みずほ悲痛、メガバンク転落危機 金融庁激怒「2つあれば十分」

2010.05.18


みずほVs金融庁の壮絶バトルの行き着く先は…(写真はコラージュ)【拡大】

 みずほが金融庁の逆鱗に触れ、メガバンク転落の危機に直面している。みずほフィナンシャルグループ(FG)の前田晃伸(65)、傘下のみずほコーポレート銀行の斎藤宏(66)、みずほ銀行の杉山清次(63)の3会長が6月に退任、特別顧問に就くのはその序章という。みずほvs金融庁の壮絶バトルの末に待つものは−。

 みずほは先週末、2010年3月期連結決算を発表。あわせて、8000億円を上限にした普通株発行による公募増資の実施と、3会長の退任も発表した。会長ポストは空席にする。

 前田、斎藤両会長は02年から、それぞれ持ち株会社の社長とコーポレート銀の頭取に就き、03年の1兆円増資、公的資金の返済、ニューヨーク上場などを主導。杉山会長は04年にみずほ銀頭取に就任した。

 3人は09年4月に会長に退いたが、わずか1年で会長も退くことになった最大の要因は、資本政策の失敗にある。

 「金融危機後の国際的な自己資本規制強化の流れを読みきれず、ライバルの三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループが巨額の普通株増資を成功させるなか、みずほは03年に実施した1兆円増資の(優先株から普通株への)転換対応に追われ、普通株増資は大きく後手に回った」(金融関係者)

 08年9月のリーマン・ショックに端を発した金融危機の教訓から、世界的に金融機関の資本強化の流れが強まり、負債としての性格を持たない普通株によって調達された資本を重視する方向となっている。

 機敏な対応をみせた三菱UFJは、昨年12月に1兆円強の公募増資を実施。三井住友も、09年度中に2度の公募増資で約1兆8000億円を調達しており、みずほは周回遅れとなった。

 遅まきながら8000億円増資を発表したが、取引先の中には過去の1兆円増資を引き受けて含み損が発生しているところが少なくない。そのため、3会長が退任しないと増資話が進まない、という事情があった。

 みずほについては見劣りする資本のほか、調達・運用効率の悪さを指摘する専門家も多い。

 「みずほグループは、中小企業や個人を対象とする『みずほ銀行』と大企業を主対象にする『みずほコーポレート銀行』という世界に類をみない2バンク制を敷いていることから、調達・運用の効率が悪く、09年4〜12月期連結純利益で、総資産額が4分の1のりそなに肉薄される失態を演じてしまった」(金融担当アナリスト)

 このころ、金融庁サイドから公然とみずほのガバナンス(企業統治)を批判する声が聞かれるようになった。「社長と2人の頭取、そして3会長の計6人も経営者がいるような銀行はいかがなものか」(金融庁幹部)というもので、大塚耕平・金融担当副大臣は「メガバンクは2つで十分であろう」と、暗にみずほがメガバンクから脱落してもかまわないといったニュアンスの発言も行っている。

 それでもみずほの実権は、持ち株会社の前田会長と、コーポレート銀の斎藤会長が握り続けた。グループの幹部人事は実質的に前田会長の意向が反映された。コーポレート銀の主戦場である国際案件には、現頭取の佐藤康博頭取(58)が一時体調を崩していたこともあり、斎藤会長が出張っていく場面もみられたという。

 そうした「院政」を思わせるみずほの態勢に、金融庁は内心、苦々しく思っていたことは確か。金融庁は、10年3月期から1億円以上の役員報酬の開示を義務づけるが、「みずほのトップ6人はすべて1億円以上の報酬を得ている。開示を急ぐ理由の1つは、法外な報酬を得ている新生銀行の外国人役員とみずほの3会長の首をとるためだった」(金融庁関係者)といわれる。

 金融庁をさらに激怒させたのが、03年の1兆円増資を成功させ、同庁とも親密な関係にあった小崎哲資氏(58)(前みずほFG副社長)の人事。みずほは3月の人事で、小崎氏を親密会社でビル賃貸事業を行う「常和ホールディングス」の社長に転出させてしまった。

 みずほの実力者、前田会長の側近とみられていた小崎氏が転出させられたのは、一説には「金融庁から迫られた小崎氏が公募増資と引き換えに3会長の退任を進言、前田会長の逆鱗に触れて退任を余儀なくされたから」(金融関係者)とみられている。

 金融庁から完全ににらまれてしまったみずほ。壮絶なバトルの末、メガバンクから転落してしまうのだろうか。

 

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