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鼻中の常在菌が出す酵素 黄色ブドウ球菌を排除

(2010年5月20日) 【北陸中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

慈恵医大が確認

 人間の皮膚や鼻の中に普段からいる特定の「常在菌」が分泌する酵素によって、病原菌の1種「黄色ブドウ球菌」を覆う菌膜が破壊され、菌が排除されることを突き止めたと、慈恵医大の水之江義充教授と岩瀬忠行助教らが20日付英科学誌ネイチャーに発表した。

 この酵素は、抗生物質が効かない薬剤耐性菌にも効果があり、新たな治療法開発に役立つ可能性があるという。

 黄色ブドウ球菌は、健康な人でも約3割の人の鼻から検出される。研究チームは、鼻の中に多い常在菌の表皮ブドウ球菌に注目。この菌には、黄色ブドウ球菌の菌膜を壊すタイプと壊さないタイプがあり、壊すタイプは「Esp」という酵素を分泌し、これが菌膜を破壊、菌が排除されることを突き止めた。

 この酵素は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの耐性菌にも効果があり、1年間一緒に培養しても耐性はできなかった。

 水之江教授は「常在菌が病原菌の定着を阻害することを初めて解明できた。この酵素が肺炎球菌や緑膿(りょくのう)菌など、ほかの病原菌にも効果があるか調べたい」と話している。

 黄色ブドウ球菌は肺炎や心内膜炎、敗血症の原因になる場合があり、MRSAなどは院内感染の原因菌にもなっている。