トヨタ自動車と米電気自動車(EV)ベンチャーの「テスラ・モーターズ」(カリフォルニア州)は21日、トヨタがテスラに5000万ドル(約45億円)を出資し、EV開発で提携すると発表した。トヨタはハイブリッド車(HV)を環境車の主軸に展開してきたが、日産自動車・仏ルノー連合が「12年にEV年産50万台」を打ち出すなどEV陣営が意欲的な目標を掲げる中、EV市場にも積極的に進出する。
「チャレンジ精神や意思決定スピード、柔軟性を学ばせていただきたい。トヨタもベンチャー企業として生まれた時の精神を思い起こし、チャレンジしていきたい」。トヨタの豊田章男社長は会見で提携の意義をこう語った。テスラは12年から量販型の新型EVを年間2万台規模で生産する計画。トヨタは効率的な生産ノウハウなどを提供する一方、車載電池技術を取り入れる。
テスラのスポーツタイプEV「テスラロードスター」は1回の充電で378キロの走行が可能で、最高速度も時速約200キロと高い。電池は一般でも入手可能な安価な汎用電池をベースにしており、トヨタはテスラの電池開発能力に関心を持っている。
トヨタは、電池の性能やコストなどの観点から、EVを近距離用、HVとプラグインHVを中距離用、燃料電池HVを長距離用の環境車と位置づけてきた。12年までに米国で近距離用のEVを独自で投入する計画だが、テスラとの提携で電池性能を向上できれば、トヨタのEVラインアップを充実させることも期待できる。
一方、閉鎖した米ゼネラル・モーターズ(GM)との合弁工場「NUMMI(ヌーミー)」(カリフォルニア州)の跡地の一部や元従業員をテスラが引き受けることも提携を後押しした。豊田社長はかつてヌーミーに駐在しており、会見でも「モノづくりのDNAが未来の産業に引き継がれていくことを心からうれしく思う」と述べた。大量リコール(回収・無償修理)問題で非難を浴びたトヨタがヌーミーの再建にかかわることで、米国内のトヨタへの厳しい視線を和らげる効果も期待しているとみられる。【米川直己】
【ことば】テスラ・モーターズ
03年設立の新興自動車メーカー。本社・カリフォルニア州パロアルト市。独ダイムラーや、グーグル共同創設者のラリー・ペイジ氏も出資している。電気自動車(EV)に特化し、08年に2人乗りスポーツ車「ロードスター」を発売した。欧米で1000台以上の販売実績があり、今春、日本でも販売を開始した。
毎日新聞 2010年5月21日 20時55分(最終更新 5月22日 0時08分)