エース級種牛「忠富士」が口蹄疫に感染した疑いを受け、記者会見する宮崎県幹部ら=22日午前2時32分、宮崎県庁
口蹄疫に感染した疑いが確認された種牛の忠富士=宮崎県家畜改良事業団のホームページから
宮崎県で家畜の伝染病、口蹄疫(こうていえき)が広がり、県内の畜産農家に種付け用の精液を供給する主力の種牛1頭に感染の疑いがあることがわかった問題で、県は22日未明、記者会見を開き、避難している残りの5頭については、農林水産省との協議の結果、1週間の経過観察を続けることにしたと発表した。感染の疑いのある1頭は、22日にも殺処分する。
県によると、感染した疑いがあるのは、避難していた主力6頭のなかで、最も多く精液の採取を計画していた「忠富士(ただふじ)」。6頭から採取する約15万4千本の精液ストローのうち、約3万8千本を担う予定だった。
19日に採取した忠富士の検体が、国の機関による遺伝子検査で陽性と判明。だが、症状がなかったため、その場で診断はせず、念のため20日の検体も検査したが、この結果も陽性だった。現在も水疱(すいほう)や流涎(りゅうぜん)など目立った症状はないが、食欲がないという。
残りの5頭は、忠富士と同じ仮設牛舎にいた。2メートル間隔で高さ約3メートルの木の板で仕切り、それぞれを「個室」に隔離。上部にはすき間があったという。飼育担当の職員は1頭につき1人に限定していた。忠富士は神経質で興奮状態だったので、隣を空室にして他の種牛とさらに離していた、という。
残りの5頭については、隔離後1週間の遺伝子検査でも陰性で症状がなかった。県は「忠富士はウイルスはほとんど排出しておらず、周囲に広がった可能性は低い」として、当面、5頭の経過観察を継続することにしたという。
6頭は、種牛を一括管理する県家畜改良事業団(同県高鍋町)から13〜14日、約20キロ離れた同県西都市の牧場に特例で避難。口蹄疫ウイルスの潜伏期間は牛の場合7日間程度で、忠富士は避難前に感染した疑いが強いという。