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2010年4月23日放送 (第434回)
“劣っとる”って 思わんでいいよ 〜過食症・安本ちひろさん〜
【過食症になったきっかけ】
今回の主人公は、安本ちひろさん、31歳。長い間、過食症で苦しんできました。きっかけは無理なダイエット。その反動から、大量に食べずにはいられなくなったのです。
過食症は、“大量に食べ物を食べてしまう”、あるいは、“食べては吐く”を繰り返す病気です。食べ物が食べられなくなる拒食症とともに、摂食障害といわれています。摂食障害は、若い女性に多い病気ですが、最近は、小学生や、30代から40代の人にも増えています。
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石川県金沢市。安本さんは、夫と、まもなく3歳になる娘と3人で暮らしています。週に4日、介護の仕事をしている安本さん。仕事に、育児、家事にと忙しい毎日です。
料理は昔から得意でしたが、過食がひどかった時は、まったく作る気にはなれませんでした。
子どもができてからは、過食の症状は治まっています。しかし今も、気持ちが不安定になると、再び過食へ向かうかもしれないという、不安は抱えています。
安本さんの過食が始まったのは、高校1年生のときでした。小さい頃から、自分に自信が持てず、自分を変えたいとバレーボール部に入部します。しかし、急に運動を始めたため食欲が増し、一時的に太ってしまったことで更に自信を失っていきました。
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そこで安本さんは、ダイエットを始めます。しかし、極端な食事制限の反動から、食べたい気持ちが止まらなくなりました。ひたすら菓子やパンを買い込んでは食べ続ける日々。やせたいはずなのに、
なぜ食べるのか、自分でもわからなくなっていました。
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【過食症の苦しみと向き合ってきた15年】
過食は短大を出て、就職してからも続きました。
そのころのノートです。通っていた病院で、自分の気持ちをそのまま吐き出すことを勧められ、書き始めました。
「死にたい」「こんなんいやや」「苦しすぎる。苦しすぎる」
「ひどく嫌われとるって感じするよ」
「劣ってる人って思われとる」「すごい劣等感・・・」
書いていく中で、安本さんは「自分は劣っている」という思いに、ずっととらわれてきたことに気づきました。そこでもうひとつ、別のノートを作ることにしました。自分にやさしい言葉をかけるためのノートです。
「大丈夫。何も悪いコトおきとらんしダイジョーブだよ」
「どんなちいちゃんも大好きだよ」
自分を認める言葉を自分にかけ続けることで、安本さんの過食への衝動は徐々におさまっていきました。
今でも、子育てや仕事などのストレスで、気持ちが落ち込んでしまうことはありますが、自分なりの対処方法も見つけました。近くの公園で一人、ひたすら無心になって歩くこと。日常からちょっと離れて体を動かすことで、自分の陥りがちな思考パターンから逃れられるといいます。
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【“安心して話せる場所を作りたい”】
安本さんは、今、摂食障害からの回復をサポートするホームページを作っています。
「必ずいつか治る」という思いをこめて、「未来蝶ネット」と名付けたホームページ。同じく摂食障害で苦しんできた姉、村田いづ実さん、そして5人の仲間たちと一緒に立ち上げました。
全国の医療機関や自助グループなどの情報に加え、周りの家族や友人などサポートする側に向けてのページもあります。すでに回復したメンバーたちの体験談も
、顔写真入りで掲載することにしました。
ホームページでつながった人たちと、直接、顔を合わせて自分のことを話す活動も始めています。この日、集まったのは5人。県外から参加した人もいます。
経験した人にしかわからない、摂食障害の苦しさ。周りの人に理解してもらえないつらさ。こうした思いを分かち合える場を、安本さんたちは大切にしています。
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ありのままの気持ちを素直に話すことで、少しずつ心が楽になっていく。この日の話し合いは、3時間に及びました。
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【摂食障害のある人たちからのおたより】
番組には、同じように摂食障害を抱えている方からおたよりが届いています。
まずは、「EMMA」さんという女性からいただいたメールをご紹介します。
『自分は現在、29歳で、中学生の頃から15年間、過食症とともに生きています。精神的に未熟で生きていくことがとても難しいけれど、
いつか何かに悩んでいる人たちに元気や希望を与えることができるような人間になりたいです。』
続いて、東京都にお住まいの「種の種」さん、20代の女性からいただいたメールです。
『摂食障害を抱えており、食事を交えた行事や遊びには参加できず、仲間と楽しめなくて悲しみでいっぱいです。今は食事によってさまざまなことが制限されていますが、
そのほかの部分で補ってより良い生活を送っていきたいです。』
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番組では、みなさまからのご意見・ご感想、作品・川柳などを募集しています。
本文はここまでです。