vivos.(生者のために施しを)
Una rama de flor por los muertos.(死者のためには花束を)
Con una espode por la justicla,(正義のために剣を持ち)
Un castigo de muerta para los malwados.(悪漢共には死の制裁を)
Acl llegarmos――――(しかして我ら――――)
en elatar de los santos.(聖者の列に加わらん)」
スペイン語で詩の様な言葉を囁くメイドに誰もが眉をひそめるが、その言葉の意味を理解している少年はどこか懐かしそうに顔を綻ばせる。
そして、
「ご威光には添いかねます。若様には五体満足でお戻りいただきますが、この家訓通り仕事をさせていただきます・・・・・サンタマリアの名に誓い」
言いながらメイドは左手に持っていたカバンを突き出す。
「あの言葉・・・・!?」
アブレーゴが反応するのをツヴァイは目ざとく見逃さなかった。
「すべての不義に鉄槌を!!」
人質の意味が無くなったガルシアを小突いて離すと、そのままレヴィは当面の遮蔽物になるであろうカウンターを目指して走りながらロベルタに銃弾を浴びせた。
ロベルタもトランクに仕込んだ短機関銃をレヴィに浴びせ攻撃する。
だが、それでもこの破壊神(メイド)はそれに夢中になり周囲への警戒を怠ることは無かった。
狙いをつけるアブレーゴにも銃弾を浴びせる。
その僅かな隙にダッチ達は脱出を図った。
「今だ!行くぞ!!」
レヴィも駆ける。
「おい来るなぁ!来るなぁ!!」
あからさまに来る事を拒絶するパオの悲鳴に近い声にも耳を貸さず、そこに放たれたロベルタのトランクからのグレネード弾。
「あのグレネードはカバンに仕込むもんじゃないんだがなぁ」
もはや、呆れを通り越して感心の念すら覚えたツヴァイが呟くと同時に爆風がカウンターを襲う。
「おっと・・・」
頭上から落ちてきたレヴィを受け止めるツヴァイだが、当の二挺拳銃は、その衝撃で脳震盪を起こしレヴィは床にだらしなく伸びていた。
手応えを感じたメイドだが、それに止めを刺すことは叶わなかった。
「くたばりやがれぇ!この、この、フローレンシアの猟犬めぇ!!」
負傷しながらもアブレーゴが激しい射撃を浴びせてきたからだ。
「フローレンシアの猟犬?」
どこかで聞き覚えのある単語に、ツヴァイは眉を一瞬ひそめるが、今はそれどころではない。自分の腕の中で気絶する女ガンマンをどうにかしなくてはならない。
よほど、猟犬の名が気に食わないのだろう。メイドはレヴィの止めよりもアブレーゴ達の殲滅を優先させていた。
「クソ!畜生無茶な女だ!ケサンの攻防戦がピクニックに思えるぜ!!おい、大丈夫なのかレヴィは!?」
「傷自体は大したことないが、脳震盪で気を失ってるな。しばらくは目を覚まさないだろう」
一応、頬を何度か叩いてはみるがレヴィに反応はない。
「お互いここで会ったのも何かの縁だ、俺がこの女を担いで行くからお宅らの車に乗せてくれないか?」
「・・・・仕方ねぇ、足だけは引っ張るなよ?」
ツヴァイの言葉に僅かに逡巡したダッチだったが、事は火急を要する。
ツヴァイの同行を許可し、ラグーン商会のメンバープラス二人が裏口からイエローフラッグを飛び出した。