ビル・ゲイツ氏:新型原子炉開発で東芝と技術協力を検討

2010年3月23日 11時22分 更新:3月23日 11時44分

 米マイクロソフト創業者で会長のビル・ゲイツ氏が資金提供する米ベンチャー企業「テラパワー」(ワシントン州)と東芝が、次世代の新型原子炉開発での技術協力に向けた検討を始めたことが23日、明らかになった。新型原子炉は、現在の原子炉のような数年ごとの核燃料の交換をせず、最長100年間の連続運転が可能という。ゲイツ氏は早期開発に数千億円の私財を投じる構えを示しているという。

 関係者は「開発には課題も多く、まだ情報交換の段階。実現は10年以上先になる」としているが、530億ドル(約4兆8000億円)の資産を持つ(米フォーブス誌)という世界有数の資産家、ゲイツ氏と、日本の原発最大手の異色タッグの行方が注目されそうだ。

 テラパワーは00年設立で、開発を目指す次世代原子炉は「TWR」と呼ばれている。現在、世界で稼働中の加圧水型(PWR)と沸騰水型(BWR)の原子炉はいずれも軽水炉で、燃料に濃縮ウランを用いるのに対し、TWRは高速炉で燃料にはウラン濃縮の際に生成される副産物の劣化ウランを使用。数年おきに燃料交換が必要な軽水炉と異なり、燃料交換無しで最長100年間、運転できる設計という。

 一方、東芝は、燃料交換なしで30年間稼働する出力1万キロワットの小型原子炉「4S」を開発済み。維持管理の困難なへき地での発電に適し、当局の認証を得られれば14年にも米国で初号機を着工する方針。ゲイツ氏はこの東芝の技術力に着目したものと見られ、昨年11月、テラパワー幹部らと横浜市にある東芝の原発研究施設を訪問。TWR開発のための技術協力に向けた情報交換で合意したという。【和田憲二】

 【ことば】TWR 濃縮ウランを燃料とする現行の原子炉と異なり、ウラン濃縮の際に低品位の副産物として生成される劣化ウランを使用する次世代原子炉。稼働後は途中で燃料を交換・補給せず最長100年間の運転が可能とされる。構造は比較的単純で、原子炉内の核分裂反応速度を調節する制御棒も不要。安全性は高いとされるが、実用化には長期間の核分裂反応に耐えうる原子炉素材の開発が課題。

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