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きょうの社説 2010年5月22日
◎円高・株安ショック 政府・日銀一体で市場監視を
欧州発の信用不安を引き金にした想定外の円高が、北陸の輸出関連企業を苦しめている
。各企業は為替レートを1ドル=90円、1ユーロ=120円前後に置くケースが多いとみられ、このまま円の独歩高が続くなら好調な輸出に急ブレーキがかかりそうだ。鳩山政権は昨年秋、前財務相の安直な「円高容認」発言で、円高を急加速させた苦い経 験がある。このときの教訓を無駄にすることなく、政府・日銀が一体となって市場を注意深く監視し、市場の安定に努めてほしい。 ニューヨーク市場の大幅下落を受けて、日経平均株価は1万円の大台を大きく割り込み 、年初来安値を更新した。これは欧州の信用不安の拡大懸念と円高進行で、日本企業の業績見通しが不透明になってきたことの表れでもある。 円高・株安も問題だが、特に金融市場の乱高下は市場参加者を疑心暗鬼にさせる。日銀 は21日、金融市場の混乱を受けて短期金融市場に1兆円の資金を供給する即日オペレーション(公開市場操作)を実施し、市場に安心感をもたらした。菅直人副総理兼財務・経済財政担当相も、「行き過ぎた円高を注視する」と述べ、市場をけん制した。タイミングの良い「口先介入」だったのではないか。 市場介入という「伝家の宝刀」を、めったに抜くわけにはいかないが、投機筋が仕掛け てくるような局面には、「抜く」と見せかけて相手の仕掛けを止めることも重要だ。日銀による資金供給は、市場への無言の意思表示であり、今後も政府とあうんの呼吸で的確なメッセージを発していく必要がある。 今年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比1・2%増と、4四半期連続の プラスとなり、景気の回復基調が実証された。それでも内容を見れば、外需主導の回復であり、内需の力は弱い。 ユーロ安は、欧州の輸出企業にとってまたとない追い風となり、皮肉にもドイツの株式 市場は底堅い動きをしている。信用不安のない円に買いが殺到し、その結果として日本企業が割を食うのは理不尽としか思えないが、野放図な円高を止めないと、景気の足取りがますます怪しくなってしまう。
◎新エンゼルプラン 地域格差の解消も課題
石川県内で「病児・病後児保育」が導入されていない自治体が6市町に上るという。県
は今年度から5カ年の新エンゼルプランの策定を進めているが、病児・病後児保育の実態は、保育サービスの地域格差の解消も大きな課題であることを示している。エンゼルプランは子育て支援策を体系的にまとめたもので、2005年度から09年度 までのプランでは、さまざまな就労形態に対応した多様な保育サービスの提供が重要な柱になっている。 病児・病後児保育はその一つで、病院や保育所内の専用施設で看護師らが、病気の子ど もの保育に当たる。仕事を休めない保護者にとってありがたい保育サービスである。これまでのプランでは、04年度で13カ所だった同保育の実施施設を09年度までに24カ所に増やす目標が掲げられた。県内全体の実施施設は66カ所を数え、この計画目標は大幅に上回っているものの、能登地区を中心に6市町でまだ実施されていない。 多様な保育サービスは子育て支援策の要といえ、エンゼルプランには延長保育や休日保 育、夜間保育などの数値目標も盛り込まれている。これらの保育サービスが病児・病後児保育のように偏った状況になっていないか、それぞれの目標の達成状況と各自治体の課題を分析して、新エンゼルプランに生かしてもらいたい。 保育所の課題として、大都市圏で待機児童の増加が深刻になる一方、人口減少地域では 定員割れという問題も生じている。厚労省の09年4月時点の調査では、県内の待機児童はゼロである。ただ、認可保育所に入れないため、やむなく認可外保育施設を利用している子どもらは厚労省統計の待機児童には含まれておらず、潜在的な待機児童は県内にも少なからずいるとみなければなるまい。保育サービスの需給のアンバランスという問題が県内でも進行する恐れがあるということである。 また、景気、雇用情勢の悪化に伴って保育料を滞納する家庭も増えている。こうした社 会情勢の変化に伴って深刻化する問題の対応策も検討課題である。
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