産業医科大(八幡西区)への売却が決まった市立若松病院(若松区)。医師不足などから入院診療の休止や経営悪化に陥ったが、譲渡先の決定により市幹部は「住民の安全・安心が確保される」と安堵(あんど)の表情。一方、住民や患者からは「譲渡で本当に医療機能が守られるのか」との声も上がる。
産業医大の提案によると、医大の特徴を生かして安定的・継続的に医師を確保し、病院収支を14年度に黒字に転換させる。また、病院名は「産業医科大学若松病院」となる。
北橋健治市長は記者会見で「譲渡後も市はできる限り病院運営を支援する」と語った。
譲渡先が決まったことについて、骨折で若松病院に入院中の男性患者(66)は「譲渡で病院運営の仕方が変わるだろう。少し不安はある」と複雑な様子。また、若松区自治総連合会の大庭卓朗会長(72)は「市立病院の維持という我々の思いが断たれた以上、産業医大は今よりも医療を充実させてほしい。二度と経営が悪化しないよう、今後も病院運営を監視する必要がある」と語った。【松田栄二郎】
〔北九州版〕
毎日新聞 2010年5月22日 地方版