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多様な南米社会そのままに 弱者や少数派の人形集めた店

2010年5月19日5時31分

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写真:黒人や日系人、肥満児の人形を手にしたアントニア・ジョイセ・ベナンシオさん(右)とがんで髪の抜けてしまった子や盲導犬を連れた視覚障害の少女の人形を持つ姉のルシアさん=サンパウロ、平山写す黒人や日系人、肥満児の人形を手にしたアントニア・ジョイセ・ベナンシオさん(右)とがんで髪の抜けてしまった子や盲導犬を連れた視覚障害の少女の人形を持つ姉のルシアさん=サンパウロ、平山写す

 【サンパウロ=平山亜理】ブラジル・サンパウロに、一風変わった人形店がある。ここの人形は、「お人形さんは金髪に青い目」という既成概念に当てはまらない社会的弱者や少数派の子の姿を表すものばかり。店主の黒人女性が少女のころ、祖母に作ってもらった人形がその原点だ。

 つえをついた片足のない少年、盲導犬を連れた目の見えない少女、がんで髪の毛がすべて抜けてしまった少女。肥満児、ダウン症の子――。サンパウロ市内の人形店「プレッタ・プレチーニャ」には、120種類以上の人形があふれている。

 店主のアントニア・ジョイセ・ベナンシオさんは、ブラジルは黒人や混血が多いのに、おもちゃ屋に並ぶのは白人の人形ばかり、ということに幼いころから反発を覚えていた。黒人の人形が欲しいと祖母にねだり、黒い靴下で人形を作ってもらった。だが、学校に持って行くと「魔女」「変な人形」といわれた。

 9歳の時、宿題で「将来なりたい仕事の写真を持ってくるように」と言われ、航空会社の客室乗務員の写真を選んだ。白人の同級生は、幼い時から面倒をみてくれた黒人の乳母の写真を持ってきた。

 すると、女性の白人教師は、「間違っている」と、2人の写真を交換させた。黒人なのに客室乗務員はおかしい、というのだ。子供心にも露骨な偏見に泣いたという。

 そのように幼い時から刷り込まれる偏見をなくしたいと、成人してから、社会の多様性をそのまま反映した人形を作り始め、店を開いた。「誰もがありのままの姿で生きられる社会を実現したい」

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サンパウロ市
ブラジル

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