宮崎県の家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」の感染拡大抑止へ、政府が19日、家畜の移動制限区域内で牛や豚にワクチンを接種した上で殺処分することを決めた。被害が深刻な同県川南(かわみなみ)町や都農(つの)町の畜産農家からは「生活支援も示さないと同意できない」という声や、「つらいが仕方ない」など、複雑な反応が広がった。
川南町の養豚場経営者(56)は「赤松広隆農相が宮崎入りした10日には既にワクチンや一定区域の全頭処分を要望していたのに、国は対策が遅い。口蹄疫を国の危機として考えてないから後手になる」と不満を漏らし、「補償や生活支援も示さないと簡単には同意できない」と憤った。
都農町の和牛繁殖農家(49)は「他県に飛び火する危険を考えると、無駄に時間が過ぎるのは避けなくては。つらいが同意せざるを得ない」と、政府方針に応じる姿勢を見せた。だが、感染拡大を阻止できなかったこれまでの行政の防疫対策に不信感を示し、「宮崎をどうやって畜産王国に戻すか。政府は10年後を見据えたプランを示してほしい」と注文した。
18日に山田正彦農林水産副大臣が川南町などの関係者に方針を説明した際、同町の内野宮正英町長は「そう簡単にはいかないよ。厳しい。特に牛を飼っている農家の半分は理解が得られないのではないか」と話した。これに対し、JA尾鈴(おすず)の幹部は「接種対象範囲をもっと広げるべきではないか」と語るなど、受け止め方は分かれていた。
=2010/05/20付 西日本新聞朝刊=