2006年3月、北九州市若松区の市立青葉小学校5年永井匠(たくみ)君=当時(11)=が自殺したのは担任女性教諭(55)=退職=による体罰などが原因として、両親が市と独立行政法人「日本スポーツ振興センター」に約8100万円の損害賠償を求めた訴訟の和解協議が21日、福岡高裁(古賀寛裁判長)であった。市側は責任を認め、災害共済給付金として、2800万円を支払うことで和解が成立した。
和解条項は、(1)学校内での一連の対応は適切さを欠くものであり、自殺を防止できなかった責任を認める(2)北九州市は事故が発生したことを重く受け止め、再発防止に取り組む‐など。市は自殺の原因が体罰だとは認めなかった。
昨年10月にあった福岡地裁小倉支部の一審判決によると、女性教諭は担任になった05年4月以降、匠君の頭を殴ったり、両耳を引っ張ったりする体罰を繰り返した。06年3月16日、他の児童とトラブルになった匠君を教室で怒鳴り、胸ぐらをつかむなどした。その後、匠君は「帰る」と言って泣きながら教室を飛び出し、自宅1階で首をつって自殺した。
一審敗訴を受け、市側などは控訴。高裁は1月、双方に和解による解決を打診したが、交渉は難航していた。
=2010/05/21付 西日本新聞夕刊=