broadmindの日記 〜お受験戦士死闘篇 in 某国際機関〜

2009-01-12

2008年もフィリピンが「日本人殺人打率トップ」を記録

2008年だけで、フィリピン国内で8名の日本人が殺害された。多い多いとは思っていたが、一時帰国中に溜まった「まにら新聞」の年末特集を読んであらためてその多さに驚くというか呆れた。これに重傷者が他に何名かはいたはずだから、ほぼ月1回のペースで日本人の殺人/殺人未遂事件が起きているわけである。

08年の統計はまだだが、まにら新聞調査の外務省データによれば海外での日本人殺人件数に占めるフィリピンの割合は、04年が4件/8件、05年が6/23、06年が3/10、07年が7/17で、毎年26-50%を占めている。例年の数からすれば、08年も半分程度(ひょっとすると過半)を占めるのは確実だろう。フィリピンにもそれなりの数の日本人は来るが、アメリカや中国といった国々とは比べものにならない渡航者/在住者数だろうから、日本人殺人打率でいうとフィリピンは他の追随を許さない発生率と考えて間違いない。逆にいうと、アメリカや中国あたりも日本人にとって意外と安全という話だ。

海外在住者はどの国であってもそれなりの不満や不安を感じて暮らしているものだろうけど、それを差し引いてもこの数字をもってすればフィリピンという国が日本人が居住する上で「異常」な国だと主張することには大いに正当性があるだろう。なんつうか、はっきり言ってやっぱり終わっている国なのである。

とはいえ、殺人件数が多いから在住者たる自分にも差し迫った凶悪犯罪の危険性があるかというとそういうことは必ずしもなくて、誤解を恐れずにいえば「殺すバカ、殺されるバカ」という構図も見えてくる。まず、被害者8人全員にフィリピン人の配偶者または恋人がいた。そして、ほぼ全てのケースについて(i)40代以上の男性、(ii)フィリピンで商売をしている、(iii)フィリピン人と金銭トラブルあり、のうち2つ以上が該当する。要はそういうことなのである。マニラ新聞の年末記者座談会でも「取材すればするほど、書けない」という趣旨の発言があった(そもそも「記者座談会」を開く「日刊新聞」ってどうよ、というツッコミはさておき)。

フィリピンについて日本の友人に説明するとき、broadmindは「日本から4時間で行けるラテンアメリカ」ということにしている。大土地所有を基盤とした固定化された貧富の格差。一部ファミリーへの経済的・政治的権力の過剰な集中。スペイン支配とカトリック文化に由来するラテン気質があるところへもってきて、あまり堅実な階層上昇が望めない社会構造になっているため、良く言えば過度に楽天的な、悪く言えば努力せずに一山当てようという発想が顕著(商売に限らず、金持ちと結婚すること等も含む)なお国柄といえる。結果、いかがわしい商売のタネはいくらもあり、それに関わる外国からの人間のニーズもあり、ある種の人間は日本人も含め非常になじんでハマる*1

しかし、「楽天的」と「安全」は全く異なる概念である。フィリピンはけして最貧国ではないし、インドあたりよりは人間の値段は多少は高いはずなのだが、驚くほど人間の命を大事にしないし、ビジネスでもオンナでもトラブルになればすぐに命のやり取りである。「ある種の日本人」の方々にしても、本当のヤクザの方はともかくも、単に気質が合っただけのシロウトの皆様は本当に理解した上でこの国に関わっているのだろうか?事件が起きるたびに巻き込まれる大使館の方々におかれてはまことに気の毒な話である。本来なら在東南アジアの一大使館だっていうだけのはずなのに、バンコクとか以上に事件処理関連の雑件が多いと推察される。

とはいえ、「日本人殺人打率トップ」に話を戻すと、これはフィリピン「だけ」が異常なのではなく、こうした擬似ラテンアメリカ国に「4時間で行ける」という敷居の低さがミソなのだろう。恐らく、メキシコやブラジルまで日本から4〜5時間のフライトで行けるなら、毎月数人のペースで日本人が殺されていてもおかしくないと思われ、この点はフィリピンを弁護(?)しておかねばなるまい。

とにかく結論として、これらの事件からは「一般フィリピン人とは関わらなければ関わらないほどよい」という明確な教訓が引き出せるわけである。こういういかにもエクスパット的な物言いはしたくないのであるが、なんというかこれらの事件からも、自分の実体験からもそういう印象以外得ようがない感じなのだ。しかし、実際のところマニラにおいては一般フィリピン人とほとんど関わらないでも生きていけるという事実は、裏を返せばこの街がなかなか便利だということを意味しているのかもしれない。

*1:「書けない」とされている部分について新聞上で「微妙に記事になっていた」情報とbroadmindが耳にする限りの噂を総合すると、被害者には「マニラの出会い系カフェに入り浸ってた人」「日本のフィリピンパブにオネーサンを輸出するブローカーのような仕事をしていた人」「ルソン島内で山下財宝を探していた人」などが含まれる

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/broadmind/20090112/p1