よりすぐりの血統の種牛から生まれた子牛を、各地の肥育農家が買い入れ、自分たちのブランド牛に仕上げる。そんな黒毛和牛の生産サイクルに、口蹄疫(こうていえき)の影響が出始めた。九州や中国地方で市場の中止や競りの延期が相次いでいるためだ。「蓄積した飼育のノウハウがあり、産地は切り替えられない」。農家からはあせりの声があがる。
岩手県雫石町の岩手県中央家畜市場で20日、子牛の競りがあった。全国でも大規模な子牛の供給地。1頭あたりの平均価格は、前年より7万4千円高い41万4千円だった。
「宮崎の影響がどうでているのか。市場には初めて見る顔も来ていました」と全農岩手県本部畜産酪農部の猪原崇次長は変化に戸惑う。
全国でも、子牛の取引価格は上昇している。農畜産業振興機構によると、5月第2週の黒毛和牛の取引平均価格は1頭あたり38万5千円で、前年5月に比べ8%高い。
和牛の9割以上を占める黒毛和牛は多くの場合、繁殖農家が子牛を生後300日前後まで育てて市場に出し、肥育農家が買い付ける。それが今回、九州各県を中心に、競りの中止や延期が相次ぎ、子牛の供給サイクルにずれが出始めた。