将来各地のブランドを背負う子牛たちの「父」として、宮崎県の種牛は、サシ(霜降り)が多く入り、成長効率もよいと、全国で評価が高い。
約500頭の「松阪牛」を育てる三重県松阪市の瀬古食品は、子牛の8割程度を宮崎県内から買っている。4月末も購入予定だったが、口蹄疫の影響で競りは中止。牛舎に約60頭分の空きができた。社長の瀬古清史さん(61)は、「このまま7月まで買い付けられないと、100頭分の空きになってしまう」。
滋賀県の「近江牛」も子牛の4割が宮崎産だ。熊本からの牛と合わせれば6割は九州。これがストップした。「農家ごとに、決めた産地から子牛を選び、育てるノウハウを蓄積している。宮崎が無理なら、すぐ他に切り替えるというわけにいかない」と同県の担当者は話す。
感染が確認されていない地域で市場を休むのは予防対策だ。出荷を待つ間に子牛は成長し、えさ代の負担も増える。島根県家畜市場では、今月予定の子牛市場を6月に延期した。「1カ月遅れることで、その分大きくなった子牛が、市場でどう評価されるのかわからない」と県の担当者は心配をのぞかせる。(長沢美津子、大谷聡)