2010年3月23日 11時14分 更新:3月23日 12時18分
【ワシントン斉藤信宏、北京・浦松丈二】インターネット検索最大手の米グーグルは22日、中国語のネット検索サービスの拠点を中国本土から香港に移し、自主検閲なしの中国語版検索サービスを香港経由で提供すると発表した。中国本土のサイトの利用者は、グーグルが香港で運営するサイトに自動的に転送され、検閲抜きのニュースや画像を利用できるとしている。だが、中国本土ではすでに一部の検索ができず、当局の検閲が強化されているとみられ、今後、香港のグーグルへの接続遮断などを通じて、事実上、事業撤退を迫る可能性もある。
グーグルは今年1月、中国国内から人権活動家のメール情報取得を目的としたサイバー攻撃を受けたと発表。中国からの全面撤退も視野に入れて、中国政府の求めに応じて実施してきた自主規制の廃止を目指し交渉を続けてきたが、物別れに終わった。
グーグルのドラモンド最高法務責任者は同社のブログで「香港を拠点に検索サービスを継続するという今回の措置は、直面する問題を回避する有効な解決策だ」と述べ、「中国政府が我々の決定を尊重してくれることを強く望んでいる」と強調した。
グーグルは、中国の現地法人自体は維持し、研究開発事業や中国国外サイトへの広告仲介など検索サービス以外の事業は継続する。また、中国からの検索サービス利用状況を一般に公開する専用サイトを設置。1日ごとに更新し、中国からのアクセス状況をネット利用者が確認できるようにした。当局からの介入があった場合、ひと目で分かるようにするためで、中国政府へのけん制が目的と見られる。グーグルによると、これまで動画共有サイト「ユーチューブ」とブログサービスの「ブロガー」が遮断された状態になっていた。
今後、中国当局の対応次第で、グーグルが事業撤退を迫られる可能性もあるが、すでに「ネットの自由」をめぐり米中間で政治問題化しているだけに、中国政府としても難しい対応を迫られそうだ。