【ワシントン=山川一基、尾形聡彦】トヨタ自動車の大規模リコール(回収・無償修理)を巡る米下院エネルギー商業委員会小委員会の公聴会が20日午前(日本時間同日深夜)開かれ、米国トヨタ自動車販売のジム・レンツ社長が出席した。トヨタ車が突然急加速する問題について「エンジンの電子制御システムは原因ではない」とのレンツ氏の主張に対し、議会は追及を続ける姿勢を崩さなかった。
トヨタ幹部の公聴会出席は約2カ月半ぶり。事前に配られた証言の草稿によると、レンツ氏は、問題が表面化してからトヨタは販売店などで約2千台を調査したことを明らかにし、その結果として「(エンジンに送る空気の量を調節する)電子制御スロットルシステム(ETCS)が急加速の原因ではないことが分かった」と述べる予定だ。
また、米国で販売するすべての新車に対し、ブレーキとアクセルを同時に踏んだ場合にブレーキを優先するシステムなどを今年末までに標準装備することを約束する。
これに対し、公聴会に出席した議員からは、トヨタの依頼で電子制御の不具合の有無を調べている外部会社の調査に、疑問が投げかけられた。
トヨタは急加速の原因となったアクセルペダルがフロアマットにひっかかる問題や、アクセルペダルが摩耗して戻りにくくなる問題についてはリコールを実施済みで、米国でのトヨタ批判は沈静化しつつある。しかし、多くの車に使われているETCSに不具合があるとなれば、リコール対象車は膨らみ、トヨタ車に対する信頼が再び傷つく。
米議会はETCSが原因ではないかと疑い続けている。米運輸省も米航空宇宙局(NASA)などに調査を依頼。8月末までにまとまるリポートを基に、急加速問題の原因を追及していく構えだ。
公聴会では、監督当局である米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)の態勢強化も問われそうだ。米上院はトヨタの大規模リコール問題を受け、自動車の安全対策や、NHTSAの権限を強化する法案を審議中。法案では、NHTSAの安全対策部門の予算を2010会計年度の1億4千万ドルから、13年度には2億8千万ドルに倍増する方針が盛り込まれており、電子制御などに関する専門家の陣容が強化される見通しだ。